第1843回「ドヴォルザーク没後120年、クーベリック&ベルリンフィルによる交響曲全集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日5月1日はアントニン・ドヴォルザークの命日です。今年で没後120年になります。そんな本日ご紹介していくのは、今でもなお名盤として多くのクラシックファンに愛されているラファエル・クーベリック&ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団によるドヴォルザーク交響曲全集です。2018年7月25日にタワーレコード企画の「ヴィンテージSACDコレクション」にてSACDハイブリッド盤となって復刻された代物となっています。以前交響曲第9番「新世界より」だけ取り上げていますが、今回ようやく全集を取り上げる形となります。


「ラファエル・クーベリック指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」

ドヴォルザーク作曲:
交響曲第1番 ハ短調「ズロニツの鐘」

交響曲第2番 変ロ長調作品4

交響曲第3番 変ホ長調作品10

交響曲第4番 ニ短調作品13

交響曲第5番 ヘ長調作品76

交響曲第6番 ニ長調作品60

交響曲第7番 ニ短調作品70

交響曲第8番 ト長調作品88

交響曲第9番 ホ短調作品95「新世界より」



 クーベリック&ベルリン・フィルによるドヴォルザークの交響曲全集。決定盤として長年愛されるクーベリックの代表的な録音の一つである。チェコ・フィルとの演奏とは違う、カラヤン時代のベルリン・フィルを率いて演奏しているということもあって大きく注目された。オーケストラ配置も交響曲第8番では一般的なアメリカン・スタイルだったのに対して、その後の8曲の交響曲に関しては対向配置で演奏されている。なお、交響曲第8番、第9番に関してはSACDシングルレイヤーが発売されているが、それ以外の交響曲は初のSACD化だった。


・ドヴォルザーク:交響曲第1番「ズロニツの鐘」

録音:1973年2月22日

 一つの物語としての世界観は完成されており、より厳格な交響曲としての姿を演奏から聴くことができる。壮大なるスケールによって演奏が行われており、ややドイツ寄りの構成のようにも思えるかもしれない。骨太な音色とまとまりある響きが功を奏する形となっており、ほかの交響曲と比べてもやや長めではあるが今回の演奏は聴きやすい印象だった。


・交響曲第2番

録音:1972年12月

 交響曲第1番と同じように演奏時間は比較的に長い交響曲第2番。ベルリン・フィルによる演奏が的確にも思えるくらいのスケール感となっており、ダイナミック・レンジの幅広さが増したことによってそれを余すことなく楽しむことができるようになっている。なおかつまとまりのある骨太な弦楽器群による土台が展開されているため、金管楽器と木管楽器の音色も安定感のあるサウンドとなっている。ドイツ音楽からの強い影響を受けたこの曲だからこそベルリン・フィルとの相性が良いのかもしれない。


・交響曲第3番

録音:1972年10月

 ドヴォルザークの交響曲の中で唯一全3楽章からなる交響曲である。ワーグナーの影響を受けた作品となっていることもあって、その物語性の強い演奏からは濃厚さもそうだがスケールとしても美しさに溢れている。伸びやかで透き通るように美しい音色を奏でている弦楽器と木管楽器も特徴的で、親しみやすいサウンドを奏でているのも特徴的な世界観の一つである。


・交響曲第4番

録音:1972年10月

 演奏が始まってみるとベルリン・フィルによる演奏がぴったりとも言うべきか、骨太で幅広さのある濃厚な音色と響きが功を奏する感覚をたっぷりと味わえる瞬間を随所より感じ取ることができるようになっている。ダイナミック・レンジの幅広さが増していることによって、それがより一層濃厚なサウンドとなり意外にも聴きやすさがあった。弦楽器による重厚的なスケールは伸びやかで親しみやすく、キャラクターがしっかりとしている。ブラームス的な要素も感じられるが、ワーグナーからの影響が大きく、第2楽章と第3楽章は特に美しく感じるだろう。


