〜クーベリック、マーキュリー・マスターズ:Disc 5,6〜
[Disc 5]
「ラファエル・クーベリック指揮/シカゴ交響楽団」
チャイコフスキー作曲:
交響曲第6番 ロ短調作品74「悲愴」
[Disc 6]
ブラームス作曲:
交響曲第1番 ハ短調作品68
クーベリックとシカゴ交響楽団が「マーキュリー」に残した交響曲などの録音を聴くことができる今回、これまで主要な録音とされてきたスメタナの「我が祖国」やドヴォルザーク、マーラー、ベートーヴェンなどとは違う新しい名演、名盤を見つけることができた演奏が多数存在している。それは「デッカ録音全集」よりもこのBOXの方が大きな功績となるかもしれない。そして今回取り上げるチャイコフスキーとブラームスも間違いなくその中に含まれるべき歴史的録音であることは間違いない。
[Disc 5]
・チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」
録音:1952年4月
・・・非常に素晴らしい爆演と言ったところだろうか。トロンボーン、トランペットを筆頭にシカゴ響のブラスセクション、金管楽器が爆音の域に達した状態での圧倒的な音圧を奏でている。それが第1楽章から聴くことができるのだからまさにぐうの音も出ない。また、そのままのテンションもといボルテージが保たれるため、第3楽章はより一層勢いある演奏へと変化しているのは言うまでもない。何よりオーケストラ全体のボリュームが上がっているため、一部分音割れしている瞬間も見受けられる。余談だが第2楽章も若干速いくらいのテンポで演奏されている。そして第4楽章に関してはここまでで力を全て出し切ったためか金管楽器から弦楽器へとバトンが渡され、非常に美しいスケールを奏でている。Disc 4に収録されていたチャイコフスキーの交響曲第4番でも度肝を抜かされた感覚があったが、クーベリックとチャイコフスキーは意外と相性が良かったのかもしれない。
[Disc 6]
・ブラームス:交響曲第1番
録音:1952年4月
・・・クーベリックによるブラームス、第1楽章からやや速いくらいに感じるテンポで演奏されており、基本的には前向きに進んでいく推進力がある。同時に細かい溜めとその後による瞬発力が功を奏する形となり、素晴らしいテンポの緩急を生んでいる。ダイナミック・レンジの幅広さはそれほどないため、演奏全体としてはモノラルの歴史的録音に近い懐かしさを感じるものとなっているが、先ほどのチャイコフスキーでもあった金管楽器の存在感や分厚いスケールが奏でられる弦楽器、芯のある木管楽器による演奏は非常に聴きごたえがあると言えるだろう。
今回はチャイコフスキーとブラームスを取り上げたが、次回ついにモーツァルトの交響曲とスメタナの「我が祖国」を聴くことができる。後に残された名盤との共通点であったり、表現の違いなどを楽しむことができるので聴く前から楽しみだったが、今回聴いたチャイコフスキーとブラームスもこれまでに聴いてこなかったクーベリックのレパートリーとしては非常に大きな存在感となるのは間違いないだろう。特にチャイコフスキーに関しては今後もぜひ聴き続けたい名演だったことは述べておきたい。
https://tower.jp/item/5194841/マーキュリー・マスターズ<限定盤>