マリス・ヤンソンスが録音したリヒャルト・シュトラウス作品の演奏はどれも名演で、ハズレのない印象が強い。今回の「ドン・ファン」と「アルプス交響曲」に関しても同様の傾向にあると言えるだろうか。たっぷりと幅広く取られたスケールからなるコンセルトヘボウ管による壮大で濃厚な演奏は、リヒャルト・シュトラウス作品にぴたりと当てはまる凄みを体感できる。
・リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」
録音:2007年10月、2008年1月(ライヴ)
重厚的で非常に分厚い弦楽器群によるスケールが功を奏する形となっており、それでいてテンポの緩急に優れた演奏となっている。まさに度肝を抜かされるかのようなスリリングな演奏となっており、多くの人々の心を掴むであろう名演である。ダイナミック・レンジの幅広さが増していることによる空間的な音の広がりも素晴らしく、濃厚な音色や響きが非常に聴きごたえある形で演奏が展開されていく。今回の演奏はまさに映画音楽の如くしっかりと作り込まれた物語と各楽器ごとにおけるキャラクターの特徴を明確に抑えているというのも重要なポイントと言えるだろう。
・アルプス交響曲
録音:2007年9月(ライヴ)
ダイナミック・レンジの幅広さが増していることによる空間における音の広がりもそうなのだが、弦楽器や金管楽器、木管楽器による深みのある重厚的なサウンドがこの曲では抜群に良い音色と響きによっての演奏が展開されている。それに加えて打楽器の存在感が非常に素晴らしいものとなっており、地鳴りや打撃の威力が凄まじい。また、ウインドマシーンに関しても他の同曲録音となると最初は聴こえるがオーケストラ全体にかき消されがちなのに対して、今回の演奏では常にずっとその音が明確に聴こえる。もちろんそれ以外の楽器に関しても存在感が凄まじいインパクトを残しているため、細部にわたって細かく演奏されている情報量の多い演奏であると言える。大編成オーケストラによる演奏なのに対して、ここまで聴き込むことができる演奏はこの演奏くらいなのではないか?と音に没入することが最初から最後までできた「アルプス交響曲」だった。
これまで、カラヤン&ベルリン・フィルによる「アルプス交響曲」が個人的にも決定盤ときて頂点に君臨していたが、当盤を今回初めて聴いてそれが変わった瞬間を今体感している。今回はApple Music Classicalで聴いているが、ぜひこれはSACDハイブリッド盤で聴きたいと思えたのでSACDハイブリッド盤をこれから探していきたいところ。この凄まじい演奏は中々聴くことができないだろう。
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