「BOPビジネス」~win-win関係をつくるビジネス | めざせ!FP3級!~女性FPのお金の花道~

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こんにちは。第4週担当の宮川朋子です。
今日は、利益を生みながら社会貢献するビジネスとして最近流行りの「BOPビジネス」についてご紹介したいと思います。

BOPとは、もともとは「Bottom of the Pyramid」の略。「経済ピラミッドの底辺に位置する貧困層」のことを指しています。
BOPは、ミシガン大学ビジネススクール教授のC.K.プラハラード氏のベストセラー「ネクスト・マーケット~「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略」(2005)で「今後急速に成長する魅力的な市場」と言われています。

具体的にどのくらいの人たちが「BOP」として数えられているのでしょうか?
この本によれば「1日2ドル未満(約180円)で生活する約50億人」を指しています。彼らはこれまで「貧しいのでモノを買えないだろう」と、モノを売る対象とは考えられてきませんでした。プラハラード氏は、こういった人たちをビジネスの対象として考え、その人たちのために技術や製品・サービスなどを変えることで、貧困層を「顧客」にすることができる、それはとても大きなビジネスチャンスである、と説いています。
(その後、国際機関などによって「BOP」とは「年収3000ドル以下の世帯」と定義され約40億人というのが業界の共通認識となりました。)

こう書くと、「貧しい人からお金をだましとる商売」とか「貧しい人を悪条件で働かせて不当に利益をあげる商売」とか思われる人がいるかもしれません。しかし、「BOPビジネス」と言われているものはそうではありません。

経済産業省の定義では

「途上国低所得階層を対象とした持続可能な、現地での様々な社会課題(水、生活必需品・サービスの提供、貧困削減等)の解決に資することが期待されるビジネス」

と定義されています。(「BOPビジネス政策研究会報告書要約」より)

・・・難しいのですがあせるBOPビジネスのための要点を簡単にまとめると、

1)利益を生み続け(慈善事業ではない)
2)活動において社会的責任を持ち(不法就労や児童労働や環境汚染などのない、コンプライアンスを守った仕事のやりかたをしている)
3)貧困層のいる地域で貧困削減などの社会的課題に貢献している


という3つがそろっていることと言えそうです。

つまり、BOPに良質のものをより安く売ることで、BOPは今まで手に入れ難かったサービスやモノを手に入手することができ、経済的自立も果たす一方で、企業は継続的に利益をあげる、という企業とBOP層の「win-win関係」を生み出すビジネスなのですベル

世界的にいろいろ成功事例があります。
有名なのはヨーグルトで有名なフランスのダノンです。ダノンは、ノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行とともに「グラミン・ダノン・フーズ有限会社」を設立。グラミン銀国の顧客である貧困層で乳牛ビジネスをしている人から牛乳を買い、周辺の貧困層を雇用して現地でヨーグルトを生産し、グラミン銀行の顧客が販売員として個別訪問販売をすることで利益を挙げながら、貧困層の人たちの経済的自立と栄養状態の改善に貢献しています。
日本企業では住友化学の「オリセットネット」、マラリア予防の蚊帳が有名です。殺虫剤を練りこんだ糸でつくった蚊帳をタンザニアで生産、販売したことで、現地で約4000人の雇用を生み出しました。マラリアも予防できて、現地での雇用も創出。まさにwin-winですね。
このほか、2009年12月28日号の日経ビジネスでは、スズキや味の素などの活躍が特集されています。

これらの成功事例を見てみますと、企業側は利益を挙げようとしながらも、あくまでもフェアに、そして、途上国の貧困層を対等な顧客としてみなしていることがよくわかります。決して、本来事業の片手間にやっている企業イメージ向上のための「慈善活動」ではないのです。さらには、企業側のこれまでの日本向け・先進国向けのビジネスモデルを、改革・変革しつくしていることも大きな特徴です。

利益を生もうとすることは、社会をよくしていくことにつながるのですね。やり方次第で。
そして、そのためには自分たちも変わらないといけない力こぶ

BOPビジネスは、今、行政・民間企業・NPO/NGO/社会起業家/援助機関/研究者など、あらゆるところ・人が研究して情報交換をしています。
デフレに加えて人口減少で将来の国内需要が大きく伸びることを期待できない日本のビジネス界でも、約40億の手付かずの人口は無視できない存在ですから、当然といえば当然かもしれません。
新しいビジネスモデルが日本を元気にしてくれるかも。これから注目されます。皆さんも新聞など注意していてくださいね!


なお・・・
BOPは、冒頭に書いたとおり、確かに当初は「Bottom of the Pyramid」の略だったのですが、英語圏では今は「Base of the Pyramid」の略という解釈のほうがポピュラーです。「Bottom = 底」という言葉の印象があまりよくなかったからのようです。
日本では大手マスコミが皆「Bottom」で用語をそろえて使っているので浸透してしまっていますが・・・個人的にはやはり「Base」のほうが語感としていいように思います。