松之山診療所での診療開始 | 道 〜心臓外科医 奈良原裕のブログ〜

道 〜心臓外科医 奈良原裕のブログ〜

あの日がくるまで僕は人生のうわっ面しか追いかけてこなかった。医師となり心臓外科医となって、これまで何をしてこれから何をしていきたいのか。この道がどこで終わるのかはわからないけれど、向きたい方向に顔を向けて歩いていこうと思う。

1年前のちょうど今頃から、これまで土日祝日も関係なく働いてきましたが、1日お休みをいただけるようになりました。心臓外科医として多くの手術を執刀し、専門医資格も取得、多くの新しいことにもチャレンジしてきました。その結果、診療科としても手術件数、成績、他院からの患者さんの紹介など多くの指標に改善を認め構造改革に成功してきました。そして、2年半前に入職した後輩も成長してきたことから、週7日の内の1日を心臓外科医としてではない形で社会に貢献したいと考えるようになりました。

 

 

十日町市国保松之山診療所。新潟県十日町市にあるこの診療所で9月より非常勤医として働き始めました。松之山診療所は、現在、常勤医不在となり隣町とは言えないやや離れた町の診療所の医師が応援に来ることでなんとか診療を継続しています。ここはいわゆる医師不足に悩む地域であり、のちに聞いたところ、自治体は医師確保に相当の努力をされているようです。そのような折、医療過疎のような地域で自分が力になれるならと全国自治体病院協議会に登録したところ、担当者からすぐに折り返しの連絡があり、ここ松之山診療所を紹介していただきました。

 

 

十日町市国保松之山診療所。かつては入院設備を持つ有床診療所でした。現在は松之山支所の移転に伴い、診療所半分、支所半分という形で利用しています。

 

 

 

松之山地域は、年間平均積雪量が3m、最大時は5mにも達し、特別豪雪地帯に指定されている厳しい自然環境にある地域です。しかしその厳しい自然は、四季の移ろいをより鮮明化し、山里の集落は美しい日本の原風景を今も残しています。診療所からほど近い距離にある松之山温泉は、草津、有馬と並んで日本三大薬湯の一つとして有名です。

 

 

星峠の棚田。ひなの宿ちとせ http://www.chitose.tv/stay/tanada/ より転載。

 

 

 

9月2日、新幹線を2つ乗り継ぎ、在来線へと乗り換え、最寄り駅の改札を出ると市が用意してくれていたタクシーの運転手さんが海外旅行先の空港で待ち受ける現地添乗員さながらに大きく名前の書かれたボードを掲げて待っていてくれました。診療所では、看護師さんや事務員さんらが初日の診療がスムーズに運ぶようにとあらゆる準備をしてくれていました。最初に受診された患者さんは、私の専門が心臓だと町の広報誌で知って是非診てもらいたいと来てくれました。

 

日本一の豪雪地帯にあるこの診療所で、高度に専門性を追求する心臓外科とは真逆の、幅広く、内科も外科も耳鼻科もときには小児科も、なんでも診る診療を行っていきます。これからこのブログで、都市部の心臓外科医と医療過疎地のプライマリ・ケア医の両立のメリットや松之山の魅力を紹介していきたいと思います。

 

 

診療初日を終え、初秋の風が吹く松之山診療所の前で記念撮影。