第1162回「クレンペラー&フィルハーモニア管によるドイツ・オペラ序曲集&ワルツ」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

こちらはクラシック音楽のCDの名盤をレビューするブログです!
年間500枚以上クラシック音楽のCDを購入します。
好きな作曲家はマーラー、ストラヴィンスキー、ブルックナー、三善晃、ショスタコーヴィチなど
吹奏楽を中心にトランペット演奏の他、作曲なども行います。



 みなさんこんにちは😃本日は久しぶりにクレンペラーの録音を聴いていきます。今回取り上げるのは2021年1月29日にタワーレコード企画の「Definition SACD Series」から復刻された「ドイツ・オペラ序曲集&ワルツ」で、クレンペラーがフィルハーモニア管と1960年に録音した「ドイツ・オペラ序曲集」と翌年1961年に録音したヨハン・シュトラウスの曲をカップリングしており、世界初SACD化された2020年最新マスタリングを堪能することができるようになっています。


「オットー・クレンペラー指揮/フィルハーモニア管弦楽団」

ウェーバー作曲:
歌劇「魔弾の射手」序曲

歌劇「オイリアンテ」序曲

歌劇「オベロン」序曲


フンパーディンク作曲:
歌劇「ヘンデルとグレーテル」序曲

歌劇「ヘンデルとグレーテル」パントマイム


グルック作曲:
歌劇「オーリードのイフィジェニー」序曲


ヨハン・シュトラウス2世作曲:
喜歌劇「こうもり」序曲

皇帝円舞曲



 クレンペラーが旧EMIに残した録音は非常に多く存在している。その中でも有名な録音も多数あるが、今回の「ドイツ・オペラ序曲集&ワルツ」はどの曲も濃い内容で一曲一曲楽しめる素晴らしい演奏となっている。これまでマーラーやブルックナー、ワーグナーなどが同シリーズでSACDハイブリッド化されているが、今回の曲も目が離せない代物となっている。

 ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲、1960年5月4〜6日録音
・・・ウェーバー作品の中でも有名な曲の一つである。重厚的でなおかつ全体的に重めのある重心低めのテンポで進んでいく演奏となっている。しかし、常に重いというわけではなく最終的にはやや前向きなテンポで進んでいる。また、「暗→明」という親しみやすい形に加えてオーケストラ側も音色や響きを変化させているので非常に聴きやすい「魔弾の射手」序曲となっている。

 ウェーバー:歌劇「オイリアンテ」序曲、1960年9月28日録音
・・・オペラ本編としてはあまり演奏回数は多くないがこの煌びやかで推進力、機動力などオーケストラ全体からエネルギーを感じることができるようになっていることもあって序曲は頻繁に演奏される。「急→緩」や「緩→急」の分かりやすいテンポチェンジなど、細かいダイナミクス変化はダイナミック・レンジの幅広さが増したことによってより一層この序曲を楽しめやすくなったと言えるだろう。

 ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲、1960年5月4〜6日録音
・・・「魔弾の射手」と肩を並べているくらいに有名な「オベロン」序曲。重厚的で重めなフィルハーモニア管の音色とサウンドにより一音一音に対しての重みが全く違うようにも思える。ダイナミック・レンジの幅広さが生かされていることもあってより壮大な演奏となってこの序曲を楽しむことができるようになっている。テンポの緩急も明確につけられているため、聴き手の心を掴むのは間違いないだろう。

 フンパーディンク:歌劇「ヘンデルとグレーテル」序曲、1960年9月27日録音
・・・フンパーディンクの代表的な作品の一つである「ヘンデルとグレーテル」からまずは序曲が収録されている。この後にパントマイムを聴くことができるが、この序曲ではここまでの重厚的かつ濃厚な広がりのあるフィルハーモニア管のサウンドに加えて神秘的で豊かな美しい音色を楽しむことができるようになっている。特に弦楽器やホルンが奏でる美しい音色には思わずうっとりさせられてしまうことは間違いないだろう。

 フンパーディンク:歌劇「ヘンデルとグレーテル」よりパントマイム、1960年9月27,29日録音
・・・「ヘンデルとグレーテル」から序曲に続いてパントマイムが演奏される。幻想的かつ神秘的な美しい音色で奏でられる今回の演奏は非常に濃厚で厚みのある演奏と言えるだろう。若干のノイズがあるものの、木管楽器や弦楽器を筆頭にダイナミック・レンジの幅広さが生かされた演奏が展開されているため、些細なことは正直言って気になることはない。土台のしっかりとしたベルリン・フィル並みの弦楽器に注目して聴いていると面白いかもしれない。

 グルック:歌劇「オーリードのイフィジェニー」序曲、9月29日録音
・・・重厚的で幅広さのある演奏となっている。ここまでに収録されていたウェーバーやフンパーディンクらのような序曲とはまた違う壮大なスケールとダイナミクスをもって演奏されているので、聴いていて清々しい気持ちになる。オペラ本編を私はまだ聴くことができていないのでこれは後日また聴きたいと考えているのだが、濃厚で深みのある今回のサウンドに適した演奏だったようにも思える。

 ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇「こうもり」序曲、1961年10月30日、12月2日録音
・・・想像していたテンポよりもやや重めで遅めの印象ではあるがその中でも失われることのない機動力や推進力はクレンペラーとフィルハーモニア管だからこそ演奏できるようなものと言ってもいいくらいである。柔軟でスケールのある弦楽器群がなにより聴きどころ抜群になっており、それに加わる形でメリハリのある金管楽器と木管楽器、打楽器のバランスも非常に優れている。今回は序曲のみだが聴いていてこれから本編が始まってもおかしくないようなテンションになることは間違いないだろう。

 ヨハン・シュトラウス2世:皇帝円舞曲、1961年10月20日録音
・・・ニューイヤー・コンサートでのウィーン・フィルとはまた違う美しさがフィルハーモニア管によって奏でられている。音圧のある金管楽器や優雅で柔軟なスケールのある弦楽器、演奏されるだけで引き締まった空気感を感じることのできる打楽器など演奏全体に深みがあるのだがそれに関して重みを一切感じることがないように思える。ダイナミック・レンジの幅広さが2020年最新マスタリングによって作り込まれているため、細部まで細かく聴き込む楽しさがこの「皇帝円舞曲」には備わっていると感じた。

 クレンペラーとフィルハーモニア管弦楽団(ニュー・フィルハーモニア管弦楽団も含む)は多くの録音を残したが、今回の序曲集&ワルツはこれまでの交響曲などと同じくらいに聴きごたえのあった名演揃いだったと聴き終えた今は感じている。何より旧EMIということもあって録音状態も良い。まだまだクレンペラーが残した旧EMI録音は大変多く存在しているので、同シリーズでSACDハイブリッド盤となってほしいのもそうだが、一つのBOXとして発売してほしいという気持ちもあったりする。ひとまず当盤をもう何周か聴きたいと思う。