アーベントロートによるバイエルン国立管とライプツィヒ放送響とのブラームス交響曲全集。第1番のみライヴで、それ以外はセッション録音となっている。また、モノラルではあるもののここまで躍動感あふれる豪快なブラームスは未だかつて聴いたことがないようにも思える。特にこの1950年代における録音でここまでのエネルギーに満ち溢れた演奏は貴重なようにも思える。
・ブラームス:交響曲第1番
録音:1956年1月16日(ライヴ)
・・・今回唯一のライヴ録音となっている交響曲第1番。この録音に関してはアーベントロートを代表とするブラームスとして大きく知られている演奏で、単体でも復刻されることが多々ある代物となっている。演奏として、第1楽章から第3楽章までは比較的にたっぷりと、深みのあるアプローチを味わえるようなテンポで演奏が行われており、第4楽章になった瞬間推進力ある前向きでエネルギッシュな演奏となる。この点が大きく聴き手に印象深く残ることもあって爆演と言われるのだろう。ライヴ録音ながら音質も比較的に良く、細部まで細かく聴き込みながら細かいダイナミクス変化や普段ではあまり聴かれない溜め込みなどを聴くこともできるので非常に面白い演奏となっている。
・交響曲第2番
録音:1952年3月3日
・・・スタンダードに進められていく演奏かと思えば各楽章ごとに明確なテンポの緩急を付けながら演奏を行なっていることもあり、躍動感のある演奏を聴くことができるようになっている。なおかつ推進力も味わえるようになっているため、ポピュラー色はこれまでの同曲録音と比べてもより一層深みが増している。柔軟性の高い弦楽器を中心として、色鮮やかな木管楽器の美しい音色や明確なアタックによる金管楽器がある。また、特に第1楽章がそうなのだが、細かいアーティキレーションや音の切り方が独特な解釈となっているためその点としても楽しめるようになっているのは間違いない。
・交響曲第3番
録音:1952年3月17日
・・・以前取り上げた「アーベントロート不滅の遺産」にも収録されている交響曲第3番。Memories盤は比較的にノイズはあまりない印象で、輪郭もはっきりとしていて明瞭で美しい音色と響きを味わえるようになっている。テンポの緩急や各楽章ごとに作り込まれた奥深いサウンドと深みのある音色が功を奏しているのがよくわかる。King盤はMemories盤と比べるとノイズはほとんどわからないくらいにまで修正されており、その点としては良質な演奏を楽しめるようになっている。パワーとしてはMemories盤に軍配が上がっており、King盤に関しては全体をうまくまとめているため力強さはそれほどないとしてもバランスの良さが明確となっている。
・交響曲第4番
録音:1954年12月8日
・・・躍動的かつ爆発的な快速調から演奏が始まる第1楽章ははじめて聴いた時に大きな衝撃を与えてくれる。もちろんこれは他の楽章でも聴くことができるようになっており、第2楽章では穏やかながら美しい音色を奏で、第3楽章では明るく快活さのある前向きな演奏を聴くことができる。モノラルながら音質も比較的に良い印象でテンポの緩急からなるダイナミクス変化なども聴いていてエネルギーを分けてもらえるような素晴らしい交響曲第4番となっている。その分非常に一貫性のあるブラームスとなっているため、楽章間もそれほど間がなく畳み掛けるような演奏となっている感覚は否めない。しかし、ここまで美しさよりも強固で筋肉質に近いサウンドが目立つブラームスもあまり聴いたことがないので繰り返し聴きたくなる感覚があるのは間違いないだろう。
以前取り上げた「アーベントロート不滅の遺産」の影響を受けてアーベントロートのCDを少しずつ探している段階にある中で、今回のブラームス交響曲全集を見つけて購入したのだが、今日までに聴いてきたブラームス交響曲全集とは違う違ったスタイルの演奏だったこともあって4曲通して聴いた感覚としてはそこまで飽きてはいない。むしろ次の交響曲はどのようなアプローチとなっているのか非常に気になってしまったのに間違いはない。今後もアーベントロートのCDを探していき、今回のような素晴らしい代物を聴くことができるようにじっくり探していきたいと思う。

