クラウス・マケラは2020年にオスロ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者に就任、2021年シーズンからはパリ管弦楽団の音楽監督に就任、そして来る2027年シーズンからロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者の就任が発表されている今注目すべき指揮者である。CDはまだまだ発売されていないが、オスロ・フィルとのシベリウス交響曲全集と今回のパリ管とのストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」、「火の鳥」は間違いなく彼の代表的な名盤となると同時に良いスタートを切れたことにつながるのは間違いないだろう。
・ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
録音:2022年10月5〜7日
・・・UHQCD仕様ということもあるのだろうが、細部まで細かく聴き込むことができる透明度の高い構成となっている今回の演奏。それによって複雑化されたこの曲が綺麗に整理されたかのように各楽器の旋律やリズムが明確に、手に取るようにわかる。それを楽譜通り、打ち込みを正確にしたMIDIという方もいるかもしれないが、ダイナミクスや細かいテンポの緩急も備わっているためそういった演奏ではないということを聴いていると感じ取ることができる。特に個々の楽器になった際のソロは明瞭かつ堂々とした演奏となっている。加えて「緩→急」へとテンポやダイナミクスが変化した際に、オーケストラ全体の一貫性や群としての存在感も非常に素晴らしい。その点では弦楽器の柔軟性のある演奏が効果的な演奏を行う軸としての役割を持ち合わせていると言えるのかもしれない。比較的に前向きで勢いの良さをマケラの指揮から感じ取ることができ、パリ管がそれを見事に演奏で反映しているというように聴くことができるだろう。
・バレエ音楽「火の鳥」
録音:2022年10月5〜7日
・・・先ほどの「春の祭典」もそれなりに面白い演奏だったが、本命はこの「火の鳥」だったのではないか?と聴いていて感じた。というのも冒頭の低弦の演奏からして鳥肌が立ってしまうほどの明確さ、明瞭さを備えた演奏となっている。テンポの緩急に関しても各曲ごとに演奏し分けられているのだが、それが飛び抜けてど迫力な仕上がりとなっているわけではない。バランスの良さが目立つ多彩な演奏となっているため、しつこさもなく非常に聴きやすい「火の鳥」であることは間違いない。前半から後半にかけて聴いていると、終曲含めて大きな溜めからなるダイナミクス変化を聴くことができるようになっている場面が多々見られるようになっており、それがダイナミック・レンジの幅広さによって余すことなく聴きやすくなっているのがよくわかる。オーケストラ全体の音色に関しても明瞭さのある透明度の高い美しいサウンドで統一されているため、ストラヴィンスキーの作品ではあるが聴きづらい印象を抱いている人も聴きやすい仕上がりとなっているのではないか?と個人的には思ったりする。私個人としてはストラヴィンスキーは好きな作曲家の1人であるため、今回の「火の鳥」は個人的に好きな演奏の上位として記憶しておきたいところである。
今回クラウス・マケラのストラヴィンスキーを聴いたが、個人的にはそれほど悪い印象はない。むしろこの流れで「ペトルーシュカ」を録音してくれないかという気持ちすら考えていたりする。一部のレビューを見ても賛否分かれているようだが、マケラはまだ若い世代の指揮者として今後の活躍をどんどんしていってほしいという同年代としての意見が個人的には強いかもしれない。マケラによるシベリウス交響曲全集も後日購入して聴いてみたいと思う。
https://tower.jp/item/5633393/ストラヴィンスキー:バレエ≪春の祭典≫≪火の鳥≫-%5bUHQCD-x-MQA-CD%5d