鎌倉散策 海棠の寺 浄智寺 | 鎌倉歳時記

鎌倉歳時記

定年後、大好きな鎌倉での生活に憧れ、移住計画や、その後の鎌倉での生活の日々を語ろうと思います。家族を大阪に置き、一人生活を鎌倉の歳時記を通し、趣味の歴史や寺社仏閣等を綴っていきす。

 

 金曜日夕方、鎌倉市中の本屋さんから、頼んでいた本が入荷したとの連絡が入り、翌日土曜日の午前中に取りに行くことにした。土曜日は暖かく良い天気のため、気晴らしに、散歩がてらに市中に出掛けた。小袋谷から明月院までバスに乗り、浄智寺の海棠は咲いているかと思い訪ねた。甘露ノ井から唐様鐘楼門まではショカッサイやシャガ(著莪)が一面に咲いている。シャガは中国原産で日本には、かなり古い時代に入ってきた帰化植物である。木陰の湿ったところを好むアヤメ科の多年草である。舞う蝶に似ているため「胡蝶花」とも書き、白地の花びらに紫と黄色の筋目が入る清楚な花である。桜が散り終わり、儚さを感じ終えた頃に、例年四月下旬から五月上旬にかけて咲く。京都、奈良や私の大阪のマンションの周りにも咲き、春を感じさせてくれる私の大好きな花である。

 

 金宝山浄智寺は臨済宗円覚寺派の寺院で、かつては鎌倉五山の第四位の禅刹であった。五代執権北条時頼の三男宗政の菩提を弔う為、正室と子息の師時が弘安四年(1281)に創建した寺院である。鐘楼門を先に進み拝観料をお支払いする小屋に付くが、誰もおらず、拝観終了と掲げられた表札と、竹で寺院に入る小道が閉ざされていた。十時十五分、自粛要請が出ているため、拝観はお休みなのかと思いしや、御住職が出てこられ、この一週間ほとんど拝観者は訪れなかったと言われ、「どうぞお参りしてください」と言っていただき中に入れて頂いた。御朱印は控えておられるとの事で、拝観料は賽銭箱の様な物に入れさせていただいた。仏殿横の庭に海棠の葉が鮮やかな濃いピンク色に染まっているのが見えた。

 

 

 毎年、桜とほぼ同じ時期に咲き、桜より若干花が咲く時期は長いが、この二・三週間に訪れることは難しかった。昨年の五月に大阪から鎌倉に来て、海棠を見るのを楽しみにしていたが、少し遅かったようで散り際であった。しかし、散り際でも見る事が出来たのは嬉しかった。「睡れる花」として、美人の代名詞ともいわれる。またヤマブキや椿が境内の脇に咲いていた。

 

 北鎌倉は人気のある寺院が多く、今日の様に誰もいない浄智寺は初めてであり、ゆっくりと時間が過ぎていった。キャップをかぶりサングラスとマスク姿。異様な姿での拝観だったが、一人だけの浄智寺は阿弥陀、釈迦、弥勒の三世仏の思し召しだったと思う。その後、浄智寺を出て亀ヶ谷切通を通り海蔵寺に向かう。亀ヶ谷津のお地蔵さんにお賽銭を置き、手を合わせた。切通の木陰から優しい木漏れ日が差し、その向こうの青空が美しかった。