鎌倉の観光名所の中でも特に人気のある社である。佐助ヶ谷の山懐にあり、現在市役所通りから源氏山公園に続く車道のふちに洞窟を彫り、便利になっている。しかし本来の参道は佐助稲荷に通じる、民家の細い階段を上っていく。社にたどり着くと鳥居が並べられ本堂に続く。
ここの銭洗水でお金を洗うと何倍にもなって戻ってくると信じられ、多くの人が参拝に訪れ銭を洗っている。1万円札から、持っているお金をすべて水浸しにして喜ぶ人も多い。本来の信仰的な目的として人の清浄感が基になっていると言うのに、何かが違っている。蝋燭、線香と笊のセットを百円だったと思うが、買い求め、本堂手前に蝋燭、線香を供えて本堂でお参りし、銭洗水で銭を洗う。銭洗弁財天が祀る宇賀福神は、本来、人の福徳をもたらすと伝えられる神の総称で食物神、農業神ともされている。その教えの中には明浄・正直を基本とした営みを行うことであり、我が身と心を清め、不浄を洗い清める事で福徳がもたらされる。使われた笊を再び勝手に使い、一万円札や五千円札を洗う人を見ると、嘆かわしい。
祭神:本宮/一杵島姫命、奥宮/弁財天。 例祭:中祭(四月初巳日)、大例(九月白露巳日)本年は九月十七日のはずです。
境内社:七福神社、水神宮。 神事芸能:鎌倉神楽。 神徳:家内安全、商売繁盛。
銭洗弁財天宇賀福神社の成り立ちは、平家を倒し幕府が開かれたころ、長く続いた戦乱も終わったが、鎌倉の民たちは天災にも合い、貧しい生活に苦しめられていた。源頼朝は世の中が安定し、民の暮らしも豊かになるように神仏の加護を祈願していた。銭洗弁財天は文治元年(1185)の巳の月巳の日に源頼朝の夢枕に宇賀福神が立ち、ここの岩窟から湧き出る水の高徳を伝えた。お告げ通りに従い、湧き水を発見し宇賀福神を祀った。北条時頼もこの社に参詣の折、この水で銭を洗い、福銭とした。その後、芸術、財福、知恵、延寿と幅広いご利益がある弁財天を信仰する者が多くなり、金銭を洗い、一族の繁栄と子孫の長久を祈るようになった。巳の日に参詣すると御利益が倍になるともいわれている。
今は、観光客、参詣者が絶えることは無い。洗ったお金を使ったら御利益が無くなるとか、色々言われる。御縁のあるよう五円玉とか、穴の開いた五十円玉とかが結びを作るため、欲を出さず、一つ財布の隅に置いておく心が大事なのではないかと思う。
この鎌倉で秋の祭りが始まる。鶴岡八幡宮例大祭、十四~十六日、流鏑馬審議は十六日。甘縄神社、秋分の日を中心とした七日間で神輿は十四日に近い日曜日。御霊神社例祭面掛け行列十八日。薪能二十一~二十二日に行われる。良い天気で良いお祭が続きますようお願いします。