ヤンソンスはバイエルン放送響とリヒャルト・シュトラウス作品を頻繁に取り上げている。もちろん他のオーケストラとも録音を残しているのだが、以前取り上げたような「アルプス交響曲」や「英雄の生涯」に続き、今回は代表作である「ツァラトゥストラ」が収録されている。カップリングにはトリフォノフをピアノに迎えた「ブルレスケ」。これは聴きごたえあるCDとなっているのは間違いない。
・リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」
録音:2017年10月10〜13日(ライヴ)
・・・有名な冒頭のティンパニとトランペットによる演奏はやや早めのテンポで演奏が行われており、その後もテンポの緩急が非常に明確な演奏となっている。それに加えて細かいダイナミクス変化が非常に素晴らしく優雅に、かつ伸びやかに演奏する弦楽器や圧倒的な音圧で全てを制圧するような金管楽器のサウンドなどどれをとっても非常に素晴らしい。まとまりある弦楽器のスケールも壮大な演奏となっており、通常CD盤ながらにダイナミック・レンジの幅広い瞬間を今回の演奏から通して聴くことができる。常に前に前に進んでいく推進力が感じられるため、気づいた時には曲は終盤になっているかもしれないが、個々の楽器をはじめとしてオーケストラ全体に一貫性が出来上がっている。しつこさもそれほどないため聴きやすい演奏となっているのは間違いない。
・ブルレスケ
録音:2017年10月10〜13日(ライヴ)
・・・この曲自体聴くのは大分久しぶりのこと。重量感のある分厚いピアノと骨太なサウンドを展開するヤンソンス率いるバイエルン放送響の演奏がこの曲をより一層素晴らしい演奏としている。割と太めな演奏という印象が近いかもしれないが、もちろん常にそうではなく繊細に描かれる場面もある。ダイナミック・レンジの幅広さに関しても「ツァラトゥストラ」同様にみられるため、その奥深い音と奥行きのある演奏は聴いていてずっしりとしているが、同時に非常に安心感のある演奏というようにも聴いていて体感することができるようになっている。
ヤンソンスによるリヒャルト・シュトラウス作品の録音はどれも同曲録音と比べても新しい解釈が垣間見える瞬間があるので、毎回聴いていて驚かされることが多い。今回の「ツァラトゥストラ」もまさにそうだった。今後もヤンソンスとバイエルン放送響によるリヒャルト・シュトラウス作品でまだ聴けていないCDがあるので、いずれそちらも聴いて取り上げたいところ。
https://tower.jp/item/5005020/R-シュトラウス:-ツァラトゥストラはこう語った、ブルレスケ