ベームによるモーツァルト作品の録音は格別であり、ピリオド楽器や室内楽編成による演奏が多くなった今日においてもなお人気の高い名盤である。これまで交響曲などが中心だったが、今回はフィルハーモニア管弦楽団との「コジ・ファン・トゥッテ」を取り上げていく。当盤が発売された2021年はベームの没後40年という年だったこともあって多くの名盤が復刻されたが、この曲もそのうちの一つであることは間違いない。
・モーツァルト:歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」
録音:1962年9月10〜18日
・・・ベームは今回の録音以外にも「コジ・ファン・トゥッテ」を何回か録音している。1955年盤と1974年盤が存在しているが、今回の1962年盤は3種類の中でも特に人気のある「コジ・ファン・トゥッテ」である。今回2021年最新マスタリングが施されたタワーレコード限定発売のSACDハイブリッド盤を聴いている。
・フィオルディリージ:エリーザベト・シュヴァルツコップ(ソプラノ)
・ドラベルラ:クリスタ・ルートヴィヒ(メゾ・ソプラノ)
・デスピーナ:ハンニ・シュテフェク(ソプラノ)
・フェランド:アルフレード・クラウス(テノール)
・グリエルモ:ジュゼッペ・タッディ(バリトン)
・ドン・アルフォンゾ:ヴァルター・ベリー(バス)
フィルハーモニア合唱団
ハープシーコード(通奏低音):ハインリヒ・シュミット
「旧EMI」にて録音されただけあって音質へのこだわりを聴いていると随所から感じ取ることができる。今回の演奏を聴いたのはいつも通りイヤホンだったが、曲によっては片耳のみで演奏が行われていたりする。オペラの演出をそのまま録音にも反映したということになるのだが、これが出てくる際に少々驚かされる。しかし、非常に面白い演出であるので聴き入ってしまうのだ。別の録音でいえば、カラヤンとベルリン・フィルによる決定盤として知られているプッチーニの歌劇「ラ・ボエーム」の第2幕最後も左から右へと音楽が移動していく形でミキシングされているので、これは大分面白かった。今回の演奏では移動することはなかったがそれを思い出させてくれるような面白さがあったのは間違いない。2021年最新マスタリングによって幅広くなったダイナミック・レンジも功を奏する形となっており、抜群の音響と深みのある豊かなフィルハーモニア管弦楽団の音色と豪華な歌手陣の歌声が非常にうまく混ざり合っている。ハッキリとして明確なものとなったこともあって、聴きごたえが増している印象もあるので普段このオペラを聴かないとしても充分に楽しめるのではないかと思う。
ベームによるモーツァルトは交響曲を中心として聴いていたが、まだ聴いていない名盤が多かったこともあって今回フィルハーモニア管との「コジ・ファン・トゥッテ」を聴くことができてよかった。タワーレコード企画ではベームによる名盤が比較的に多く復刻されている傾向にある。まだその中で聴くことができていないベームのモーツァルトが存在しているので、今後少しずつそれらも聴くことができればな良いところである。
https://tower.jp/item/5249490/モーツァルト:-歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」全曲-(歌詞対訳付)<タワーレコード限定>