アンチェルがスプラフォンに残した2種類のマーラー交響曲が2018年にSACDハイブリッド仕様の高音質盤となって復刻されていた。発売当初2枚組で5280円と、少々お高い価格設定に気が引けてしまい何年か購入していなかったのだが、改めてマーラーの交響曲CDを収集するという意味も含めて購入し試聴してみたところ、想像していた以上に素晴らしいマーラーだったことは言うまでもない。
マーラー:交響曲第1番「巨人」、1964年12月録音
・・・これまで聴いてきたどの「巨人」とも違うより自然的で冷静な演奏となっているかもしれない。各楽器の音色に関しても当時のチェコ・フィルのままとなっているため、特に金管楽器に関してはやや古い印象を受けるかもしれない。普段聴き慣れたマーラーとは違った楽しみ方ができると言えるだろう。同時に、スプラフォンにあるオリジナル・アナログ・マスターテープからDSDマスターにダイレクト変換した後にマスタリングが施されているためダイナミック・レンジの幅広さも格段に増している。若干ノイズがあるものの、それも時代的に古き良き時代を連想させるのでこれはこれで良いだろう。演奏として、第1楽章冒頭のトランペットが本来ならば舞台裏にて演奏されるが今回はミュートを付けての演奏となっている。実際ミュートを付けて舞台上で演奏する場合もあるので今となってはそれほど不思議ではない。また、第1楽章に関してはリピートがされていない。そのため演奏時間もリピートありと比べて若干短くなっている。
マーラー:交響曲第9番、1966年4月録音
・・・時期的にいえばあまり第9番やマーラーの交響曲自体録音されていなかったがそれがターニングポイントとなっているのか、バーンスタインやアバドなど往年の時代におけるマーラー指揮者たちの解釈とはまた違う交響曲の姿を演奏から通して聴くことができるようになっている。2018年に施されたマスタリングによるダイナミック・レンジの向上も含めて長大な演奏時間を必要とするこの第9番が前向きかつ情景的に聴きやすくなった印象を受ける。クレンペラーなどの一部の指揮者による第9番は晩年になるとテンポも遅く、重々しく混沌とした空気感がより一層増すが少々聴きづらい部分が残ってしまう。しかし、今回のアンチェル&チェコ・フィルによる演奏は決してそういったマイナス面はなく、自然的かつ壮大な交響曲を聴くことができるようになっているため聴きやすくなっているということだろう。
タワーレコードからはアンチェル指揮による名盤が数多くSACDハイブリッド仕様となって復刻された。ドヴォルザークやブラームス、マーラーなどどの演奏も繰り返し聴きたくなるような素晴らしい名盤であることには変わりない。アンチェルによる名盤が今後同じように復刻されるかは正直わからないが、少しだけでも希望を持ちつつ今回のマーラーや過去に取り上げたアンチェルの名盤を聴きながらゆっくりと待ちたいと思う。
https://tower.jp/item/4818455/マーラー:交響曲第1番≪巨人≫・第9番<タワーレコード限定>