パーヴォによるラヴェルは、「テラーク」にて録音したシンシナティ管弦楽団とのラヴェル管弦楽曲集があり、こちらには「ボレロ」や「ダフニスとクロエ」第2組曲、「亡き王女のためのパヴァーヌ」、「ラ・ヴァルス」、「マ・メール・ロワ」が収録されている。今回パリ管とも演奏する曲目の中でも同曲が収録されているわけだが、そういう点としても聴き分けをできなくもない。
・ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ
録音:2013年4月24,25日(ライヴ)
・・・軽快であり、音の広がりも充分に備えられた優雅な曲である「高雅で感傷的なワルツ」。SACDハイブリッド盤であることと、ライヴ録音ということもあってダイナミック・レンジの幅広さが抜群に良い形で演奏が行われており、緩やかで流れの良い演奏を聴くことができるようになっている。特に木管楽器と弦楽器がその役割を担っており、横の流れとスケールはそれらによって形成されていると言える。金管楽器と打楽器に関しては縦の役割があり、明確かつやや固めなサウンドによって全体のバランスをうまくしているように思える。細部まで細かく聴き込むことができる高音質盤だからこその良さをパーヴォとパリ管は演奏を通して奏でていたのは間違いない。
・クープランの墓
録音:2012年11月7,8日(ライヴ)
・・・色鮮やかであり、透明度の前高い瑞々しさが演奏から感じ取ることができる演奏である。各曲ごとに個性が現れており、非常に聴きやすい演奏であることは間違いない。どの曲も演奏時間は短いため、軽やかかつ美しい演奏を楽しむことができるようになっている。かなりテンポが速いわけではないが推進力を楽しめるようになっている演奏であることは間違いないのでパーヴォとパリ管による「クープランの墓」を存分に楽しめるようになっている。ダイナミック・レンジの幅広さによる美しい音の広がりやスケールは言葉を失うほどの美しさがあるのでこの後の「ダフニスとクロエ」をより楽しめるように引き立てているのは間違いないだろう。
・バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲
録音:2015年1月14日(ライヴ)
・・・ラヴェル作品の中でも代表的なこの曲。先ほども記載したが、パーヴォにとって2度目となる録音であるこの録音。重厚感や分厚さはそれほどないとしても、美しさを味わうことのできることができるようになっているのは間違いなく、合唱も加わることで幻想的かつ壮大なスケールを体感できるようになっている。各楽器における演奏を細部まで細かく聴き込むことができるのはもちろんながら群としてのまとまりが凄まじいため、統一された美しい音色と響きは鳥肌が立つくらいの美しさがあると言えるだろう。「夜明け」では滑らかな木管楽器による連符や弦楽器によるヴェールのようなまとまりあるサウンドが非常に美しく、「全員の踊り」ではテンポが速くなったことによる緩急と歯切れ良い演奏を存分に味わえるのが特に感動を味わえるようになっている。
・ラ・ヴァルス
録音:2014年9月10,11日(ライヴ)
・・・幻想的かつ独特な世界観からなるこの曲。低音によるダークな雰囲気も、重厚的な音色と響きによってより一層引き立てられている。加えてオーケストラ全体のバランスも見事に整われているため推進力に関してもなおのこと申し分ない。ダイナミック・レンジの幅広さが増していることによる細部まで細かく聴き込むことができるようになっている。テンポも一定の速さで演奏されているわけではなく、細かい溜めによって力が蓄えられそこから発生するダイナミクス変化が余すことなく効果を発揮しているのが聴いているだけでよくわかる。個人的にこの曲はアンコール的な立ち位置にある曲であるというイメージを持っているのだが、今回の管弦楽曲集を締めくくるにふさわしい演奏であることは聴くだけでも良くわかると言えるだろう。
パーヴォは世界各国のオーケストラと共演し、それぞれの国のオーケストラに合う作品を演奏しているが、今回のパリ管弦楽団とのラヴェルも非常に素晴らしい演奏であったことは間違いない。ライヴ録音であることもこれは重なるのだろうが、ライヴらしい臨場感も込みで楽しめるのが非常に大きい演奏だった。
https://tower.jp/item/5579534/ラヴェル:管弦楽曲集