第4話「生き様」(最終話) | 道 〜心臓外科医 奈良原裕のブログ〜

道 〜心臓外科医 奈良原裕のブログ〜

あの日がくるまで僕は人生のうわっ面しか追いかけてこなかった。医師となり心臓外科医となって、これまで何をしてこれから何をしていきたいのか。この道がどこで終わるのかはわからないけれど、向きたい方向に顔を向けて歩いていこうと思う。

「生き様」

私立大学付属の高校に入学した僕は、受験勉強することなく大学へ進学することが出来た。大学生活は可もなく不可もなく。今思えば、もっとチャレンジ精神があってもよかったかも。
石油元売会社に就職した僕はworkaholicと言われるほど迷いもなく全力で働いていた。
そんな会社を4年半勤めて退職した。
退職後、大学受験をしたことがなかった僕は死ぬ程勉強した。
そして翌々年の春、医学部に入学した。
医学部に入り空手を始めた。高知県チャンピオンや中四国チャンピオンに勝ったこともある。
卒業後は大学に残らず一般市中病院での臨床研修を選んだ。
研修終了後、外科・救急の道へ進んだが、1年も経たずして心臓外科医となることを志した。
それから丸6年が経った。




心臓血管外科専門医となったお祝いに恩師より原材料から造り上げた日本刀をいただいた。それを受け取る少し前に知らされた僕は簡単には受け取れないと思った。
奈良原の血筋を知る恩師が、心臓外科医として共に生きていく想いを込めて造り上げたもの。
その刀をいただき持ち続けるということ、生涯にわたる自己研鑽の道。




無雙直伝英信流居合道 横浜斎藤道場に入門。




袴を持っていなかったからしばらくは空手道着で稽古をしていた。稽古前の道場の掃除は懐かしくある意味楽しい。
そして、先日の昇段審査で居合道初段を拝受した。






会社勤めをしていた頃まではみんなが右を向けば遅れることなく右を向いていた。
今はひとが右を向こうと左を向こうと自分が向きたい方向を見ている気がする。



日本刀制作記録 『桜』 の編集後記

刀は何もしなければ、半年で錆びる。
正しく手をかければ、五百年後も輝きと切れ味は変わらない。
数え切れない程のやり取りの末、理想の刀の姿を作る。
現れるのは、人生における美意識。
そうありたい、と思う姿かもしれない。


終わり