(写真:鎌倉 天園ハイキングコースから見た鎌倉市中)
平成二十三年三月十一日に発生した、東北地方太平洋沖地震がMw=9.0で日本周辺における観測史上最大の地震であり、宮城県栗原市で震度七、宮城・福島・茨木・栃木で震度六強を観測している。津波は場所により十メートル以上最大遡上高四十・一メートルにもなる巨大津波であった。岩手県では津波の浸水地域は五十八平方キロで、宮城・福島より少なかったが、浸水域での人口密度が三県の中で最も大きかった。その狭い平地に漁港と漁業関連施設、市街地が広がっていたことが挙げたれる。そして、津波の常襲地帯であった事から防波堤・防潮堤の規模は日本随一であったがリアス式海岸であるため地震による津波の波高が予想をはるかに超えてしまった。住民の防災意識も高く過去の津波の伝承や石碑(自然災害伝承碑)が至る所に残り、多くの人々が避難行動をとったが、それを上回った津波の波高であったため被害が甚大化した。そして、津波による原発事故がさらなる追い打ちをかけることになった。
(写真:鎌倉 稲村ケ崎と江の島)
現在鎌倉市の津波ハザードマップ(令和二年四月改訂版)が作成されている。このマップは「津波浸水想定図」を基に浸水域、浸水深及び避難所等を示したマップである。「津波浸水想定図」合計五つの地震による津波浸水予測図を基に浸水域、浸水深が最大となるよう重ね合わせて作成されたものである。最大津波が十四・五メートルなる「相模トラフ沿いの海溝型地震(西側モデル)」。そして最大津波到着時間が地震直後の八分と最も短い「元禄関東地震タイプと国府津―松田断層帯地震の連動地震」を考慮され「津波避難対象区域」を重ね合わせ作成された。合計五つの地震とは、
・相模トラフ沿いの海溝型地震(西側モデル:明応地震と考えられる)(中央モデル:大正関東地震と考える)」。Mw=8.7、前回発生時期不明。
・元禄関東地震タイプ。Mw=8.5、前回発生時期1703年。
・国府津―松田断層帯地震の連動地震。Mw=8.5クラス、前回発生時期不明。
・慶長型地震。Mw=8.5クラス、前回は発生時1605年慶長東海地震の断層モデルを基に神奈川県にとって影響が大きく発生の可能性が考えられる。
(写真:鎌倉 由比ヶ浜・材木座海岸)
相模湾は遠浅な海岸形成を成しているため、過去の地震による津波の波高は六から十メートルぐらいであり、東北地方太平洋沖地震時の津波の波高に達するかは、予想しがたい。しかし小坪・及び三浦半島東部は波高が大きくなると予想される。そして、過去の災害を超える被害も出ることもあり得る。しかし、過去の歴史から推定される災害範囲を作成し費用対効果に適した対応がなされなければ、財政も破綻してしまう。鎌倉市は観光により日中人口が多く、特に土日祝日の観光客数は異常に増加する。鎌倉市においては、地震に伴う津波が発生した場合の避難地を示す誘導板等の設置が少ない。それは、鎌倉駅・小町・鶴岡八幡宮に集中していることから、過去の津波到達地域が二ノ鳥居までとされ鶴岡八幡宮境内においては浸水例がないためである。しかし、材木座海岸周辺・由比ヶ浜周辺で観光客は、どのように対応したらよいのだろう。
(写真:鎌倉 鶴岡八幡宮)
過去の歴史から学ぶことも多いが、想定を超えることも多々ある。それを見極めることの必要性と鎌倉期においても災害時の公助・共助がなされてきた事も知ってもらいたい。しかし現在、発展してきた人間にとって自助という対応をすることが必要とされる。関東大震災・阪神淡路大震災・東日本大震災等を経験してきたことにより、公助(国・公的機関が国民に援助する)が災害発生時から三~七日程必要となり、自身が自助としての対応を行う事を政府も表明している。自助は災害に備え対策しておくことである。その中で物資の必要性が求められ、二リットルの飲料水は夏場と冬場では違うが、一人当たり三本から六本は必要である。また、ガスコンロと燃料、食料としてカップ麺・アルファ米・缶詰・乾パン等などである。消費期限を明確にマジック等で書き込み順次消費しては、継ぎ足すことで無駄をなくすことができる。若いときに山登りが好きで、冬山に登り、またクライミングをしていた。当時のアルファ米は本当にまずかったが、今は炊き込みご飯風の種類も増えて美味しくなっている。年に二・三回ほどアルファ米の日にして消費し、継ぎ足している。缶詰類も昔と比べ美味しく、日々の食材に使用し、酒の肴として常時十五種類くらいは置いている。お風呂の水も大切になる。トイレの排水用水として使うことができる。しかしマンション棟では地震により配水管に障害が出た場合は使う事が出来ない。簡易トイレ等の事も考慮する必要がある。
(写真:三浦半島)
発展した現在、現代的なインフラに制御され便利になった分、災害時は対応しきれない。災害時において、人々を助ける公助、共助、自助があるが、今は自助が最も必要である。家族で、地域の災害の歴史を知り、災害時には、どの様な対処・準備が必要なのか、どこに避難するのか、そう言った事を確認し、もしもの災害を乗り越えてもらえれば幸いである。 ―完