第1573回「戦時のフルトヴェングラーターラ編:Disc 1〜3」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日から2日間にかけて2018年に「King International」から発売された「戦時のフルトヴェングラー(ターラ編)」を取り上げていきます。こちらは2018年最新リマスタリングが施された6枚のディスクを収録した代物で、仏ターラに残されたフルトヴェングラー録音をまとめたものです。中には有名な「ウラニアのエロイカ」も収録されているわけですが、他の盤との音質や聴こえ方にも注目したいところ。まず本日はDisc 1〜3を取り上げていきます。


〜戦時のフルトヴェングラー(ターラ編):Disc 1〜3


[Disc 1]
「ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」

ベートーヴェン作曲:
交響曲第3番 変ホ長調作品55「英雄」


[Disc 2]
「コンラート・ハンゼン(ピアノ)、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」

ベートーヴェン作曲:
ピアノ協奏曲第4番 ト長調作品58

「ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」

交響曲第5番 ハ短調作品67


[Disc 3]
「ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」

ベートーヴェン作曲:
序曲「コリオラン」作品62

交響曲第6番 ヘ長調作品68「田園」

ワーグナー作曲:
楽劇「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死



 ターラは2014年に活動を終了したものの、それ以降として「King International」からこうして毎回ターラ盤を集めたフルトヴェングラーやワルター、クナッパーツブッシュらの名演を集めて最新デジタル・リマスタリングを施して復刻している。いずれの音源もフルトヴェングラーによる演奏の中では比較的に有名度の高い代物ばかりなので、初めて聴く分にしてもちょうど良いと思う。特に今回は「ウラニアのエロイカ」が収録されているという点でも貴重と言える。


[Disc 1]

・ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」

録音:1944年12月19,20日(放送録音)

・・・余談だがここ最近個人的に「ウラニアのエロイカ」を聴く機会が大分増えている。先日参加した徳岡直樹さんの「ATM徳岡直樹チャンネル・オフ会:和楽会」で参加した際のじゃんけん大会で手に入れたCDも「ウラニアのエロイカ」で、先日「Magistrale」から発売されたものも今回と同じ放送用録音による「ウラニアのエロイカ」だった。これら2種類の「ウラニアのエロイカ」に関してはまた後日取り上げていく予定だ。さて、今回のターラ盤による放送録音は、西ドイツ放送局に遺されていたテープから復刻された代物とされている。「ウラニアのエロイカ」において重要な問題の一つである第1楽章のピッチ問題だが、当盤に関しては修正されているため元々のピッチで「ウラニアのエロイカ」を聴くことができるようになっている。ノイズも多少あるが、それほど気になるほど多いわけではない。ウィーン・フィルによる音の輪郭や細部まで細かく聴き込むことのできる音響も備わっている印象で比較的に音質が良く聴きやすい印象が大分強い。オーケストラ全体の音色に関しても統一されているため柔軟性もあり、テンポの緩急も抜群なので、フルトヴェングラーによる「英雄」の中でも特に人気度の高いこの演奏を楽しむのは十二分に良いと言えるかもしれない。


[Disc 2]

・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番

録音:1943年11月3日(ライヴ)

・・・ノイズが多く、全体像としても若干ぼんやりとしているようにも思える演奏だが、コンラート・ハンゼンが奏でるピアノのタッチは明確にすら感じられる箇所が各楽章には何箇所か存在しているため、比較的に聴きやすさを覚える演奏だったことは間違いない。つい先日もピアノ協奏曲第4番に関してはリヒター=ハーザーとケルテス&フィルハーモニア管弦楽団による演奏を聴いたばかりだが、今回の演奏に関しても多少の重厚さやコンラート・ハンゼンのピアノとフルトヴェングラー率いるベルリン・フィルの音色や響きもぴたりと当てはまるサウンドが作り上げられていたこともあって、世界観としての統一感、一貫性は感じられる演奏だったことは間違いない。


