ミュンヘン・フィルのブルックナーといえばチェリビダッケによるブルックナー演奏を思い浮かべてしまうかもしれない。しかし、今回取り上げるのはヴァントによるブルックナーである。これまでにヴァントのブルックナーはそれなりの数を聴いてきたが、今回の演奏に関してはライヴならではの臨場感に加えてSACDハイブリッド盤となったことによる最新リマスタリングが功を奏していると思わざるおえない素晴らしい表現、演奏が行われているということを述べておきたい。そしてブルックナーだけでなく、シューベルトに関してもそれは同様である。
・ブルックナー:交響曲第8番
録音:2000年9月15日(ライヴ)
・・・やや遅めのテンポで演奏されるものの、音楽の流れは非常にスムーズな足運びで演奏が進められていくこともあって自然な音楽の流れが明確に作り込まれているというようにも感じることのできるブルックナーとなっている。SACDハイブリッド盤となったことによる最新リマスタリングによって大分幅広く取られるようになったダイナミック・レンジが特に素晴らしく、弦楽器による広大なスケールや圧倒的な音圧やキレのあるサウンドを奏でる金管楽器が聴きごたえのある演奏となっているのは間違いない。そして第3楽章ではたっぷりと幅広さを重視した深みと重厚感のあるサウンドによってアプローチが行われているのと、ライヴならではの臨場感が重なって非常に美しい演奏となっている。
・シューベルト:交響曲第7(8)番「未完成」
録音:1999年9月28日(ライヴ)
・・・タワーレコードのカスタマーボイス欄に記載があったのだが、今回の「未完成」が非常に美しい演奏となっている。全楽章共通してやや遅めのテンポで演奏が進められており、その中でも分厚く重厚的なスケールを奏でる低弦のサウンドもありながらヴァイオリンによる引き締められたサウンドが対比的な役割を持つことによって生み出される演奏が非常に素晴らしい。オーケストラ全体としても荘厳的な演奏が貫かれており、悲観的に感じる箇所もあるがそれによる美しさというのは言葉を失うくらいの良さがある。
ヴァントとミュンヘン・フィルによるブルックナーとシューベルトの交響曲。これは非常に美しい世界観をそれぞれの曲で体感することができたので、個人的には大分満足している。ブルックナーの交響曲第8番に関してはここ最近あまり聴いていなかったこともあってなおのことその衝撃は大きいと思われる。この「ギュンター・ヴァント不滅の名盤」シリーズではヴァントが残したライヴ録音がSACDハイブリッド盤で聴くことができるようになっているので、今後も取り上げていきたいと思う。