第859回「生誕85年記念、若き日のハイドシェックによるモーツァルトピアノ協奏曲集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日8月21日はエリック・ハイドシェックの誕生日です。今年で85歳となります。おめでとうございます🎉そんな本日はタワーレコード限定の「Definition SACD Series」で復刻されたアンドレ・ヴァンデルノートとパリ音楽院管弦楽団と旧EMIに録音したモーツァルトのピアノ協奏曲集を取り上げていきます。曲目はピアノ協奏曲第20番、第21番、第23番、第24番、第25番、第27番の6曲です。


「エリック・ハイドシェック(ピアノ)、アンドレ・ヴァンデルノート指揮/パリ音楽院管弦楽団」

モーツァルト作曲:
ピアノ協奏曲第20番

ピアノ協奏曲第21番

ピアノ協奏曲第23番

ピアノ協奏曲第24番

ピアノ協奏曲第25番

ピアノ協奏曲第27番



 1957年12月にピアノ協奏曲第24番、第21番を録音したところから始まった6曲の録音。この曲はモノラル録音後だったと記載がある。しかし今回SACDハイブリッド仕様となって復刻されたハイドシェックによるピアノ協奏曲の演奏は非常に素晴らしい演奏だということは聴いていただけるとよくわかると思う。この録音を始めたときはまだ20代という若さで、古典的な演奏スタイルではないにしても自由に作品を存分に味わえる演奏といえる。

 モーツァルトピアノ協奏曲第20番、モーツァルトのピアノ協奏曲の中でも一番有名な作品と言っても過言ではないこの曲。他のピアニストが残してきた演奏スタイルとは違い自由さが重視されているような風にも聴き取れる。第2楽章ではゆったりと優しく歌いかけるように演奏し、第3楽章はオーケストラに厚みはそれほどないものの鋭さを持って演奏されている。曲が終わった時の後味は非常にスッキリとした味わいになっている。また、カデンツァに関しても従来の演奏とは違う点が垣間見るものとなっている。

 ピアノ協奏曲第21番、これは私も知らなかったのだが1967年の映画「みじかくも美しく燃え」にて第2楽章が使われていたそうだ。前作のピアノ協奏曲第20番が完成したわずか1ヶ月後に自分の演奏会用に完成させた作品。その早さにも驚くが作品の良さも非常に良い。よりシンプルな形で聴きやすく、牧歌的なスタイルは交響曲を思わせる。ハイドシェックによるピアノも透明感たっぷりに演奏されており、一瞬モノラル録音だったということを思わず忘れてしまうほどの高音質となっている。

 ピアノ協奏曲第23番、第3楽章に入った瞬間の音の響きの良さと良い、ハイドシェックによるピアノとバックのパリ音楽院管の生き生きとした音色を聴くとこれは本当に素晴らしい演奏、作品なのだと感じる。古典派のピアノ協奏曲の最高峰とも称されるこの第23番。始まった瞬間は慎重そのものだが、進んでいくにつれてその存在感は増していく。モーツァルトのピアノ協奏曲は普段第20番を良く聴くのだが、個人的にはこの曲は好みだということがわかった。

 ピアノ協奏曲第24番、ピアノ協奏曲第20番と同じ短調のピアノ協奏曲で、モーツァルトが作曲した短調のピアノ協奏曲はこの2曲だけである。短調らしくやや暗めではあるが、信念があるため常に暗さが優っているわけではないため聴きやすい。ややハイドシェックによるピアノの音色は明るめに感じるが、オーケストラの素朴でまとまりのある響きと音色が固めていることもあり上手く調和されている。

 ピアノ協奏曲第25番、力強いファンファーレ風の主題で始まり、第2楽章では甘くゆったりと美しい演奏を奏でる。まさに交響曲のようなシンフォニックな響きがある。ハイドシェックの自由さ溢れる型にハマらないピアノも素晴らしいが、バックのヴァルデルノートとパリ音楽院管の演奏もバランスが取れていて素晴らしい。クリュイタンスとのラヴェルやドビュッシーの演奏時とはまた違う音色で個人的にはこちらの方が好きだ。演奏スタイルに関してもテンポ自体決して速かったり遅かったりするわけではなく、非常に丁度いいテンポとなっている。ピアノの音色は明るめで軽く聴きやすい。

 ピアノ協奏曲第27番、モーツァルト最後のピアノ協奏曲であるこの曲。ピアノ協奏曲第20番と同じくらい頻繁に演奏会で取り上げられる名作である。これまでのピアノ協奏曲とはまた違う趣きで、悠然とした落ち着きのある構成となっている。ハイドシェックらによる演奏もそれを反映させたものとなっており、どこか安心感に満ちた演奏で非常に聴きやすい。清澄、自然体そのものが曲から、演奏から伝わってくる。

 ハイドシェックによるピアノを今回初めて聴いた。所々時代を感じさせるような音割れやノイズなども含まれているものの、2018年に発売された時に施された最新マスタリングの効果は絶大なものだということが演奏から伝わってくる。ダイナミック・レンジの幅広さも素晴らしい。モノラル録音となっている第21番と第24番もステレオ録音に引けを取らない音質となっているので、期待を裏切ることはまずないだろう。まだタワーレコード等でも購入できるはずなので、気になった方は一度聴いていただければと思う。