四月十五日は釈迦入滅の日に当たり、釈迦の遺徳を奉賛して、追慕する為、釈迦涅槃図を持たれている寺院では釈迦涅槃図を前に涅槃会を巌修されている。鎌倉では宝戒寺、建長寺、東慶寺等の各寺院で涅槃会が行われている。宝戒寺は二月十五日から二十四日まで仏涅槃図(県重文)を公開されておられるので、拝観に訪れた。
釈迦涅槃図は釈迦が入滅した様子を描かれた図である。沙羅双樹の下で頭を北にして、顔を西に向け、体は右脇を下にした姿で、十大弟子をはじめとする、様々な動物が嘆き悲しむ様が描かれている。本来、動物は十二支が描かれているが鎌倉の東慶寺の涅槃図には猫も書かれている。右上に阿那律尊者(穴率尊者)が釈迦の七歳の時に亡くなられた摩耶夫人の先導に立ち、摩耶夫人は涅槃に入ろうとする釈迦に長寿の薬を薬袋に入れて、もっと長生きをして民に教えを説くようにと現れている構図が基本である。
十二支に猫が入らなかった理由や涅槃図に書かれなかった理由など、また様々な描写の背景と描かれている人の違い等があるが、それぞれの涅槃図を見て絵解きを考えるのも釈迦の教えである。
涅槃会は奈良時代には行われていたとされ、日本最古の涅槃図は高野山金剛峰寺が所蔵されている。各時代においてその背景と民心の願いを反映させ、少しずつ構図が違いながらも全国に広がって行った。
昔、私がタイに十回ほど訪れた時、タイの寺院では涅槃像が多く見られる。全長三十メートルを超えるワット・ローカヤスターラムの涅槃像(煉瓦で形とられ漆喰で固められた像:内部に入る事が出来たと記憶する)、寺院内に横たわるワット・ポーの金色の涅槃物を見た。ほとんどが釈迦の涅槃像で他の描写される像はなかったように記憶する。
涅槃図の写真が無く、また、タイでの写真も以前フィルム写真で大阪の自宅に眠っているため掲載する事が出来ず申し訳ございません。境内の梅も美しく咲き始め、涅槃図を見た後に、ゆっくりと季節の移り変わりと梅の花を見るのも風情があると思った。