拡散ポンプの使用を中止するとき,拡散ポンプ内のオイルが充分に冷えるまで真空引きを継続しなければなりません。少しでも早く終わらせるため,拡散ポンプの加熱部をファンで冷やしたりします。SPS終了時にファンを切り忘れても,電源をSPS装置からとっていれば,SPSの電源を切ったときにファンは停止します。しかし,次回SPSを開始するとファンが再び動いてしまいます。うっかりすると,ファンで冷やしながら拡散ポンプを使うようなことにもなりかねません。
そこで,回路を作りました。その回路とその動作について紹介します。下の写真はその装置の写真です。合板にリレーなどを取り付け,拡散ポンプ装置に取り付けています。電源はSPS装置から引いています。白い押しボタンスイッチを押すとファンが回ります。SPSの電源が切れると,再度電源を入れてもファンは止まったままです。白い押しボタンスイッチを押すまでファンは回りません。また,SPS装置はONの状態でもファンを止めたい事情が生じたときは,黒い押しボタンスイッチを押せば良いのです。
順を追って回路図を示します。この下の回路図は,一部を省略しています。この状態は,SPS装置をONにした直後の状態です。リレーのコイルには電圧がかからないのでファン用のスイッチはOFFになっています。
ファン用のスイッチをONにするには,Push-ON SWを押します。このスイッチは白い押しボタンスイッチに相当します。すると,リレーのコイルに電圧がかかり,ファン用のスイッチもONになります。
Push-ON SWをいつまでも押しているのでは不便です。この回路では,ちょっと押すだけで放してもかまいません。リレーの上側(図で)のスイッチがONになるため,電源の電圧はここを通してリレーのコイルにかかるため,Push-ON SWは放しても同じ状態が継続します。これを「リレーの自己保持回路」と呼びます。
SPSの電源を切ったときの状態を示します。リレーの上側のスイッチもOFFの状態になります。そして,ファン用のスイッチもOFFになります。もっとも,この時点ではSPSからの電気が来ていませんので,ファンは回りませんが。
そして,次にSPSを使うため電源をONにしたところです。最初の状態と同じで,リレーのコイルに電圧がかからないのでリレーのスイッチはOFFで,ファン用のスイッチもOFFです。前回終了時にファンのスイッチを切らなくても,この時,ファンが回ってしまうことはありません。
ここまでで,ファンの切り忘れの機能は実現されました。SPSを使っている状態でファンを切りたいという状況があるかもしれません。そこでPush-OFF SWを増設します。Push-OFF SWは黒いスイッチに相当します。このスイッチは,押したときだけOFFになるというものです。このスイッチを押さない限り,上で説明した動作は同じです。下の図では,一旦Push-ON SWを押して放した状態です。
ここでPush-OFF SWを押します。すると,リレーの自己保持状態は解消され,ファン用のスイッチはOFFになりました。
下は,Push-OFF SWを放した時です。ファン用のスイッチはOFFのままです。これは,スタート状態と同じです。したがって,再度ONにするには,Push-ON SWを押せば良いのです。