ショスタコーヴィチが「プラウダ批判」を受けるきっかけともなった作品。初演当時は大好評を博したものの、一方で性暴力が内容に組み込まれていることもあって、批判的な声も少なくはない。スターリンが聴きにきたものの、第3幕の途中で席を立ってしまう。その後共産党中央委員会機関紙「プラウダ」にて「音楽のかわりに荒唐無稽」という批判を受けたことによって、ショスタコーヴィチの立場は危うくなる。これ以降「ムツェンスク郡のマクベス夫人」が演奏されることはほとんどなくなったものの、後に「カテリーナ・イズマイロヴァ」と改訂を施している。
・ショスタコーヴィチ:歌劇「ムツェンスク郡のマクベス夫人」
録音:1992年2月13〜27日
難解かつ複雑性な印象を受ける。全4幕の中でも聴いているとやはり随所に狂気的な要素が見え隠れしている。それこそショスタコーヴィチの交響曲作品でも聴くことができたような攻撃的で活発なサウンドを聴くことができる。「ムツェンスク郡のマクベス夫人」に関しては今回初めて聴いたが、現代的なオペラ作品とショスタコーヴィチ作品の融合というべき面白い演奏を楽しめたのは間違いない。
・カテリーナ:マリア・ユーイング(ソプラノ)
・ボリス:オーゲ・ハウグランド(バス)
・セルゲイ:セルゲイ・ラーリン(テノール)
・ジナーヴィー:フィリップ・ラングリッジ(テノール)
・アクシーニャ:クリスティーネ・チーシンスキ(ソプラノ)
・ボロを着た農民:ハインツ・ツェドニク(テノール)
今回チョン・ミョンフンによるショスタコーヴィチの「ムツェンスク郡のマクベス夫人」を取り上げたが、ちょうど先日にUHQCD仕様の高音質盤が発売された。ショスタコーヴィチ没後50年として発売された企画だったが、その中に当盤も含まれている。まだまだ聴き慣れていない方が多い名盤かもしれないが、ネルソンスも録音を行ったので今後どんどん演奏や録音が増えてほしい名作である。
