第492回「全マーラーファン注目!テンシュテットのマーラーがタワーレコードのSACDで蘇る!!」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日はテンシュテットによるマーラーの名盤をご紹介します。マーラーといえばバーンスタインの名前が出てきますが、ライヴ演奏も含めて多くの録音を残しているのはテンシュテットであり、彼の右に出る人物はいないようにも考えられます。今回は数ある中からロンドン・フィルハーモニー管弦楽団と共に完成させた交響曲全集の一部がタワーレコードからSACD化されて帰ってきました。もちろんマーラーファンの私としましては、すでに全集も所持しております。今回収録してされている曲としては、交響曲第1番「巨人」、5番、9番、10番の計4曲です。他の交響曲もSACD化してくれればなお良いのですが、まずはこの4曲をみていきましょう。

 

 

「クラウス・テンシュテット指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団」

 

 

マーラー作曲:

交響曲第1番「巨人」、5番、9番、10番

 

 

 

 テンシュテットのマーラーが評価されたのはロンドンフィルと演奏をしてからのこと。今回の4曲はアナログ録音となっており、今回のSACD化はそれらをリマスターする意味合いが含まれている。テンシュテットの交響曲全集は非常に素晴らしい出来栄えで、今もなお多くの人々に愛されている名盤だが、今回のSACD化でさらに音に変化がもたらされたのは言うまでもない。

 

 まず「巨人」、知る限りではテンシュテットはこの曲を3回録音している。ロンドンフィルとのライヴ、シカゴ響、そして今回の演奏だ。今回の演奏はその中で最も人気のある素晴らしい演奏だった。すでにSACD盤は発売されているのだが、今回タワーレコード限定でリイシューされたその音質は非常に素晴らしい。マーラーの交響曲は2番〜4番までの「角笛交響曲」など、他の番号付き交響曲の影響を受けている交響曲がいくつか存在する。しかし、今回の「巨人」は自身の歌曲「さすらう若人の歌」が1楽章と3楽章に用いられているくらいで、他の交響曲と関連性はみられない。また、元々は交響詩という立ち位置で作曲されたこともあるのか、作風はまだ後の「混沌」とした曲ではない。故に新鮮で、親しみやすいのである。ロンドンフィルの技術力は元から素晴らしく、ダイナミスの幅はわりかし大きく取られていたが、今回のリマスターによって音に潤いが戻ってきた。私自身すでに全集を所持しており、この演奏も聴き終えているのだが、そちらと比較してもオーケストラ全体が生き生きとしている。多少の音割れがあるものの、冒頭の霧がかった演出や遠くから聴こえてくるトランペットのファンファーレ、「カッコウ」の鳴き声などどれも自然に聴こえる。また4楽章の終結部、ホルンは立奏で吹くことを指示されている箇所も迫力ある演奏を楽しむことができる。

 

 続く交響曲第5番、マーラー交響曲の中でも有名な作品であり、誰もが一度は演奏してみたい曲だ。ベートーヴェン由来の「暗→明」という形で変化していく交響曲の流れが良い。冒頭のトランペットソロも力強く演奏されており、2度目の演奏時にはその音の太さに驚かされる。こんなソロを演奏してみたいものだ。5番で忘れてはならないのは4楽章のアダージェット、この曲で最も美しい楽章であり、マーラーが愛しのアルマに捧げた曲。今回は11分とやや長めにとられた演奏時間で美しい空間を堪能することができる。過去にこの曲もSACD化されているのだが、その時よりも素晴らしい仕上がりになっており、細部まで聴き入ることができる。そして5楽章、個人的にこの曲で1番のお気に入りの楽章だ。テンポは極端に速いわけではなく、落ち着きを持った堂々とした足取りで進んでいく。少々残念だったのは終結部音楽的に頂点に来た際(14:54)に音割れがある。ここは改善できなかったようだ。しかしそこ以外は素晴らしい出来栄えなので、期待は裏切られないと思う。

 

 最後は9番と10番、私は全集を試聴する際必ずこの2曲はセットで考えていつも聴いている。4楽章の沈黙が終わり、10番の冒頭ヴィオラから始まる「終わりへの歩み」は悲しみを彷彿とさせる。今回の10番は純粋な1楽章アダージョのみ、補筆版ではない。個人的にはクック補筆版が好きだが、原点回帰するならやはり1楽章のみの未完成を聴く方が良いと考える。9番は今回初のSACD化となっており、9番と10番もより良い終わり方をしているようにも聴こえる。SACD化によって音が洗礼され、曲調としても重い作品が聴きやすくなった。といってもそこまで9番と10番が嫌いなわけではないが、聴き終えた後には心に残るものがいつもある。今回の演奏でもそれは感じられたが、強いメッセージを持った作品であるということの再認識に繋がる演奏だった。

 

 タワーレコード限定で限定1000セットのみ販売されている今回の曲集。購入することは損につながることは決してない。すでに約530種類のマーラーを聴いてきた私だが、今回の盤は永久保存盤だろうと思う。値段は少々してしまうが、買って後悔することはまずない。8月には同じタワーレコードからノイマンとチェコフィルによる1回目の交響曲全集がSACD化されて帰ってきた。こちらに関してもまた後日ご紹介したいと思う。今後もマーラーの交響曲をより多くの人々に聴いていただければ、一マーラーファンとしては嬉しいところだ。

 

https://tower.jp/item/5038712/マーラー:-交響曲第1番、第5番、第9番、第10番アダージョ<タワーレコード限定>