小澤さんによるブラームスの録音は、ボストン交響楽団とサイトウ・キネンとの録音が何種類か残されている。その中でも2010年にニューヨークのカーネギーホールにて行われたライヴは、これまでに繰り返し再販されてきた名演である。SACD、SHM-CDなどが発売された。今回は「Apple Music Classical」でロスレス音源で視聴している。
・ブラームス:交響曲第1番
録音:2010年12月14日(ライヴ)
第1楽章・・・冒頭よりやや重めのテンポによって演奏されていく第1楽章。しかし、遅く感じることはなく、オーケストラ全体における分厚いスケールを明確に味わうことができるような凄みを確かに感じ取ることのできる演奏となっている。非常に濃厚で芯のある弦楽器群の音色を土台として金管楽器や木管楽器が音を奏でることにより、オーケストラ全体から奏でられるサウンドには一貫性のある音色と響きを聴くことができるようになっている。
第2楽章・・・まさに木管楽器と弦楽器それぞれの豊かなサウンドを余すことなく味わうことのできる第2楽章となっており、聴いているだけで心が浄化されるかのような心待ちになった。ダイナミック・レンジの幅広さが増しているため、音の広がりに関しても緩やかかつ伸びやかな印象が強い。細部にわたって細かくこだわり抜かれたダイナミクス変化や音色の追求など鳥肌が立つくらいに素晴らしい音を聴くことができる。
第3楽章・・・第2楽章における木管楽器と弦楽器の音色をそのままとして多少テンポを速くした推進力を味わえる演奏となっている第3楽章。ここまで暗い和音が続いてきた中で悩みすら吹っ切れたかのように明瞭さのある明るい音色と響きを楽しむことができるようになっている。木管楽器、特にクラリネットとオーボエの音色が非常に美しく、透明度の高さもそうだが芯のある音によって豊かな音色が奏でられる瞬間というものは、非常に感動的であると言える。
第4楽章・・・終楽章ということもあって力が大分入っているのだろう。各楽器ごとに生き生きとした快活でダイナミックな演奏を楽しむことができるようになっている。伸びやかで美しいスケールや統一感のある弦楽器による重厚的でやや固めな音色はブラームスの交響曲ともぴたりと当てはまる素晴らしい音を聴くことができる。これが療養生活から復帰した際の演奏だというのだからまさに熱演であり、名演である。金管楽器の奥深い豊かなサウンドも聴いているだけで胸が熱くなるのは間違いない。
小澤さんのCD、音源はマーラーの交響曲を中心に聴いてはいるものの、今回改めて振り返るとまだまだ聴いていない演奏が多数あることを再認識することができた。「Apple Music Classical」などを活用しながら一つ一つの録音を堪能していきたいと思う。
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