松久寺は金沢街道の泉水橋のバス停から浄妙寺五にある寺院であり、以前から気になっていた。調べてみると鎌倉市中で唯一の曹洞宗の寺院で観光寺院ではないと言うことから、いつも門が閉ざされており、拝観をあきらめていた。先日、約五年ぶりに金沢街道を歩き、松久寺の案内板に目が付き、調べてみると、拝観できるようだ。早速、寺院に連絡し、教えて頂きたいこともあり、日程を決めさせていただいた。
十一月の文化の日の連休の最終日、鎌倉街道、金沢街道と酷い渋滞が予想されたので、住居を早めに出た。道は、やはり凄い混みようであったが時間少し前にお伺いする事が出来、現在の御住職である市川住職のお母様に、お話を伺う事が出来た。本来、東京の白金台の、由緒あるお寺であったが、前回の東京オリンピックの祭に高速道路の建設により、この鎌倉に移られたとの事である。檀家の方々も墓もこちらに移されたとの事であるが、移転されてからも色々と事情があり、現在は横浜の興禅寺の市川御住職が兼務されておられ、今回は市川御住職のお母様にお話を伺った。
曹洞宗のお寺は鎌倉市内に四寺があり、大船観音時、黙仙寺、龍宝寺がある。いわゆる鎌倉市中では松久寺が曹洞宗寺院としてある。曹洞宗と言うと関西の人間は福井県永平寺を思い浮かべるが、本山は福井県永平寺、開山道元禅師と神奈川県横浜市の總持寺、開山は榮山(えいざん:永平寺三世の徹通義介禅師に従い宗義を学ばれた)禅師がある。松久寺は永平寺派の寺院である。
本殿に上がらせていただき、御本尊を拝ませていただいた。松久寺のある谷戸の字は西泉であるが、やぐらが残っていることから泰安寺の廃寺跡とも言われている。奥には石切り場もあるらしく、やぐらもあるとの事で、客殿の窓から、そのやぐらを見る事が出来き、拝見させていただいた。私の感想ではあるが石切場か、寺院を建てるために谷戸を削って平地にした跡なのか、不明である。石切り場にしては広さも小さく。平地にするために削った石を利用することも考えられる。鎌倉石は、凝灰質砂岩で幕府が開かれた後は、逗子の鷹取山付近から盛んに切り出されたと言われている。現在は景観保護の為に採掘は禁止されている。
松久寺は石柱の門を通り、坂道を登って行く坂の随所に縁台が置かれ、また、石柱や可愛いいお地蔵さまが多数置かれている。三郎次増と称する地蔵さまもあり、昭和中期の納められたものとの事である。階段を上がり墓地に向かう横に稲荷社が置かれている。奥様がこの地に初めて来たとき、かなり寺院も荒廃し、稲荷社も後を残すだけだったようであるが、狐の石像をその場で見つけられ、珍しく子狐に乳を与えている石造であった。また、周りをよく調べると、もう一体の大きな木の実のようなものを抑えている狐の石像を見つけられ、稲荷社を新しくされ、置かれている。本殿は鉄筋コンクリートの本殿であるが、周りを樹木で囲まれた清閑な美しい寺院である。また初夏には岩たばこも咲くとの事で、今、花の手入れを、こまめにされておられる
お母様と日本人の宗教観について色々と話させていただき、子供たちに日本の伝統文化を伝えて行きたいとも言われていた。道元禅師の「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて すずしかりけり」を思い浮かべさせていただける優しく、美しい寺院であった。
鎌倉散策 松久寺(しょうきゅうじ) 鎌倉市浄妙寺5-9-36 TEL0467(23)1051 参拝可能 拝観無料