第1376回「アバド&ウィーンフィルによるベートーヴェン交響曲全集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日1月20日はクラウディオ・アバドの命日です。今年で没後8年となります。そんな本日はアバドが1985〜1988年にかけてウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と録音したベートーヴェン交響曲全集を取り上げていきたいと思います。昨年12月16日にアバドとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団による交響曲全集(新盤)を取り上げてから1ヶ月後にまたアバドのベートーヴェンを取り上げることになるとは思いませんでしたが、ベーレンライター版で演奏されていたベルリン・フィル盤との聴き比べも忘れないうちに行わなければならないと思っていたので、ウィーン・フィルとのベートーヴェン交響曲全集をみていきましょう。


〜ベートーヴェン交響曲全集〜


「クラウディオ・アバド指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」

ベートーヴェン作曲:
交響曲第1番 ハ長調作品21

交響曲第2番 ニ長調作品36

交響曲第3番 変ホ長調作品55「英雄」

交響曲第4番 変ロ長調作品60

交響曲第5番 ハ短調作品67

交響曲第6番 ヘ長調作品68「田園」

交響曲第7番 イ長調作品92

交響曲第8番 ヘ長調作品93

交響曲第9番 ニ短調作品125「合唱付き」



 アバドは後にベルリン・フィルともベートーヴェン交響曲全集を完成させるが、今回の全集はそれよりも前に録音されたウィーン・フィルとの全集である。ベルリン・フィルとの全集は2種類あるうちのDVDとの同じローマライヴをCD化した新盤を昨年末に聴いた。後の2種類に関してはベーレンライター版を使用しての全集だが、今回はそうではない。度々ベルリン・フィルとの全集と比較にあげられることが多い名盤の一つである。


・ベートーヴェン:交響曲第1番

録音:1988年1月

・・・スッキリとしていて後味も悪くない演奏で、ピリオド楽器や室内楽編成とはまた違う快活的なエネルギーを感じることができる。ティンパニの打撃がもう少し強くても良いように聴こえなくもないのだが、ウィーン・フィル全体が奏でる気品溢れる美しい美麗なサウンドは一貫性があるので聴いていて非常に気持ちが良い。ダイナミック・レンジの幅広さもあるので、通常CD盤ではあるとしても非常に満足できる全集の始まりと言えるだろう。


・交響曲第2番

録音:1987年2月

・・・音の波が押し寄せてくるような推進力溢れるエネルギーを感じることができるようになっている第2番。全楽章共通して重々しい感覚はなく、軽快な印象を強く受けると同時にテンポの緩急が明確となっている。ウィーン・フィル全体の音色が透き通っており、非常に美しさが極まっている。同時に俊敏さが弦楽器には備わっているため、より統一感のある素早い演奏を聴くことができるようになっている。


・交響曲第3番「英雄」

録音:1985年5月

・・・50分を超える長大な交響曲であるが、のっぺりとしていたり重々しい演奏が展開されているわけではない。テンポの緩急は明確で、推進力の溢れる統一感がある。ダイナミクス変化もわかりやすくアプローチされていることもあって、スッキリと色鮮やかで聴きやすさに満ち満ちている。抜群の安定感と悠然さを兼ね備えており、冷静にも感じられなくはないが聴いていて全てを圧倒するような大きな交響曲としての存在感を感じることができた。聴いているだけで往年の時代における名指揮者たちの顔が浮かぶような素晴らしい名演と言えるだろう。


・交響曲第4番

録音:1988年5月

・・・聴き始めた時は一瞬やや固めな硬派なイメージを受けたが、徐々にテンポが加速していく中で強靭なサウンドや俊敏さへと変わっていった。特に弦楽器の統一感あるまとまりは非常に素晴らしいもので、それにテンポの緩急が加わることもあって大きなインパクトを生み出している。木管楽器と金管楽器は弦楽器のサポートをしているような感覚であり、透明度の高い曇りない音色と響きが功を奏していることは間違いないだろう。カルロス・クライバーによるライヴに引けを取らない強靭さがこの演奏には備わっている。


