ビゼーの代表作である「アルルの女」と「カルメン」。それぞれは組曲でよく1枚のCDに収められることが多い。有名なクリュイタンス盤もそうだが、それぞれの指揮者とオーケストラの個性が出ていて聴いていて面白いのがポイントとも言えるだろうか。アバドとロンドン響によるアプローチはどちらも一緒であり、最初から最後まで一貫性を感じることができる。
・ビゼー:「アルルの女」第1組曲、第2組曲
録音:1980年1月
劇付随音楽から抜粋された第1組曲、第2組曲が盛んに演奏されることの多い「アルルの女」。物語とは対照的に明るさと活発さに満ち溢れている曲が多く感じられる。また、第2組曲における第3曲「メヌエット」はフルートによる演奏で特に有名だが、ビゼーの歌劇「美しきパースの娘」から組曲版の編曲を行なったギローによって追加されている。演奏はオーケストラ全体の輪郭がはっきりと明確になったアプローチによって演奏されており、CD紹介文にあるようにシャープなしつこさや冷静さが全面的に出された演奏となっている。だからこそ見えてくる新しい「アルルの女」があると言える。熱情的な世界観とは違う勢いにまかせたパワー型の演奏とは違い、フランス音楽としての良さを余すことなく聴くことができると言えるだろう。
・「カルメン」組曲
録音:1977年8月、9月
有名な歌劇「カルメン」からなる第1組曲と第2組曲からではなく、「第1幕への前奏曲」、第2幕への間奏曲「アルカラの竜騎兵」、「第3幕への間奏曲」、第4幕への間奏曲「アラゴネーズ」の計4曲が演奏される。アバド&ロンドン響による「カルメン」はタワーレコード限定のSACDハイブリッド盤となるほどに人気の名盤だが、今回はそれをコンパクトに聴くことができる代物と考えても良いだろう。「第1幕への前奏曲」からエネルギッシュながらシャープなダイナミクス変化のもと演奏が進められていき、その後の曲も後味がスッキリとした美しさからなる演奏が展開されている。これを聴いて情熱的に感じるかはさておき、普段と違う「カルメン」の演奏に心奪われる人々が少なくないことだけ明確なことは間違いない。
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