第1884回「リヒャルト・シュトラウス生誕160年、自作自演による管弦楽作品集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日6月11日はリヒャルト・シュトラウスの誕生日です。今年で生誕160年になります。そんな本日ご紹介していくのは、リヒャルト・シュトラウス自作自演による管弦楽作品の貴重な歴史的録音です。「ドイツ・グラモフォン」から復刻された貴重な録音は、昨年4月にSHM-CDとなって再び発売されました。「ドン・ファン」に始まり、「ティル」や「死と変容」、「英雄の生涯」などリヒャルト・シュトラウスを代表とする数々の作品が収録されています。


「リヒャルト・シュトラウス指揮/ベルリン国立管弦楽団」

リヒャルト・シュトラウス作曲:
交響詩「ドン・ファン」作品20

交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」作品28

歌劇「インテルメッツォ」より交響的挿入曲

交響詩「死と変容」作品24

交響詩「ドン・キホーテ」作品35

組曲「町人貴族」作品60

楽劇「ばらの騎士」より第2幕のワルツ


「リヒャルト・シュトラウス指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」

楽劇「サロメ」より7つのヴェールの踊り


「リヒャルト・シュトラウス指揮/バイエルン国立管弦楽団」

交響詩「英雄の生涯」作品40

日本建国2600年祝典曲 作品84

楽劇「ばらの騎士」より第3幕へのワルツ



 リヒャルト・シュトラウスは作曲家だったが、親交のあったグスタフ・マーラー同様に指揮者としても活躍をした。指揮の師はハンス・フォン・ビューローで、弟子にはカール・ベームやジョージ・セルがいた。今回は自作自演による曲集だが、モーツァルト、ベートーヴェンや数多くのオペラからなる管弦楽作品の録音も残されている。当盤に収録されている録音は約100年前の録音だが、重要な歴史的価値のある録音であることには変わりない。


[Disc 1]

・リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」

録音:1929年

 Disc 1のトラック1に収録されていることもあって、聴き始めた瞬間の推進力からなる爽快感なども含めて曲集の1曲目に聴く作品としてふさわしい名演であると言える。録音時期を見ていただくとわかるが、極めて古いためノイズもある。ただ、劣悪なまでに聴きづらいのか?と問われるとそんなことはない。オーケストラ全体のバランスやテンポの緩急が明確に演奏されているため、エネルギッシュなサウンドとしても非常に聴きやすい演奏となっているのは間違いない。弦楽器のまとまりある分厚いスケール感や決めどころを逃さない金管楽器のサウンドも功を奏する形となっている。


・交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」

録音:1929年

 この「ティル」に関しても年代が古い録音になるが、この時代における録音としてもキラキラしているサウンドや細部にわたって演奏しているリヒャルト・シュトラウスの強いこだわりを随所より感じ取ることができる素晴らしい演奏である。特に冒頭とプロローグにおける弦楽器の伸びやかでたっぷりと演奏されるスケール感に関しては、思わず鳥肌が立ってしまうほどの濃厚さであったと言えるだろう。


・歌劇「インテルメッツォ」より交響的挿入曲

録音:1927年
 録音状態による効果もあるかもしれないが、多少聴きづらさや揺らぎがあることによって響きが増強されているかのような感覚を余すことなく味わえるようになっている。それが弦楽器や木管楽器の奥深い極めて濃厚な音色を生み出していると言えるだろう。擬似的なダイナミック・レンジも聴いていて美しい感覚を味わえるものとなっており、思わずオペラ本編を聴きたくなってしまうかのような凄みがあった。

・楽劇「サロメ」より7つのヴェールの踊り
録音:1928年
 今回唯一ベルリン・フィルとの演奏となっている「サロメ」。他の曲と比べるとあまり音質が良くないことが残念になるが、各楽器における特徴やテンポの緩急、細かい揺らぎなどは聴いていると明確なものが多いため聴いていて面白い要素はいくつもある。個々の木管楽器による魅惑的な甘い音色であったり、柔軟性の高い弦楽器の演奏も非常に素晴らしい。

