第630回「ヨッフム&コンセルトヘボウ管によるベートーヴェン交響曲全集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃2020年も終わりを迎え、2021年になりました。多くの人々は正月休みだと思いますが、私は元日から出勤中です。今年は初詣も行けそうにないので仕事をしながらゆっくりではありませんが過ごしたいと思います。さて本日ご紹介していくのはオイゲン・ヨッフムによるロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とのベートーヴェン交響曲全集です。昨年はベートーヴェンの生誕250年記念として多くの名盤が復刻されました。当盤は2017年にタワーレコードより新規マスタリングで蘇ったヨッフムのベートーヴェンとなります。2020年に購入しましたが、ご紹介するタイミングを逃してまして、今回に至ります。ヨッフムは3回ベートーヴェン交響曲全集を完成させていますが今回は2回目のものになります。


「オイゲン・ヨッフム指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団」


ベートーヴェン交響曲全集



 ブルックナーの印象が強いヨッフムだが、ベートーヴェンの名盤、名演も多く残してきた指揮者でもある。3回目の全集となったロンドン響とのものも有名だが、コンセルトヘボウ管との演奏も捨てがたい。1967〜69年に録音された今回の演奏は年代を感じさせないくらいの録音状態の良さと聴くだけでテンションが盛り上がってくる演奏ということは間違いない。

 まず交響曲第1番、全集の始まりにふさわしい始まりとなっている。弦楽器のキレも中々良いもので、歯切れも良いため聴いていて飽き飽きしない。むしろ刺激的な演奏と言えるだろう。古典奏法やピリオド楽器とはまた違うベートーヴェン像を確認することができる。また、新規マスタリングの効果もあるのか全体的にダイナミック・レンジの幅が広い。

 交響曲第2番、今までこの曲に関しては中々個人的に「グッ」とくる演奏に巡り合っていなかった。今回の演奏はどうだろう。どんどんヨッフムが描く世界に引きずり込まれていく、2番に関して言えばベートーヴェンの交響曲の中でもマイナーな作品が故にあまり聴いていないということもあるのだが、ここまでワクワクした演奏はこれまで聴いたことがない。弦楽器のキレ味は一番同様健在だ。

 交響曲第3番「英雄」、朝比奈隆の演奏ほどずっしりとしてはいないが、やや重めとなっている今回の演奏。その分全体の迫力が増しており、駆け抜けることはないが安全運転で進んでいくため壮大な世界の「英雄」となっている。オーケストラ全体まで細部まで聴くことができる演奏は今回のものくらいかもしれない。また、各楽器の音に芯があり、聴きごたえ抜群だ。

 交響曲第4番、この名前を聞いて多くの方々がカルロス・クライバーとバイエルン国立管とのライヴ演奏が頭に出てくることと思う。間違いなく4番の印象を変えることとなった演奏なのは間違いないだろう。しかし、今回の演奏も中々印象的であると感じるのは私だけだろうか?ハイティンクはこの時代のコンセルトヘボウ管をまだ完全に乗りこなしてはいなかったようだが、ヨッフムも同じかと問われればそうではない。エネルギー的にはクライバーによるものの方が勝るが、全体の空間を上手く掴んでいるし、何よりバランスが取れている。スイッチのオンオフが上手い演奏であると言えるだろう。第2楽章の演奏は中々心に残るものを感じた。

 交響曲第5番、つい先日大晦日の「東急ジルベスターコンサート」にて第1楽章と第4楽章を聴いたばかりのこの曲、この時は全曲ではなかったが改めて全曲聴くとこの曲の良さがよくわかる。なにより構成がシンプルで面白い。後の作品群に比べて素材が複雑でないこともあるだろう。演奏としてテンポは一定のものを保って演奏されていないが、ヨッフムらしいというかバランスも良く全体的に聴きやすかった。

 交響曲第6番「田園」、ここまでゆったりと聴けた演奏は初めてかもしれない。ここまでのヨッフムによる演奏を聴いてきたこともプラスになったのか安心感がある。第1楽章から第3楽章まではゆったりと安らぎを持って演奏され、第4楽章では嵐のように荒れる。第5楽章では再び安らぎが戻り、曲が集結する。元々私はベートーヴェンの交響曲の中で一番好きな曲が「田園」だったが、他の曲を聴いていくうちに他の交響曲も好きになっていきこの曲だけを好んで聴くことが減ったが、ヨッフムによる演奏はその当時の純粋にこの「田園」という大作が好きだった気持ちが蘇ったような気がした。オーケストラの音色も華やかな印象を受け、聴きやすさに溢れたものだった。

 交響曲第7番、3番「英雄」と同じように冒頭は軽めではなく重め。カラヤンなどのような爆走っぷりはないものの、重量感溢れる演奏となっており王道の交響曲たる姿を見せている。一音一音の重みと安定感は他の演奏と比べものにならない。編成もそこまで大きくないが、まさに大迫力のベト7(交響曲第7番)だったと言える。

 交響曲第8番、ハイドンやモーツァルト由来の交響曲を連想させる8番の演奏はいつもなら底抜けに明るいだけとなってしまうのだが、今回はそれに加えて幅広いダイナミック・レンジが加えられている。これによりあまり表向きでなかったが、他の交響曲に負けない存在感を見せてくれる。木管楽器と弦楽器のコンビネーションが楽しめるのは当盤で間違いないだろう。

 交響曲第9番「合唱付き」、多くの人々が自分の好きなものに対してこだわりを持つと思う。私もそうだ。ベートーヴェンの交響曲の中でいえば「第九」は特にそうで、数えたことはないがこれまで何十種類以上の「第九」を聴いてきた。そして今回の演奏は間違いなく上位に入る名盤である。全ての流れにおいて理想的な演奏を繰り広げてくれる。音の切り方や響きの作り方、ダイナミクスなど全てにおいて随一の演奏と言える。最近聴いたのでいえばガーディナー盤は結構気に入った演奏だったが、今回の演奏はまさにそれと同様もしくはそれ以上の凄みを持った演奏であると断言することができる。迫力満天の「第九」が聴けて非常に満足している。

 今回の全集は全体的に刺激的で中々楽しめる演奏ばかりだった。新規マスタリングの効果もあることだろう。今回同時にロンドン響との交響曲全集も購入しているので、こちらはまた近いうちにご紹介したいと思う。個人的に今後のSACD化を希望するディスクとしては当盤をぜひ推したい。ここまで満足した全集は久しぶりで聴いていてどんどん次の演奏を聴きたくなり、早い段階で聴き終えた。今後も聴き続ける盤になると思う。