ムラヴィンスキーによるライヴをそれほどまだ聴いていない中で、ムジークフェライン・ザールでのライヴが復刻されたのは非常にタイミングが良いようにも思える。注目すべきなのは、ビクター所蔵のアナログ・マスターテープを使用した最新マスタリングによるSACD化であるという点。当盤以外にもベートーヴェンやモーツァルト、ショスタコーヴィチやワーグナー作品も続々と発売されているので、非常に目が離せないシリーズと言えるだろう。
・ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲
録音:1978年6月12,13日(ライヴ)
・・・冒頭における悠然とした美しさも素晴らしいが、「緩→急」へと変化した際の強固なサウンドや他を寄せ付けることのない強靭的で卓越されたアンサンブルを聴いていると鳥肌が立つ。明確なまでのテンポの緩急がこの序曲には存在しているため、ゴリゴリした弦楽器の存在感はより一層引き立てられている。テンポに関しては「緩→急」へと変化した瞬間に
・シューベルト:交響曲第8番「未完成」
録音:1978年6月12,13日(ライヴ)
・・・レニングラード・フィルによる研ぎ澄まされたサウンドの中に、奥深い美しさ溢れる透明度の高い音色を聴くことができる。ダイナミック・レンジの幅広さが増している分、ノイズも聴くことができるようになっているが、オーケストラ全体における統一感やバランスの良いアンサンブルなど非常に素晴らしい世界観でいっぱいとなっている。低弦に関しても若干だが重厚感のある仕上がりとなっているため、聴きごたえもある。テンポに関しても速すぎることなく、遅いわけでもないのでオーケストラ全体としては非常にうまくまとまっている。
・ブラームス:交響曲第2番
録音:1978年6月12,13日(ライヴ)
・・・当盤のメインであるブラームスの交響曲第2番。演奏が始まった瞬間にレニングラード・フィルが奏でる音色には空間を研ぎ澄まさせる効果があり、聴き進めていけばいくほどに緊張感が増していくようにも思える。強靭的なアンサンブルや前向きに進んでいくテンポの快活さも他の録音と変わることなく演奏されているため、常に聴き手を圧倒するような演奏とも取れるだろう。しかし、2023年最新マスタリングが施されたことにより、ダイナミック・レンジの幅広さが増していることによって、音をダイレクトに受けすぎることなく多少なりとも豊かなサウンドを感じ取ることができるようになったのはSACDハイブリッド盤による影響が大きいと言えるかもしれない。
ムラヴィンスキーによるベートーヴェンやブラームスの録音が存在していることは以前から知っていたが、まさかここまで興味の出る演奏だったとは思わなかった。タワーレコードからはすでに何種類か発売されているので、引き続きそれらも購入してすぐに聴きたいと思う。