・交響曲第5番

録音:1987年10月

・・・まさに「王道」という言葉がふさわしいようなまでの安定感と推進力からなるエネルギーには聴いていて驚かされる場面が幾度となくある。ダイナミクス変化の細かさも中々のもので、強弱の差は振り幅が非常に大きくなっている。第3楽章から第4楽章へと向かっていくクレッシェンド、その頂点に達した際に演奏されるファンファーレなど全ての行き先が明確になっていて非常に聴きやすい。ピリオド楽器や室内楽による演奏は固く、筋肉質なものが多いかもしれないが、今回の演奏に関してはそこまで強靭的な感覚が研ぎ澄まされているわけでなく幅広いスケールも保たれた状態で演奏されていることもあるのでその分聴きやすさがあるのだろうと聴いていて感じた。


・交響曲第6番「田園」

録音:1986年9月

・・・幅広さのある広大かつ、壮大な世界観となっている美しく、重みのある演奏。弦楽器と木管楽器の奏でる音色には透明感の高い美しいサウンドや自然的かつ牧歌的な音色として演奏が行われている。聴いていて非常に心地よいといおうか、抜群の安定感とテンポの緩急によって演奏されている。嵐の場面に関してはより一層激しく、第5楽章になってからはより一層伸び伸びとした美しいバランスをもとに演奏されている。


・交響曲第7番

録音:1987年2月

・・・スタイリッシュであり、過激な第4楽章を聴くことができる今回の演奏。木管楽器は軽快に、ホルンとトランペットは吠え、弦楽器は全てを巻き込んで進んでいくかのようなスケールと統一感たっぷりに演奏が行われている。クラシックではあるが、ポップな印象は全面的に押し出されているので非常に聴きやすい。ダイナミクス変化もわかりやすくなっているのに加えてテンポの緩急が明確になっているので色彩豊かにも聴こえる。


・交響曲第8番

録音:1987年2月

・・・気づいた時には第4楽章になっているくらいにスムーズな運び具合となっているが、第4楽章の爆発力や第1楽章〜第3楽章までのスタイリッシュさと木管楽器、弦楽器が奏でる美しく、煌びやかな音色は聴いてきて清々しい感覚を覚える。豪快さはそれほどないにしても、瞬発力や推進力からなるエネルギーの量に関しては第7番以上という印象を受ける。


・交響曲第9番「合唱付き」

録音:1986年5月

・・・第1楽章が始まった瞬間からど迫力と言わんばかりの豪快さから始まる。そのエネルギーは第2楽章まで推進力ある形で継続され、第3楽章になると弦楽器と木管楽器によって伸びやかで非常に美しい音色、響きを奏でながら演奏が進められていく。そして第4楽章が始まった瞬間の不協和とティンパニの強烈な打撃が功を奏しており、第3楽章で味わった安らぎや慈愛を全て圧倒するようなインパクトを体感することができる。つまりは勢いがあると言うこと。歌手や合唱がさらに加わるとそれに拍車がかかり、太くたっぷりとした歌声がウィーン・フィルの音色にまたぴたりと当てはまるのが聴いていて非常に清々しい。最後まで全て一体感ある状態で突っ込んでいく様子は近年演奏されているベートーヴェンとは明らかに違う懐かしさと存在の大きさを体感させてくれるのは間違いない。


 ここのところベートーヴェンの交響曲全集を毎週のように聴いているがそれぞれの指揮者、オーケストラの個性を楽しむことができると同時にベートーヴェンの素晴らしい作品を味わえているのでこれが非常に楽しい。アバドによる3種類のベートーヴェン交響曲全集も残すは旧盤となったベルリン・フィルの全集のみ。これも忘れないうちに探し回りたいところだが、中々見つからないので焦らず探していきたいと思う。また、ベルリン・フィルとウィーン・フィルの全集でどちらがよかったかと言うことは正直述べづらいことにはなるが、強いて言えばアバドの情熱的とも言える勢いが感じられるのはウィーン・フィル、ベーレンライター版含めて現代における新しいベートーヴェン像をベルリン・フィルが先頭に立って演奏した姿がベルリン・フィルの新盤と言えるだろうか。後者は個性的ではないにしても一つの基盤を作り上げたような気がしている。旧盤を聴けばここに新しい解釈が加わると思うが、同時にラトルとウィーン・フィル、ベルリン・フィルによるベートーヴェン交響曲全集も聴きたくなったのは間違いない。


https://tower.jp/item/1127465/Beethoven-:-Symphonies-No-1-9