・交響詩「死と変容」
録音:1926年
 先ほどの「サロメ」と比べると同じくらいの録音状態ではあるが、聴きづらさが残るわけではない。この時代ならではの金管楽器の特徴的なサウンドもそうだが、自由自在に変化する弦楽器の音色や「緩→急」へとテンポが速くなった際のダイナミクス変化もインパクトがあり、低音の存在感も充分に感じ取ることのできる深みが感じられると言える。

[Disc 2]
・交響詩「ドン・キホーテ」
録音:1933年
 演奏が聴き取りづらいかと問われるとそこまででもなく、むしろチェロの演奏は明確に聴き取ることができ、風格も合わせて聴くことができるようになっている。オーケストラに関しても奥行きからなる豊かなサウンドと濃厚な音色、響きが功を奏する形となっているので、細部まで聴き込むことができる。何よりチェロの音色が美しく、聴いているだけでうっとりとしてしまうような歌い方がこの時代ならではの音質状態で聴くことができるようになっている。これまで「ドン・キホーテ」はそこまで積極的に聴こうとしていなかった面も少なからずあったが、今回の演奏を聴いて今後積極的に聴きたくなった作品の一つとしておきたい。

・組曲「町人貴族」
録音:1930年
 劇付随音楽だった初演版や改訂版から抜粋された組曲版が演奏されている。年代が古いからこそ味が出ているというもので、他のリヒャルト・シュトラウス作品と比べても楽器編成が多くない室内楽寄りの演奏はより一層歴史的録音としての価値を引き立てているようにも感じ取ることができる。特に弦楽器の音色が素晴らしく、言ってしまえば素朴さがよく伝わってくるアプローチとも言えるバランスの良さからなる演奏となっている。オーケストラ全体としても細部まで細かく聴き込むことができるダイナミクス変化によって演奏されているので、聴きやすいのだろう。

[Disc 3]
・交響詩「英雄の生涯」
録音:1941年
 リヒャルト・シュトラウス作品の中でも「アルプス交響曲」と肩を並べるくらいに好きな作品であることもあって、それなりに音質が良いように聴こえた「英雄の生涯」。一部分によっては音割れも見受けられるが、その圧倒的な重量感からなるスケール感が備わっているため、長大な交響曲を聴いているかのようなインパクトを味わえるようになっている。ヴァイオリンソロや咆哮にすら感じられる音圧を楽しむことのできる金管楽器も度肝を抜く演奏そのものである。

・日本建国2600年祝典曲
録音:1941年
 リヒャルト・シュトラウス作品の中でも演奏頻度が少ない曲である。初演されたのは1940年で、今回の録音は翌年に行われている。技巧的にも難易度の高い点はそこまで見受けられず、非常に濃厚なスケールをたっぷりと聴くことのできる演奏という印象が強いかもしれない。特に弦楽器の音色が透き通るように美しく、オーケストラ全体のバランスをうまく作り上げているようにも感じられる。

・楽劇「ばらの騎士」より第2幕のワルツ
録音:1927年
 再び録音時期が古くなるためノイズが演奏に加わるが、正直それが気になるかと問われるとそれはない。弦楽器と木管楽器の音色が特に美しく描かれており、テンポの緩急が明確変化しているワルツを楽しむことができる。その演奏は非常にキャッチーであり、ユーモアに満ち溢れているので聴いているだけでも心が舞い上がるかのような感覚を味わえる。

・楽劇「ばらの騎士」より第3幕のワルツ
録音:1941年
 先ほどの第2幕のワルツと比べると録音時期も後になり、音質的な向上も多少加えられた印象を受ける。弦楽器と木管楽器による優美で美しさ溢れる「ばらの騎士」のワルツが楽しめる。細部までこだわり抜かれたダイナミクス変化や速すぎず、遅すぎないテンポ設定に関してもこの美しい曲を聴きやすくさせていると言えるのは間違いない。

 リヒャルト・シュトラウスの自作自演という非常に貴重な録音の存在は以前より知っていたが、中々踏み出すことができず、昨年発売されたSHM-CDが復刻されたタイミングでついに購入し、今回生誕160年という素晴らしい日に取り上げることができた。高音質盤による名演、名盤も良いが、やはり歴史的録音としての素晴らしい演奏も捨てがたい。またこの自作自演集に関しては繰り返し聴きたいところである。

https://tower.jp/item/5651724/R-シュトラウス自作自演集