コバケンの愛称で親しまれる小林研一郎さんはドヴォルザークやマーラーの録音以外ではチャイコフスキーなどのロシア人作曲家の作品を多く録音している。今回取り上げる「シェエラザード」と「展覧会の絵」は複数のオーケストラと録音を残しているまさに十八番ともいえる曲。今回の録音はDSD 11.2MHzでのレコーディングが行われており、これまでの演奏とは比べものにならないほどの高音質となっている。同様の形で録音されたものとして両コンビによるストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」と「火の鳥」組曲(1919年版)が存在している。
リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」、2017年4月18,19日録音。第1楽章のヴァイオリン独奏を高音質で聴くことができるのは非常に嬉しい。オーケストラ全体としては余裕のある奥深いサウンドとなっている。ダイナミック・レンジの幅広さが功を奏しており、弦楽器群の音色が抜群に良い。それに合わせて木管楽器の音色との混ざり具合も素晴らしい。金管楽器の特にトロンボーンやチューバの存在は素晴らしく、音圧もしっかりと感じることができるようになっている。演奏時間としては約50分だったが、全体的にやや遅めかつ重めのテンポとなっているので、たっぷりとした「シェエラザード」を聴くことができた。
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)、2017年4月13日録音。個々のソロも多く存在するこの曲がより豪華で豪快に演奏されている。そのため一曲一曲の存在感はより大きいものとなっており、いつもより演奏時間が長く感じた。また、高音質ということを売りにしているだけあってその音質はこれまで聴いてきた同曲録音と比べても圧倒的なくらいの完成度となっており、録音されたアビー・ロード・スタジオで聴いているようである。各楽器の細部まで聴くことができる上、ダイナミック・レンジの幅広さから繰り出される大迫力の演奏には思わず驚かされてしまうこと間違いなしだ。
さて、今回はコバケンとロンドン・フィルによるリムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」とムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」をみてきたが、個人的にコバケンのCDでは度々聴くことができるコバケンの唸り声が聴けなかったのが少々残念に感じた。ライヴ録音のものでは特に演奏と一緒に収録されていることが多いのだが、それを聴くことができないとなるとどこか寂しい。とはいえそれに関しては賛否分かれるので、今回は高音質盤ということもあるしないのが正解なのかもしれない。今回試聴した際はイヤホンで聴いているが、いずれ良いスピーカーを購入した際にはこの2曲をぜひ聴きたいと思う。
https://tower.jp/item/4679415/リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」-ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)