第1751回「ブルックナーアニバーサリー企画第1弾、カラヤンのブルックナー交響曲全集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

こちらはクラシック音楽のCDの名盤をレビューするブログです!
年間500枚以上クラシック音楽のCDを購入します。
好きな作曲家はマーラー、ストラヴィンスキー、ブルックナー、三善晃、ショスタコーヴィチなど
吹奏楽を中心にトランペット演奏の他、作曲なども行います。



 みなさんこんにちは😃今年2024年は、アントン・ブルックナーの生誕200年という記念すべき年となっています。「クラシック名盤ヒストリア」ではそれを記念して、毎月1種類ブルックナーの交響曲全集を取り上げていこうという記念企画を行なっていきたいと思います。なお、これまで当ブログで取り上げたブルックナー交響曲全集についてはいずれ特別編でまとめて取り上げていきますので、まだ当ブログで取り上げていない全集に限り取り上げていきます。まず1月では、ヘルベルト・フォン・カラヤンとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団によって1975〜1981年にかけて録音された交響曲全集をみていきます。


「ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」

ブルックナー作曲:
交響曲第1番 ハ短調

交響曲第2番 ハ短調

交響曲第3番 ニ短調「ワーグナー」

交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」

交響曲第5番 変ロ長調

交響曲第6番 イ長調

交響曲第7番 ホ長調

交響曲第8番 ハ短調

交響曲第9番 ニ短調



 カラヤンによるブルックナーの交響曲録音は複数あるセッションに加えて、ライヴも存在しているため非常に幅広い種類存在している。その中でも今回取り上げる交響曲全集は、絶頂期のカラヤンとベルリン・フィルによる素晴らしい演奏によって実現された代物であると言っても過言ではない。多くのブルックナー・マニアは必ず聴いている全集であると思われるが、私個人としては5年以上前に聴いたきりのため大分久しぶりとなる。


・ブルックナー:交響曲第1番

録音:1981年

・・・重厚的というよりは、テンポの緩急が各楽章ごとに明確となったより筋肉質で固いサウンドを聴くことのできる演奏というようにも言えるかもしれない。近年ならばそういったブルックナーも少なくはないが、この時代におけるカラヤンとベルリン・フィルの演奏がその形で演奏が行われていたとは改めて聴いてみて驚かされた。ダイナミック・レンジの幅広さも増しており、細部まで細かく聴き込むことができるのに加えて空間的な音の広がりも比較的に広さがあるため非常に聴きやすい。いらないものを削ぎ落としたといおうか。マイナーな交響曲だからこそ楽しめるような世界観であると言えるかもしれない。


・交響曲第2番

録音:1981年

・・・重厚的なベルリン・フィルのサウンドからなるやや固めの演奏はテンポの緩急が加わるとより一層強固なものとなる。響きを重視した演奏というわけでもないため、金管楽器と打楽器の音形は比較的大きく目立つ印象を受けた。その分弦楽器は各楽章ごとに柔軟な変化を行なっていくため、伸びやかさや緩やかな音色も同時に味わうことができる。細かいダイナミクス変化も演奏からは聴くことができるため、エネルギッシュな交響曲第2番だったことは間違いない。


・交響曲第3番「ワーグナー」

録音:1980年

・・・どの楽章も共通して前向きで推進力を確かに感じることのできる演奏となっている。分厚いサウンドと木管楽器、金管楽器、弦楽器それぞれの個性を失うことなく演奏されている姿は聴いていて鮮明であることが明確になっている。演奏からも迷いがなく、第3楽章や第4楽章などが特にそうだがぐんぐん演奏が進められていくため、後味もしつこくなくスッキリとしている。ここまで聴いた第1番、第2番、第3番は比較的共通点の多い一貫性のあるサウンドが貫かれていたようにも思える。これは後の盛んに演奏される交響曲では味わえない演奏であることは間違いない。


・交響曲第4番「ロマンティック」

録音:1975年

・・・第1番〜第3番までの演奏と比べると、多少伸びやかさが増したスケールを感じることのできる演奏となった印象を受ける「ロマンティック」。弦楽器群による統一感のある美しい音色からなるトレモロがあるため、有名な第1楽章冒頭のホルンによる旋律が幻想的で濃厚さのある演奏として楽しむことができるようになっている。ダイナミック・レンジの幅広さも多少あるため、金管楽器の音色に関してやや固めではあるがそこまで筋肉質ではない。むしろ奥深い豊かな音色と響きを合わせて聴くことができるようになっているので、十二分に楽しむことができる演奏となっている。


