第857回「ガーディナーによるモーツァルト交響曲集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃ピリオド楽器、古楽器、オリジナル楽器と様々な呼ばれ方をした作曲家が生きていた当時の音を再現するべくしたオーケストラや指揮者は今では当たり前のように増えています。フランス・ブリュッヘンと18世紀オーケストラ、フランソワ=グザヴィエ・ロトとレ・シエクルやサー・ジョン・エリオット・ガーディナー 、クリストファー・ホグウッド、日本ではバッハ・コレギウム・ジャパンなどがあげられる。今回はそのうちサー・ジョン・エリオット・ガーディナーとイギリス・バロック管弦楽団とのモーツァルト交響曲集をみていきたいと思う。


「サー・ジョン・エリオット・ガーディナー指揮/イギリス・バロック管弦楽団」

モーツァルト作曲:
交響曲第29番

交響曲第31番「パリ」

交響曲第32番

交響曲第33番

交響曲第34番

交響曲第35番「ハフナー」

交響曲第36番「リンツ」

交響曲第38番「プラハ」

交響曲第39番

交響曲第40番

交響曲第41番「ジュピター」



 ガーディナーが残したオリジナル楽器による演奏では、バッハ、ベートーヴェン、モーツァルト作品が特に知られている。ベートーヴェン交響曲全集は過去に当ブログでも取り上げたのが懐かしい。ガーディナーは他にもモダン楽器を使用したオーケストラとも演奏を残しており、他の指揮者とは違う視点による表現が功を奏した形となっている。

 モーツァルト交響曲第29番、当盤に収録された一曲目の交響曲。スッキリとしていてなおかつ聴きやすい。オリジナル楽器等の演奏となるとピッチが低くなり引き締まった演奏が多いため人によっては好みが分かれるのだが、今回の演奏は割とモダン寄りな作りとなっている印象なので聴きやすいと私は考える。弦楽器を中心に全体の流れを上手く作り上げ、木管楽器はそれを上手くサポート役としている。

 交響曲第31番、疾風の如く軽快かつ強固な音形で駆け抜けていく演奏。第4楽章に関しても早すぎることなく、絶妙なテンポで演奏されている。近年演奏されているようなものほどピッチも低すぎない印象があり比較的聴きやすい31番という気がする。

 交響曲第32番、今回普通に作業をしながら聴いていたということもあり単一楽章ということを忘れてしまっていた作品である。「A→B→A」のシンプルな構成で全3部に分かれて演奏時間は8分ほど。かつてここまで短い演奏時間の交響曲は吹奏楽ではお馴染みのC.T.スミスの交響曲第1番くらいだっただろうか。それはそれとしても後のブルックナーやマーラーの交響曲とは違い長くないということもあり、すぐに聴くことができるコンパクトでお手軽な交響曲で、演奏も各部ごとに特徴を抑えた美しい音色で演奏されている。

 交響曲第33番、慎重に、大切に演奏されている印象を受ける。緩やかな第2楽章は非常に心地良く、オリジナル楽器で演奏されていることを忘れてしまうくらいの優しさに包まれている。まるで子供のような遊び心があるかのような演奏である。スッキリとしていて聴きやすい音色にも注目したい。

 交響曲第34番、木管楽器の音色とバランスが非常に美しい。編成もモダンオーケストラよりも少ないが、強固な音ではないため聴きやすい綺麗な音である。一人一人の奏者の技術力の高さも演奏から伝わってくる。

 交響曲第35番「ハフナー」、個人的に「ハフナー」は親しみやすく全体的に短い作品というイメージがあった。しかし今回の演奏では各楽章ごとに作り込みが素晴らしく聴きやすい。弦楽器の音色がこの曲で上手く中心と支え役を担っている面もあり良いバランスを保っている。

 交響曲第36番「リンツ」、モーツァルトが4日間で仕上げたという交響曲ではあるが、構成もより明確でしっかりとしていることもあり後の交響曲第38番〜第41番と肩を並べる人気曲である。生き生きと快活な音色と響きを待ち合わせるこの曲は第2楽章の緩徐楽章で珍しくトランペットやティンパニが登場したりする。これまでの交響曲と比べるとやや演奏時間は伸びるが、比較的聴きやすい。ヴァイオリンの音色が印象的で美しい演奏だ。

 交響曲第38番「プラハ」、今でも根強い人気を誇るモーツァルトの交響曲。「プラハ」の愛称を持ったこの曲は同じく代表作のオペラである「フィガロの結婚」と同時期に作曲された。「フィガロ」に引けを取らない美しさと煌びやかな旋律がこの作品にはあり、それをガーディナーとイギリス・バロック管は見事に演奏している。弱奏部での音色と響きはこれまでにないくらいの美しさを誇り、気品の高さを印象付けさせるものとなっている。

 交響曲第39番、モーツァルト晩年の三大交響曲の最初の曲である第39番。オーボエが編成にないというのも珍しい作品で、他の作品ではピアノ協奏曲第22番、第23番等でも同様の形が確認できる。「急→緩」、「緩→急」がよくわかりやすい形で演奏されており、それぞれ差がはっきりしている。それに加えてダイナミクスも明確に付けられている。音色はどちらかといえば強固ではない分モダン寄りなのだが、それだからこそ聴きやすさも増していると私は考えている。

 交響曲第40番、モーツァルトの後期交響曲の中でも人気が高い名作。短調作品であり明確な構成であるため頭の中に「スッ」と入ってくるため受け入れやすい作品だ。そしてガーディナーとイギリス・バロック管によるスタイリッシュでキツすぎない音色が非常に良く、ダイナミクスも素晴らしい。疲れることなく最後まで聴くことができる。

 交響曲第41番「ジュピター」、ついに最後の交響曲である「ジュピター」となった。モーツァルトの最も人気のある交響曲ということなのだろうか力の入れ具合が全く違う。第4楽章に入ってからの気迫も違うのはもちろん、全楽章の統一された音色や響きはより鮮明なものとなっている。オーケストラ全体のバランスも良く、普段私はあまりモーツァルトを聴かないが全体的に楽しめる演奏だった。

 録音当時のガーディナー含め他のオリジナル楽器による演奏は、モダンと響き、音色に違いが明確だったということもあり、多くの作品が支持されにくかったかもしれないが、現在ではオリジナル楽器による演奏はすでに定着しているのに加えて演奏スタイルも古典奏法が主流となり往年の時代の演奏とはまた違う形が確立されている。同じジャンルでいえばバッハ・コレギウム・ジャパンによるバッハの合唱曲全集も悩んだ末購入してからまだ聴けていないので、そちらも少しずつ聴いていこうと思う。そしてガーディナーによる演奏は今後も取り上げていきたい。