[Disc 5]
「オスカー・フリート指揮/ベルリン国立歌劇場管弦楽団」
ストラヴィンスキー作曲:
バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)
ブルックナー作曲:
交響曲第7番 ホ長調
[Disc 6,7]
「オスカー・フリート指揮/シュターツカペレ・ベルリン」
マーラー作曲:
交響曲第2番 ハ短調「復活」
「オスカー・フリート指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」
リスト作曲:
交響詩「レ・プレリュード」
「アストラ・デスモンド(コントラルト)、オスカー・フリート指揮/BBC交響楽団」
マーラー作曲:
交響曲「大地の歌」より第3楽章「美について」
[Disc 8]
「オスカー・フリート指揮/ベルリン国立歌劇場管弦楽団」
チャイコフスキー作曲:
バレエ「くるみ割り人形」組曲 作品71a
「オスカー・フリート指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団」
チャイコフスキー作曲:
交響曲第6番 ロ短調作品74「悲愴」
「オスカー・フリートの芸術」を今回一気に4枚聴いていく。というのも、マーラーの交響曲第2番「復活」がDisc 6,7に収録されているため、Disc 5,6を取り上げると中途半端なことになる。Disc 8自体も2曲だけだったので、Disc 5〜8を一気に聴こうという考えに至った。中でもやはり注目したいのは、ブルックナーの交響曲第7番とマーラーの交響曲第2番「復活」の2曲だろうか。世界初録音となっているのは非常に大きい。すでに当ブログでは一度取り上げている曲だが、ここで改めてこの録音を聴くことができて非常に良かったとも考えている。
[Disc 5]
・ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)
録音:1925年
ノイズも確かにあるが、想像したほど聴き取りづらいわけではない。強いて言えば、終曲の一部カットや極端に速いテンポにオーケストラがついていけていないようにも聴こえなくはない疾走感を味わえる「火の鳥」だったと言える。曲によってはやや崩壊しかけている場面もあったが、そのスリリングさがあること故に「火の鳥」の世界観をより引き立てているとも言えなくはない。まさにその点に関しては爆発的なアプローチとも考えられ、テンポの緩急における激しい変化が功を奏していたと言えるだろう。
・ブルックナー:交響曲第7番
録音:1924年11月(世界初録音)
この録音も以前当ブログで取り上げており、この後に収録されているマーラーの交響曲第2番「復活」と同じ「KK-Ushi」から復刻されたCDを購入している。スクリベンダム盤の方が比較的に明瞭な演奏を聴くことができるようになっており、芯のある豊かなサウンドながらテンポの緩急が鋭く楽章によってはたんたんと進められていく場面もあるため、あっさりとしたブルックナーのようにも聴こえるかもしれない。
[Disc 6,7]
・マーラー:交響曲第2番「復活」
録音:1923年(世界初録音)
以前聴いた「KK-Ushi」から発売されたCDと比較するとノイズ量などが違い、当盤をスクリベンダム盤とするならば聴きやすいのは後者である。一部の楽章における打楽器が気になるものの、吹き込みによる録音としては比較的聴きやすい。木管楽器、弦楽器のピッチがそこまで安定しないというのが残念な部分ではあるが、オーケストラ全体としての音色の統一感やテンポの緩急も絶妙なバランスによって演奏されている。残念な点といえば合唱が加わってから吹き込みによる限界があるため、後のモノラル録音と比較してもスケール感はそこまで味わうことができない。ただ、重要なのは世界初録音であるという部分なので現代における録音と比較するようなことはしない。
・リスト:交響詩「レ・プレリュード」
録音:1928年
ベルリン・フィルと演奏されたリストの「レ・プレリュード」。木管楽器の音色が特に美しく、透明度の高さが功を奏する形となっている。ノイズすら心地良い音にすら思えるような演奏となっており、テンポの緩急に関しても激しさより優雅に歌い上げている。この時代の録音としてはここまで鮮明な録音は中々聴くことができないのではないか?とすら感じてしまうくらいに素晴らしい歴史的録音だった。
・マーラー:交響曲「大地の歌」より第3楽章「美について」
録音:1936年2月1日
ノイズもあるが、意外にも歌手の歌声は綺麗に録音されている。木管楽器と弦楽器の音色と響きがそれに合わせて美しく奏でられており、テンポの緩急からなるダイナミクス変化、揺らぎがロマンティックでこの時代の録音にしては非常に聴きやすい。今回は第3楽章しか収録されていないが、ぜひ全曲演奏をオスカー・フリートによる指揮で聴いてみたいとも考えてしまうような凄みで圧倒された。
[Disc 8]
・チャイコフスキー:バレエ「くるみ割り人形」組曲
録音:1927年
ベルリン・フィルによる録音は比較的鮮明で聴きやすい状態が保たれていることもあって、「シェアラザード」に続いて聴きやすいように感じられた。各曲ごとにみずみずしさもあり、キャッチーで親しみやすく、組曲のためバレエ全曲ではないがその世界観を余すことなく堪能することができたと言える。木管楽器と弦楽器の音色が非常に透明度高く演奏されていたので、聴き手の心を掴む演奏となっているのは間違いない。
・チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」
録音:1929年2月1,4,5日
第4楽章におけるテンポの緩急におけるアプローチが一部違う点を除き、比較的にスマートで聴きやすい「悲愴」であることは間違いない。弦楽器群が奏でる圧倒的なスケール感は凄まじく、この時代の録音でここまでの分厚い弦楽器による演奏とキレ味を体感できる金管楽器のサウンドを味わえる演奏は中々ないのではないか?と考えてしまう。メンゲルベルクもチャイコフスキーの録音では歴史的録音を残しているが、それに肩を並べる録音と言っても差し支えないだろう。空間的な音の広がりも充分に保たれているので、特に第4楽章に関しては誰もが白熱するような演奏を聴くことができるのは間違いない。
さて、ここまで取り上げた「オスカー・フリートの芸術」では比較的に大曲が多かったが、今後取り上げていく予定になるDisc 9〜12では序曲などの管弦楽作品が大変多く収録されている。次回取り上げる予定なのはDisc 9,10となるが、今からすぐにでも続けて聴きたい作品ばかりとなっているので、早めに取り上げたいと思う。