月が同じ面を地球に向けているのは,「重い側が地球に引かれたため」と聞いていました。しかし,宇宙空間には摩擦がないため,重い側が地球に向いたところでストップはしません。下の様な模型を作ってみました。CDケースの中心に軸を付けて,ケースの側面に重りを3つ貼り付けました。gifアニメのように,重い側が上に行くに連れ,回転速度が減少します。これは,回転の運動エネルギーが,重りの位置エネルギーに変換されるからです。しかし,重りが一番上に達した後は,重りの位置エネルギーが再び運動エネルギーに変換され,回転速度が上昇します。摩擦がなければ,これを永遠に繰り返します。すなわち,重い側を下にして止まることはありません。
実際には,月がそうであるように止まります。それは,「潮汐ロックによる」と説明されています。「潮汐力により月が変形し摩擦熱が発生,回転エネルギーが熱になるため,回転が遅くなる」ということらしいです。エネルギー的な説明は分かりますが,具体的にどのような力が働いて遅くなるのかは簡単な説明が見当たりません。そこで,以降,この模型に細工をして説明してみたいと思います。
さて,余談です。この模型をつくるとき,回転に対してできるだけ摩擦のないものが必要でした。考えたのは,軸に細い針を使うことです。針とCDケースの穴,または針とその軸受け(アルミで作りました)のどちらかの間で滑っています(今回の模型では前者でした)。すなわち滑り摩擦が働いています。その接触面はほぼ点(または線)です。細い針を使っているため,接触面積は小さいです。しかし,「接触面積が小さくなれば滑り摩擦が小さくなる」と言うことはありません。物理で「3辺の長さが異なる直方体の積み木のどの面を下にしても,摩擦力が変わらない」という実験がありました(接触面積が変わっても摩擦力は変わらない)。では,なぜ細い程摩擦力が小さくなるのでしょうか。答えは,てこの原理です。この場合の てこの支点は針のほぼ真ん中です。作用点は針の半径,力点はCDケースの半径に近いものとして見れば,見かけの摩擦力が小さくなることが分かると思います。