松之山診療所での一日 | 道 〜心臓外科医 奈良原裕のブログ〜

道 〜心臓外科医 奈良原裕のブログ〜

あの日がくるまで僕は人生のうわっ面しか追いかけてこなかった。医師となり心臓外科医となって、これまで何をしてこれから何をしていきたいのか。この道がどこで終わるのかはわからないけれど、向きたい方向に顔を向けて歩いていこうと思う。

長く続く雨の合間で、今日は爽やかな秋晴れの一日となりました。朝、いつものように東海道新幹線から上越新幹線へと乗り継ぎ、越後湯沢駅でほくほく線に乗り換えると、先生に引率された小学生たちが楽しそうにでも少し控えめに声を上げながら電車に乗ってきました。

 

いつものように座っているボックスシートで彼らと相席に。聞くとこれから直江津の水族館に行くとのこと。校外学習のようで途中通過した駅名の穴埋め問題をみんなでわいわいやっています。そして、一緒になって考えていたらあっという間に降りる駅に着きました。みんなにバイバイをしてホームを歩いていると電車の窓を叩く音が。振り向くと電車の中から小学生たちが手を振ってくれていました。

 

診療所に着くと、患者さんたちがすでに何人か待っています。「おはようございます。お待たせしてすみません。」と言うと、「はい、はい~」とのんびりした返事と笑顔が返ってきました。診療所の待合の一角は、お座敷スペースとなっていて、みなさん、そこでいつからそうしているのかわからないような感じです。

 

ここ最近はずっと雨だったから今日は患者さんが多いかなと言うと、事務担当の鈴木さんが今日は少ないんじゃないかなと。雨続きでみんな稲刈りが出来なかったから、今日あたり精を出して刈ってるんじゃないかということです。そして、その言葉の通り、今日はいつも以上に時間がゆっくりと流れました。

 

診療所のすぐそばには無人の野菜直売所があります。昼休憩の合間にちょっと覗いてみるのが習慣となりました。今日の収穫は、金糸かぼちゃと枝豆です。金糸かぼちゃは松之山に来るようになって知ったお気に入りで、その実はシャキシャキとした歯ごたえで、サラダにしても中華風にしても漬物にしてもどれも美味しくいただけます。

 

ここで出会う経験は、どこか懐かしく、忘れてしまったものを思い返させてくれるような気がします。横浜に帰る新幹線の中でこのブログを書いています。窓の外を流れる景色が、夕暮れの里山から、あっという間に陽が落ち、街の明かりが無数に灯る夜景へと変わっていきます。今週末は、週明けまで待てない準緊急手術を予定しています。大変な手術ほど、頭の中でシュミレーションを何度もしなければなりません。こう書いていて、今度の手術のことが気になってきました。ベストを尽くそうと思います。

 

 

 

昼休憩の散歩中に撮った診療所そばの風景。松之山の秋はとても短いそうですが、それだけに今日の陽差し、風、匂い、そして日本の原風景がある松之山の良さを感じた一日でした。