・交響曲第5番

録音:1976年

・・・複雑な対位法が交差する長大なる交響曲となっている第5番。ベルリン・フィルによる演奏としては比較的まとまりある聴きやすいサウンドとなっている。重厚的で奥深く分厚いスケールを奏でる弦楽器群によって先導されながら、濃厚とまでいかないがまろやかさのある金管楽器による演奏が非常に素晴らしい。ダイナミック・レンジの幅広さがあるため、ダイナミクス変化の差に関してもわかりやすくなっている。テンポの緩急も明確に演奏し分けられているため、各楽章ごとによって聴こえ方が変わってくるブルックナーを楽しめるだろう。


・交響曲第6番

録音:1979年

・・・交響曲第5番、第7番と有名な曲の間に挟まれた交響曲第6番。今日ではこの曲のみで演奏されることも減った印象だが、今回のスタイリッシュで迷いのない演奏としては非常に聴きやすい印象を受けるブルックナーとなっており、木管楽器と弦楽器、金管楽器と打楽器それぞれで一体感が生まれている。テンポの緩急からなるダイナミクス変化も、他の楽章より割と明確さがあるため、後味としてもスッキリとしていて聴きやすい演奏だったと言える。どちらかというと交響曲第1番〜第3番までの3曲にアプローチとしては近い演奏だったのかもしれない。


・交響曲第7番

録音:1975年

・・・重厚的であり、分厚いスケールを聴くことができる交響曲第7番。テンポの緩急に関しても多少感じ取ることのできる演奏となっているが、重心が明確に定められているためそこまで大きく速いと感じるほどではない。ベルリン・フィルとの息ぴったりな感覚としても素晴らしいポイントとなっており、特に第2楽章での世界観は息を呑むかのような美しさに満ち満ちている。ホルンをはじめとする金管楽器の深みある音色もそうだが、弦楽器のまとまりある音色からなる響きも聴きやすい演奏となっている。


・交響曲第8番

録音:1975年

・・・ブルックナーが作曲した交響曲の中でも交響曲第5番と並ぶ演奏時間であり、最も長大なる交響曲と言える演奏を聴くことができる。この曲は、演奏する指揮者とオーケストラによってその演奏スタイルなどが変化していくわけだが、今回の演奏では重厚的かつ分厚いスケールによって演奏が行われている。しかし、テンポの緩急も加えられているため、そこまで重々しい演奏とまではいかない。ダイナミック・レンジの幅広さによって、オーケストラ全体を細部まで細かく聴き込むことができるようになっており、弦楽器や木管楽器、金管楽器それぞれの音色を明確に聴き込める。音形に関してもそこまで濃厚すぎる演奏というわけではないので、インパクトも十二分に味わえるようになっている。


・交響曲第9番

録音:1975年

・・・落ち着きもあり、ゆったりとしたテンポで演奏が進められていく演奏となっている今回の交響曲第9番。ダイナミック・レンジの幅広さが増していることもあって、ベルリン・フィルの弦楽器群によって奏でられるその美しい音色と響きは非常に美しいスケールと伸びやかな演奏となっているのは間違いない。その上で金管楽器と木管楽器が演奏しているため、迫力はより一層増す形となる。未完成の交響曲ながらここまでの完成され、鮮明な世界観となった曲は他に類を見ないだろうし、カラヤンとベルリン・フィルによって演奏されることもあってさらに凄みが増している交響曲第9番であると言える。


 カラヤンとベルリン・フィルによるブルックナーの交響曲全集を聴いたのは大分久しぶりのことではあったが、ブルックナーの交響曲を聴く流れで必ず一度は聴くこととなる全集であることは間違いないので、2024年におけるブルックナーのアニバーサリー・イヤーで聴くことができて非常に良かったと感じている。他のカラヤンのブルックナーも聴きつつ、次回2月にはまた別の交響曲全集を取り上げたいと思う。