鎌倉散策 鶴岡八幡宮 例大祭 流鏑馬 | 鎌倉歳時記

鎌倉歳時記

定年後、大好きな鎌倉での生活に憧れ、移住計画や、その後の鎌倉での生活の日々を語ろうと思います。家族を大阪に置き、一人生活を鎌倉の歳時記を通し、趣味の歴史や寺社仏閣等を綴っていきす。

 
  

 この鎌倉に引き付けられるものは、貴族文化から武士および庶民文化の変遷において精神的、宗教的、文化的な面に現在の日本と言う国と日本人を形成した時代の中心地であったことと思う。もう必要とされないものが、継承され、人々に新しい価値が生まれ、また継承され続けていく。例えば流鏑馬神事とか。

 雨の中、鶴岡八幡宮の例大祭に行われる流鏑馬神事を拝観しに訪れた。当日、朝から雨が降り続いたが神事が始まる前にようやく雨がやんだ。これも御祭神のたまものだろう。京都の上賀茂神社でも拝観したことがあり、その時は武田流の流鏑馬であった(記憶をたどれば行き三の的、帰り右手の右下の二的の合計五の的だった記憶がある)。

 この流鏑馬は、中世から伝わる狩装束を纏った射手(いて)が疾走する馬上から手綱(たづな)を外し、風を切りながら弓弦(ゆずる)を引き、的に鏑矢(かぶらや)を射る、日本の伝統的な騎射の技術である。流派により違いがあるが、鶴岡八幡宮では南北の参道を横切る東西に延びる流鏑馬の馬道があり、直線、約二百六十メートルの距離で進行方向左手に間を置いた三つの的を立てる。馬上から的までの距離は約五メートル前後の的で、高さは二メートル前後で、馬を疾走させ、連続して矢を射る。その一瞬の集中力と技術を見る事が出来る。

 

 京都上賀茂神社で見たときは、馬場が広く約二十メートル幅の為、拝観者は結構全体的に良く見る事が出来る。馬道は約三メートル程度で同じように縄で区切られていた。鶴岡八幡宮は馬道が狭く、拝観し辛い。射手の掛け声と目の前を一瞬過ぎていく姿を見る。しかし、迫力、速さと射手の一瞬の緊張感を垣間見る事が出来る。流鏑馬は馬を駆施ながら矢を射る事から、「矢馳せ馬(やばせうま)」と呼ばれ、時代の経過とともに流鏑馬(やぶさめ)と呼ばれるようになったと言われる。現在、流派は小笠原流、武田流があり、春の流鏑馬は武田流、秋の例大祭の流鏑馬は小笠原流と分けられている。調べてみると各地の社殿でもよく行われている。

 
 流鏑馬を含む弓馬礼法は寛平八年(896)に宇多天皇が源能有(みなもとのよしあり)に命じて制定されており、『中右記』の永長元年(1096)の項で記載されているように、馬上における実践的弓術の一つとして平安時代から存在したと言う。『吾妻鏡』では、頼朝が西行に流鏑馬の教えを受けて復活させたと記されている。平安時代末期から、鎌倉時代初期に生きた武士であり、妻子を捨て出家し、僧侶であり、歌人である西行、俗名は鳥羽院の北面の武士であり、弓の名手と謳われた佐藤則清(さとうのりきよ)。個人的に最も好きな人物である。『山家集』「ねがわくば 花のしたにて 春しなん そのきさらきの もちつきのころ」 保延六年(1140)家族を捨て、出家し、円位を名乗り、後に西行と称した。出家の動機は多々あるが、私の理想として待賢門院への失恋説であってほしい。源頼朝が鎌倉幕府を開いた後、文治二年(1186)八月に西行は東大寺の再建費用を勧進するため奥州へ向かう途中に鎌倉を訪ね頼朝と会っている。頼朝から弓馬の事を尋ねられたが「一切忘れた」ととぼけたと言われる。弓で名を馳せた北面の武士であった西行に、弓馬に関する礼儀や作法を聞きたかったのだろう。頼朝が十三歳で元服直後、平治の乱で敗れ、伊豆に流され、源氏の棟梁であるが、武士としての教養は少なかったと思われる。頼朝が西行に銀で作られた猫を手渡すが、西行は屋敷を出た後、八幡宮門前で子供に与えたと言う。この文治三年四月に義経の愛妾、静御前が回廊の拝殿で静の舞を舞い、その時すでに身ごもっており、七月に生まれた男子は由比浦で遺棄された。西行はその事を知っていたのだろうか。

 

 この鎌倉での流鏑馬は文治三年(1187)八月十五日、頼朝が鶴岡八幡宇宮墓放生会で奉納したのが始まりと言われている。安土桃山時代に鉄砲の導入と兵法の変化、明治維新、第二次世界大戦と三度の衰退がみられたが継承され続け現在に至っている。

 今回は初めての事で、見る場所が悪く、良い写真も取れなかった。次回、拝見する時は、招待席等に座り、もっと見易い場所で見てみたいものだ。一般席も鎌倉観光協会で販売が行われるが、四月の流鏑馬のみで、四百席程度らしい一の的、二の的、三の的付近を選べるらしいが、三の的付近が人気があると言う。二月ぐらいからインターネット上に掲載され三月ぐらいから販売される模様。また、槐(えんじゅ)の会(鶴岡八幡宮の外郭団体)に入会することで、招待されるとの事らしい。十月にも崇敬者大祭でも流鏑馬を見る事が出来るとの事。