ロジンスキーの後任としてシカゴ交響楽団の指揮者に就任したのがクーベリックだった。しかし、その期間は短かった。今回の録音はその中で行われたもので、今回のBOXには世界初CD化や未発表録音など貴重な音源が多数収録されている。1枚あたりに収録されている曲の数もそれほど多くないので比較的にまとめて聴きやすいBOXとなっている。
[Disc 1]
・ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)
録音:1951年4月
・・・「マーキュリー」が発売した最初のLPとなった「展覧会の絵」。たんたんと演奏が進められていく中でシカゴ響のダイナミックかつエネルギッシュであり、推進力に溢れた演奏となっているが、溜めもなく曲もカットしていないのに対して演奏時間が30分切っている。躍動的とテンポの緩急に優れた演奏となっているので非常に聴きやすいがどこか冷静かつ鋭い印象を受けなくはない。サウンドに関しては1950年代の録音ということもあってどこか懐かしい感覚を覚えるものとなっており、残響もあまりないデッドな空間のためよりダイレクトに演奏が身体に流れ込んでくるようになっている。
[Disc 2]
・バルトーク:弦楽器、打楽器、チェレスタのための音楽
録音:1951年4月
・・・バルトークにおける「管弦楽のための協奏曲」に並ぶ名曲である通称「弦チェレ」。この曲自体大分久しぶりに聴いたが、全体的にテンポの緩急もありつつ明確であり躍動感あふれるエネルギッシュな演奏を聴くことができた。特に弦楽器の統一された音色とキレ味のある鋭いサウンドはこの曲にぴたりと当てはまっていたと言えるもので、弦楽器、打楽器、チェレスタなどが奏でる音が一つの塊となって演奏される様は暴れ狂う手前のクラスターにすら思える。いずれにしても新規リマスタリングによって聴きやすくなったのは間違いない。
・ブロッホ:弦楽合奏、ピアノ・オブリガードのためのコンチェルト・グロッソ第1番
録音:1951年4月
・・・今回世界初CD化とされているこの曲に関しては今回初めて聴いた。「プレリュード」、「葬送歌」、「パストラーレと田園風の踊り」、「フーガ」の4楽章からなる。弦楽器の引き締まったサウンドとどこか懐かしさを全面的に感じるピアノの音が素晴らしく、各楽章ごとに個性的な印象を強く受ける形で演奏がされているため、非常に面白い演奏となっている。ブロッホの曲はあまり演奏されていないようだが、今回初めて聴いた感覚としては好印象だったのは間違いないので他の作品も聴いてみたいと思う。
クーベリックによる録音はバイエルン放送響を中心として以前取り上げた「デッカ録音全集」に収録されている録音を聴いたり、ライヴ録音をいくつか聴いたくらいだったこともあってその前の録音はほとんど聴いたことがない代物が多いのでこのBOXは一マニアとしてもありがたい。10枚のBOXのためそれほど時間はかからないと思うが今後取り上げていく。
https://tower.jp/item/5194841/マーキュリー・マスターズ<限定盤>
