自作オプチカルサーモメーター:ダイの内部温度を測定  | 技術日誌

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ここでは,電子工作,木工などの趣味での記録を書いています。
なお当初はKMK研究所のメインテーマであるSPSのノウハウを書いてきましたが,順次SPSノウハウのページに複製を作っていきます。

 SPSでは,通常ダイの表面温度を測定しています。試料部の温度はそれよりかなり高いと言った報告が多数あります。私はダイの側面から試料まで届く穴を開け,自作のオプチカルサーモメーターにより試料部の温度を測定しました。オプチカルサーモメーター非常に小さい面積の部分の温度を測定することができます。穴は小さいので,この方法がベストです。


 オプチカルサーモメーターでは,光学系により,測定面の像と電球のフィラメントの像を重ね,フィラメントにかける電圧を変え,フィラメントが見えなくなるときの電圧を測定します。測定面の温度とフィラメントの温度が一致するとフィラメントは見えなくなります。あらかじめ,電気炉を種々の温度に設定し,オプチカルサーモメーターの電圧と温度との換算表を作っておきます。人間の目は,異なる色の境を見分ける能力が高いため,1, 2度の違いを判別できます。
 下の写真は自作のオプチカルサーモメーターです。ここでは製品化することは考えていなく,「測定できれば良い」という観点で作製しました。右の角材の上に取り付けられているのが光学系です。奥の方の丸い穴の開いた板には,比較的度の高い老眼鏡(百均もの)から外したレンズを接着剤でつけてあります。電球には100 V用のクリプトン球を用いました。手前のレンズは,おもちゃの虫眼鏡です。左のテーブルタップに挿してあるのは市販のライトコントローラーです。その出力はクリプトン球と電圧計(テスター)に接続されています。


 それでは,光学系を見てみましょう。虫眼鏡を覗きクリプトン球を前後させるとフィラメントがはっきりと見える位置があります。


 また,レンズの焦点距離より先にある物体からの光はレンズの手前に実像を結びます。


 その実像は,2つ上の様な実際の物体と同様に虫眼鏡で見ることができます。これは,ケプラー望遠鏡です。下の写真は,先に見える柱に貼り付けた模様をこのケプラー望遠鏡で見たものです。柱の幅より小さい模様ですので,拡大されて見えていることがわかります。ちなみに,(奥の方のレンズに)度の低いめがねのレンズを用いると拡大率は増加します。ただし,レールにしている角材はもっと長くしなければなりません。実用的には度が+4から+5くらいのものです。また,手前のレンズ(虫眼鏡)は,焦点距離が短いほど倍率は高くなります。できるだけ焦点距離の短い虫眼鏡を使いましょう。複数枚重ねてもよいです。
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 そして,模様の実像に位置にクリプトン球を置きます。すると下の写真の様に模様とフィラメントが重なって見えることがわかります。実地では,ダイの穴を見ます。フィラメントの明るさをライトコントローラーで変化させると,フィラメントの温度がダイの穴の温度より低いときは,フィラメントが影となって見えます。フィラメントの温度が高いと,穴よりフィラメントが明るく見えます。その間にフィラメントが見えなくなるところがあります。そのときの電圧を読み取ります。あらかじめ,電気炉内の物体を様々な温度でフィラメントが見えなくなる電圧を調べ,電圧と温度との関係の換算図を作っておきます。そして,実際の測定での電圧からその温度を求めます。

 

 SPSでは,表面と内部とで100度から200度程度高いことがわかりました(条件により異なります)。