・交響曲第5番

録音:1972年10月

 スラヴ風の牧歌的な作風となり、ここまで聴いた交響曲のワーグナーからなる影響は薄まった。後の幸喜と同じスタイルが貫かれている面もあるため、ベルリン・フィルによる安定した軸からなるバランスの取れたスッキリとして聴きやすい演奏である。弦楽器による統一された音色からなる美しい音色をいくことができ、たっぷりと作り込まれたテンポの緩急からなる伸びやかで自由性の高い音色はいつ聴いても楽しめる要素が多い。


・交響曲第6番

録音:1972年10月

 各楽章ごとにテンポの緩急が明確化されており、ベルリン・フィルの機動力を体感するには充分とも言える演奏である。柔軟性のある音色や響きの変化が功を奏する形となっており、オーケストラ全体が奏でるサウンドからも一体感を明確に感じ取ることができる。2017年最新マスタリングが施されたSACDハイブリッド仕様となっていることもあり、奥行きの良さや美しい空間的な音の広がりに関しても申し分ない仕上がりとなっているのも間違いない。


・交響曲第7番

録音:1971年1月18〜21日

 ドヴォルザークの後期三大交響曲に入る。非常に濃厚であり、軽快なテンポの緩急はクーベリックとこの時代のベルリン・フィルだからこそつくり上げることができた完成度の高いサウンドがあると言える。ダイナミック・レンジの幅広さが増したことによる圧倒的な迫力や、活発で研ぎ澄まされた安定感のある重厚的なサウンドは聴いていて惚れ惚れする要素が多々ある。これまでこの曲に関しては個人的にそこまで大きく注目をしていなかったが、それを後悔するくらいのインパクトを体感できる演奏であることは間違いない。


・交響曲第8番

録音:1966年6月8,9日

 今回の交響曲全集はこの交響曲第8番から始まった。演奏は非常に優美かつ美しさ溢れる演奏となっているが、金管楽器や木管楽器、弦楽器それぞれの個性を失うことなく演奏されている姿は思わず度肝を抜かされてしまうだろう。チェロとヴァイオリン、トランペットがそれぞれの楽章において重要な軸となり、伸びやかで存在感たっぷりに歌い上げている。これには誰しもがうっとりとしてしまうことに間違いない。今回はタワーレコードから復刻されたSACDハイブリッド盤だったが、今回の全集が発売されるよりも前に発売されていたSACDシングルレイヤーはどのような仕上がりとなっているのか非常に気になるところである。


・交響曲第9番「新世界より」

録音:1972年6月8〜10日

 今回改めて聴いてみると、カラヤン時代におけるベルリン・フィルを率いてクーベリックが演奏している。2017年最新マスタリングが施された状態による演奏ということもあって、ダイナミック・レンジの幅広さが増した奥行きの良さがこの作品の世界観をより一層引き立てられている。ベルリン・フィルのサウンドとしてはカラヤンとの絶頂期における演奏ということもあって、テンションは非常に高いものとなっているのは間違いない。後味としてしつこさがなく、エネルギッシュでパワフルなサウンドからなるテンポの緩急によるダイナミクス変化が功を奏する形となっている。第2楽章や「急→緩」へと変化した際の木管楽器や弦楽器による伸びやかでたっぷりと歌い上げる濃密な演奏は誰しもが心打たれるであろう。

 ドヴォルザークの交響曲全集自体聴いたのはいつぶりだったか。ノイマン&チェコ・フィルによる2回目の全集もそうだが、スウィトナーによる交響曲全集も忘れてはいけない。思えばチェコ・フィルによるドヴォルザークの交響曲演奏が個人的には大分好みだったが、今回のベルリン・フィルによる演奏もそれに引けを取らない凄みからなる演奏が非常に良かった。ケルテス&ロンドン響による交響曲全集に関してはまだ聴いていないので、後日じっくりと聴きたいところである。

https://tower.jp/item/4755017/ドヴォルザーク:交響曲全集(第1番-第9番≪新世界より≫)<タワーレコード限定>