・ベートーヴェン:交響曲第5番

録音:1943年6月27〜30日(放送録音)

・・・フルトヴェングラーによるベートーヴェンの交響曲第5番は複数録音が存在しており、その一つ一つが非常に貴重な演奏である。「暗→明」というシンプルな構成が音質にも反映されているのか、第1楽章から聴いた感覚としてはノイズが若干荒い印象だった。しかし、第4楽章に達した時点での音質は非常にクリアで透明度の高い録音となっているのである。テンポの緩急も明確となった演奏で、第1楽章は溜めが多く、重厚感たっぷりに演奏されているが最終的には推進力を感じることのできる活発さのある速いテンポで演奏が進められている。このアプローチに関しては他の同曲録音でもみられるフルトヴェングラー特有の加速が生かされてるのがよくわかる。聴いているだけで聴き手のテンションを上げるような素晴らしい名演と言えるだろう。


[Disc 3]

・ベートーヴェン:序曲「コリオラン」

録音:1943年6月27〜29日(ライヴ)

・・・この「コリオラン」序曲こそ私がフルトヴェングラーによる録音の中で一番好きな演奏であり、初めて聴いた際に大きな衝撃を受けた「コリオラン」序曲である。初めて聴いたのは「ドイツ帝国放送局アーカイヴ」に収録されていたSACDハイブリッド盤で、確か先ほど取り上げたDisc 2に収録されているベートーヴェンの交響曲第5番と一緒にSACDハイブリッド盤となっていたかと思う。冒頭からオーケストラ全体でトゥッティによって奏でられる音が非常に強烈であり、金管楽器と弦楽器によって奏でられる演奏は一つと塊であるかのように音作りがされている。今回は通常CD盤であるため、SACDハイブリッド盤と比べると音質や音の広がり、明瞭さは劣ってしまうものの、残響からなる響きに関しては申し分ないインパクトのある仕様となっている。


・ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」

録音:1944年3月20〜22日(ライヴ)

・・・ノイズの存在を忘れてしまうくらいに穏やかであり、伸びやかな演奏を味わえるようになっている「田園」。ヴァイオリンを筆頭とする弦楽器による柔軟性の高い音色や響きはもちろん、木管楽器による牧歌的かつ自然な美しさと輝きのあるサウンドを存分に味わえるようになっている。残響もそれなりにあるようで、細部まで細かく聴き込める印象が多少あった。また、テンポの緩急にも優れた演奏で、加速した際の活発なエネルギーからなる推進力もありつつ「急→緩」に変わった瞬間のたっぷりと幅広く取られた演奏は非常に聴きやすい。どの楽器に関しても歌い上げている姿は圧倒的である。


・ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死

録音:1942年11月8〜10日(ライヴ)

・・・弦楽器、木管楽器共に非常に美しい音色と響きを奏でながら演奏が進められていく「前奏曲と愛の死」。有名なトリスタン和音だけでなく、その重厚的な世界観はよりこの曲の深みを全体的に押し出すようになっており、ダイナミクス変化によってさらに素晴らしい世界へと向かうことができるようになっている。強いて言うならばボルテージが上がった瞬間の音質状態的に音割れが生じている。とは言ってもこの時代、戦中における演奏だからこそこの曲を聴く価値は大いにあると言えるだろう。その点ブラームスやベートーヴェンなどとはまた違う大きな意味のある美しさを知ることができるのは間違いない。


 今回のDisc 1〜3を振り返ると、「フルトヴェングラードイツ帝国放送局アーカイヴ1939〜1943」に収録されている録音が比較的に多かった。今回は通常CD盤ではあったものの、それらを改めて少しずつ聴いているような感覚に近い。明日はこの続きにあたるDisc 4〜6を取り上げていく。こちらにはベルリン・フィル以外にもウィーン・フィルとの録音を聴くことができるようになるので注目としても大きいと言えるだろう。


https://tower.jp/item/4703714/戦時のフルトヴェングラー-(ターラ編)