第1291回「インバル&ウィーン響によるショスタコーヴィチ交響曲全集:第1番〜第5番」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日から3日間にかけてショスタコーヴィチ交響曲全集を取り上げていきたいと思います。なぜこのタイミングでショスタコーヴィチを取り上げるのか?単純に「私自身がショスタコーヴィチを聴きたかったから」という理由からです。そして今回取り上げるのはエリアフ・インバルとウィーン交響楽団による演奏で、まず1日目となる本日は交響曲第1番、第2番「十月革命に捧げる」、第3番「メーデー」、第4番、第5番の計5曲をみていきます。


〜ショスタコーヴィチ交響曲全集〜


「エリアフ・インバル指揮/ウィーン交響楽団」

ショスタコーヴィチ作曲:
交響曲第1番 ヘ短調作品10

交響曲第2番 ロ長調作品14「十月革命に捧げる」

交響曲第3番 変ホ長調作品20「メーデー」

交響曲第4番 ハ短調作品43

交響曲第5番 ニ短調作品47



 インバルはショスタコーヴィチの交響曲を複数のオーケストラと録音を残している。今回取り上げるウィーン交響楽団にはじまり、東京都交響楽団、SWRバーデン=バーデン&フライブルク交響楽団、フランクフルト放送交響楽団などがある。特に今回の全集は少々手に入れづらいような側面がある貴重な代物と言えるかもしれない。


 ショスタコーヴィチ:交響曲第1番 1992年10月12〜15日録音

・・・ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」からの影響やマーラー、チャイコフスキー、シェーンベルクなどの影響も受けていると思われるショスタコーヴィチ最初の交響曲。演奏は軽快かつバランスの取れた明瞭な演奏と言えるものとなっている。ムラヴィンスキーやコンドラシン盤のような攻撃的で活発なアプローチとはまた違うため物足りなく感じるかもしれないが、より厳格さや交響的な解釈がされているのは今回の演奏なのかもしれない。他の言い方をすればいい意味で冷静なショスタコーヴィチと言ったところだろうか。音質が良いのも特徴の一つで、ダイナミック・レンジの幅広さや奥深い響きなど広大で聴きやすい研ぎ澄まされたサウンドがウィーン響からは感じられる。


 交響曲第2番「十月革命に捧げる」 1992年10月16〜19日録音

・・・合唱とオーケストラによる現代音楽の要素が非常に強い第2番。後半にサイレンが鳴らされた瞬間に合唱が演奏に加わるのだが、それまでの空間はすでに完成されており、弦楽器の複雑な音色と響きを絡めつつダイナミック・レンジの幅広さを全面的に味方につけている。合唱が一緒に歌われた際の世界観も衰えることなく、さらに壮大さが増す形となっている。やはり現代音楽録音は音質が良いものが非常に素晴らしいということをここで再認識させてくれる。また、普段聴き慣れたサイレンよりも低めの仕様となっているのもまた面白い点と言えるだろう。


 交響曲第3番「メーデー」 1990年11月28〜30日録音

・・・第2番の姉妹曲ということもあってその現代色は同じような世界観となっているが複雑すぎるというわけではなく、明瞭で透明度の高い音色と響きを展開しているインパルとウィーン響の演奏。それが効果的な形となってさらに不気味な感覚を増すようになっている。金管楽器の咆哮やうねるような弦楽器など各楽器に聴きごたえがある場面が随所に渡って存在する。この曲も合唱が一緒に演奏されるのだが、演奏された瞬間の爽快感と言おうか歓喜すら感じるような壮大さは鳥肌が立ってしまうような凄みを秘めた演奏となっている。


 交響曲第4番 1992年1月20〜24日録音

・・・ショスタコーヴィチが作曲した交響曲の中でも特に難易度の高い交響曲としてあげられることが多い第4番。今回の演奏に関してはクリアなサウンドで細部まで細かく聴き込むことができる部分はあるが、音圧は若干薄い印象を受ける。強烈なフガートの場面や繰り返しくるテンポの緩急によるダイナミクス変化ももう一声ほしいところと感じてしまうが、個々の楽器における美しい音色や響きが追求された形で聴くことができるようになっているのでいつもとは違うアプローチとして聴くことができる楽しみがある第4番となっている。


 交響曲第5番 1990年11月26〜29日録音

・・・ショスタコーヴィチが作曲した交響曲の中でも一番有名である第5番。第4番まで作曲した交響曲とは打って変わった古典的な4楽章に戻っている。「プラウダ批判」を受けたショスタコーヴィチが名誉回復した曲ということと、初演したムラヴィンスキーとレニングラード・フィルハーモニー管弦楽団の十八番としてその後繰り返し演奏されたこともあって人気は比較的高い。演奏としてはインバルとウィーン響による変わらない安定感のあるテンポで演奏がされている。特に有名な第4楽章に関してはムラヴィンスキーやバーンスタインなどのような速いテンポで演奏するわけではなく、やや重心低めのテンポで演奏がされている近年演奏されるケースが増えたスタイルがとられている。それによって勢いや鋭さは若干なくなったものの、曲の終わりでは圧倒的で壮大なスケールの終わり方を迎えている。


 インバルとウィーン響のショスタコーヴィチ交響曲全集。これまでマーラーの交響曲全集とラヴェルの管弦楽曲全集を聴いているが、いずれも印象に強く残る名盤が非常に多く残っているのは間違いない。今回のショスタコーヴィチもこれまで聴いてきた同曲録音とはまた違うインバル独自のアプローチとなっているため、より聴きやすいのではないかと私は考えている。まだまだ全集は始まったばかり、今後も楽しんでいきたいと思う。


https://tower.jp/item/2773788/ショスタコーヴィチ:交響曲全集(全15曲)