第1036回「ヴァント没後20年、晩年に残されたベルリンフィルとのブルックナー交響曲選集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんばんは🌆本日2月14日はギュンター・ヴァントの命日です。今年で没後20年となります。そんな本日は晩年にライヴ録音されたベルリン・フィルとのブルックナー交響曲選集をみていきます。曲目としては交響曲第4番「ロマンティック」、第5番、第7番、第8番、第9番の5曲で、過去に当ブログでも取り上げたことがありますが、今回は2005年8月24日に発売されたSACDハイブリッド盤のBOXとなっています。廃盤となった今では価格が大分上がっていますが、演奏を聴いてみるとその理由もなんとなくわかる気がします。至高のブルックナーをみていきましょう。

「ギュンター・ヴァント指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」

ブルックナー作曲:
交響曲第4番「ロマンティック」

交響曲第5番

交響曲第7番

交響曲第8番

交響曲第9番



 ヴァントによるブルックナーといえば決定盤として名高い演奏が非常に多く、今回のベルリン・フィル以外のオーケストラとも数多く録音が残されている。今回のブルックナー交響曲選集は元々一曲ずつ発売されていたが、それを一つのBOXにまとめたものこそ今回取り上げていくものとなっている。2005年当時発売価格としては15400円だったが、今では20000円から高いものだと40000円の値段で市場には出回っている。また、当盤はSACDハイブリッド盤だが、2019年にはSACDシングルレイヤー盤が発売されている。こちらに関しては今日において比較的手に入れやすいかもしれない。また、各曲一枚ずつのSACDハイブリッド盤もそれぞれ発売されているため、BOXでは手に入れづらいところがあるのだが、個々では比較的手に入れやすい面もある。




 ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」、1998年1月30,31日、2月1日ライヴ録音。私が初めてブルックナーの交響曲を聴いたのがこの第4番「ロマンティック」だったが、今回の演奏はSACDハイブリッド盤となっていることによるダイナミック・レンジの幅広さからくるベルリン・フィルの重厚的で奥深い響きと芯のある太い音を存分に味わうことができる。第1楽章冒頭の美しいホルンソロに始まり、第4楽章のダイナミクスはより明確かつ適切で素晴らしい迫力に満ちた演奏である。弦楽器群が土台となっていることで重厚的になっていることは間違いないが、それに負けないくらいに伸びやかで軽快な木管楽器群や堂々とした存在感を見せつけている金管楽器群の姿は中々に素晴らしい。聴き終えた後にはただただ感動をしてしまう最初から出し惜しみをしない演奏となっている。



 ブルックナー:交響曲第5番、1996年1月12〜14日ライヴ録音。全楽章通して躍動的でエネルギーに満ち溢れた印象を受ける。特に「緩→急」で変化する際のダイナミクス変化や、どんどん加速していくテンポを含む細かいテンポチェンジなどがこの複雑かつ長大な交響曲をわかりやすくインパクトのある演奏にしているといえるだろう。弦楽器の厚みもあるが、ブルックナーの交響曲の中で特に重要な立ち位置にある金管楽器の太めで豊かな音色は非常に聴きやすい。ベルリン・フィルの重厚的なサウンドも含めて最初から最後まで余すことなく第5番を楽しむことができるライヴ録音となっている。個人的に気に入っている聴きどころとして、第4楽章の7:00あたりにある金管楽器によるコラールが非常に美しく、伸びやかで綺麗な音色で演奏されているのが強い印象として残っている。




 ブルックナー:交響曲第7番、1999年11月19〜21日ライヴ録音。ブルックナーの後期交響曲の一つで第8番ほどではないものの、人気もそれなりにある第7番。私もトランペット3rdで一度演奏をしたことがある。この美しい交響曲は第4番「ロマンティック」と並ぶと思う。特に第2楽章の美しさは格別だ。ベルリン・フィルの重厚的でスケールがあるのに加えて、ダイナミック・レンジの幅広さによってダイナミクス変化がより豪快かつ大迫力なものとなっている。特に弱奏から盛り上がった際のテンションの上がり具合は聴いていて非常に熱いものを感じる。テンポはやや重心低めだが、一音一音はスッキリとしているのでしつこさはない。演奏時間も1時間を超えるが、割と聴きやすいブルックナーであると言えるだろう。



 ブルックナー:交響曲第8番、2001年1月19〜22日ライヴ録音。今回の曲集の中で一番録音されたのが新しいものとなっている。ブルックナーの交響曲の中でも特に長大な作品であり人気もある交響曲で、誰もが一度は必ず聴いたことがあるだろう。ヴァントは他のオーケストラともこの曲を録音しているが、その中の頂点にこの曲が立つのではないかと私は考えている。もちろん他のオーケストラとも名盤となるような録音は存在するが、この曲を演奏し慣れたヴァントがベルリン・フィルと録音した最晩年のこの第8番は非常に貴重である。演奏として「緩→急」や「急→緩」の形がそれぞれわかりやすく、テンポチェンジも細かく行われている。なおかつダイナミック・レンジの幅広さが生かされ重厚的でスケールのある弦楽器をもとに、金管楽器や木管楽器が美しく豊かな音色を奏でている。それにライヴという点が加わり、より臨場感が増している。全楽章通してSACDハイブリッド盤となったこともあって非常に音質が良い。通常CD盤も聴いたことがあるが、SACDハイブリッド盤とは圧倒的な差があることを実感した。



 ブルックナー:交響曲第9番、1998年9月18,20日ライヴ録音。ブルックナー最後の未完成交響曲をより壮大かつ長大に演奏されていて、ベルリン・フィルの音色は重厚的でなおかつ美しい音色となっている。「緩→急」、「急→緩」のダイナミクス変化がよりわかりやすくなっていることもあるため、ダイナミック・レンジの幅広さによってこれまで聴いてきた同曲録音と比べても圧倒的なまでの音質と圧巻のサウンドを味わうことができるだろう。ここまでの完成度の高さはこれまで何度もこの曲を指揮してきたヴァントだからこそできているといってもいいだろう。


 さて、今回はヴァントとベルリン・フィルによるブルックナー交響曲選集をみてきた。SACDハイブリッド盤となっていることによって通常CD盤の時よりもより音質が向上している。透き通るような音色や重厚的でずっしりとした重みのあるブルックナーを楽しむことができるだろう。フルトヴェングラーやカラヤンとの演奏とはまた違うベルリン・フィルのブルックナーを聴くことができるのは非常に嬉しい。中々手に入れづらいかもしれないが、ぜひ一度ご試聴してほしい代物であることに変わりはない。そのうちSACD対応プレイヤーを購入できたらSACDシングルレイヤー盤も聴いてみたいと思う。また、「ヴァント不滅の名盤」シリーズでまだ取り上げていないCDがあるので少しずつそちらも取り上げていきたいところである。


https://tower.jp/item/1748254