現在脇差の注文打ちの依頼をしています。

 

1尺8~9寸くらいの長脇差

 

大刀に合わせて大小一対を助光刀匠の刀で揃えようかと思ったのですが、手持ちの古い脇差の柄を大刀に合わせて作り直す事にしたので注文打ちの長脇差は外装を合わせずに違う形にしようかなと思い始めました。

 

 

大刀の時は「最強の刀」を目指して刀身も外装も整えました。結果としてすごく普通の刀になりました。結局のところ「普通」というのはそれが最も最適な形であったために標準形式になって広まったのだという事がよくわかりました。

 

次はそこを少し外して、見た目その他を自分好みにカッコイイ刀を目指したいと思います。あくまでも室内戦闘用の実戦刀という想定の範囲内でですが。

 

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柄巻きは前回は黒の正絹にしましたが、今回は革にしてみようかなと迷っています。

 

鹿革の柄巻きにしようかと思い、少し調べてみました。

 

古来から鹿革は丈夫という事で武具に多く使用されてきたとの事。

 

鹿側の柄糸は大きくわけて以下の種類があります。

・吟つき・吟スリ

・芯あり・芯なし

 

皮の表面のつるつるした部分(吟面)をサンドペーパーでこすって毛羽立たせたものが吟スリで、それをしていない物が吟つき。吟スリの方が滑りにくいとも聞きますし、吟つきの方が手になじみやすいとも聞きます。どちらが良いかは個人の好みだと思います。

 

革紐の中に紙か布の芯を入れたものが芯ありで、ないのが芯なし。芯ありだと引っ張っても伸びないので巻きやすい反面少し太くなるようです。芯なしの商品説明に「上手に巻き留めれる上級者向き」と書かれています。

 

 

 

 

 

 

鹿革は切れにくくて最高級の柄糸といわれるのですが、一つ気になる点もあります。鹿革の革紐は短い革紐をつなぎ合わせて作っているのです。売られているものの写真を見てもわかります↓

 

 

アマゾンのレビューなどを見ても少し気になってしまいます↓

 

 

 

 

芯なし吟つきの鹿革にしたいかなと思う反面、こういうレビューをみると迷ってしまいます。

 

鹿革が最高級といわれる割にはあまり鹿革の柄巻って見ないのですが、理由はコレなのかもしれませんね。

 

一番一般的なのは牛革の柄巻き

 

こちらの場合は鹿革の時と少し用語が違って、吟つきを「表革」、吟スリを「ヌバック」と言います。むしろこちらの名称の方が一般的だと思います。昔はヌバックの事を「裏革」といっていた気がします。裏革は正しくはヌバックのことではなくてバックスキンという種類の製品なのですが、たぶん刀の柄糸としては売っていないと思います。

 

最近では豚革の柄巻きもありますが、どうなのでしょうね。一番一般的な牛革が鹿より良いのかも?とも思ったりしてきました。

 

下げ緒として先に一度購入してみても良いかもしれませんね。

 

 

 

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前回の大刀は主に成瀬関次の著書の記載を参考に実戦的な構成を考えて作りました。成瀬は著書で革の柄巻きは滑るので良くないと書いています。また幕末の講武所頭取で清磨の後援者でもあった窪田清音は著書の中で「柄巻きは組糸が最上で革は用いるべきではない」という意味の事を書いているといいます。

 

 

しかし歴史的に見れば刀の柄巻きは江戸時代初期頃までは基本的に革巻きでした。

 

本当に戦場で刀を使う下級武士の刀は柄を革で巻いたうえに柄ごと漆や膠でべたべたに塗り固めたものであったようです。主に防水目的と、次いで柄糸が切れないようにというためだと思います。

 

実際、成瀬も軍刀の柄が濡れると鮫皮がふやけてはがれてしまうので改良が必要とかいていますし、柄糸がちぎれて柄が壊れて戦死した人の話なども書いています。そう思うと多少すべる事があっても戦国時代のように革巻きにして漆で塗り固める方が実戦的な気もします。

 

事実、改良された三式軍刀は革巻きではありませんが柄糸を漆で塗り固めています(末期型除く)。成瀬は漆を塗ったのは滑って良くないという風にも書いているのですが。

 

 

古い時代の刀剣でも「糸巻き太刀」のように組糸で柄巻きされた刀は存在します。しかしそれは大名クラスの武将が持つ最高級品。実用品ではなかったはずです。江戸時代に組糸が量産されるようになり安値になったことから糸巻き太刀のような組糸の柄巻きが流行して一般的になっていったのだと思います。また、江戸時代には刀の柄に漆を塗る事が禁止されたと何かに書いてありました。そんなこんなで平和な時代に我々が一般的にイメージする白い鮫皮に組糸の柄巻きをした「普通の刀の柄」になったのでしょう。

 

 

柄糸が正絹がよいか革が良いかなんていうのは、普通の人にとってはどうでも良い事だとは思いますが・・・

 

ちなみに、絹の柄糸は糸がほつれたり毛羽立ってきたりもします。

 

私の過去刀↓

 

 

 

土方歳三の刀↓

 

 

 

私の刀