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黒歴史の廃棄処理場

かつて、一人の男が作り続けていた黒歴史の墓場。

一部15禁程度の描写があるので、(整理はしたが)閲覧注意。
そうでなくても、公開しているのは黒歴史。帰るなら左上。

それでも、と言う方はごゆっくりどうぞ。

先端が切り落とされた枝を投げ捨てながら、ラフトは訊ねる。


「どうだ、まだ続けるか?」


しかし、レンは返事をしない。
蜥蜴のような声で、威嚇するように鳴いている。
その様子を窺った所で、ラフトは改めて周囲に警戒網を張り巡らせる。


「覚えてるぞ、このニオイ。」


レンの手足からは、鎧の隙間から零れるように炎が溢れていた。
二人に存在を察知されている事を気付いてか、気配の主が姿を表す。


「これはこれは、レンじゃないですか。全く、こんな所に居たとは。」
「・・・おい。」
「いやぁ、どうも。お初にお目にかかります。」


如何にも研究者然とした風貌の怪物。
背中には蝙蝠のような翼が生え、頭には山羊の角を持っている異形。


「おい、一つ答えろ。」


ラフトの問いかけに、魔物は飄々とした様子で答える。


「はいはい?」
「あんたらも、白衣とか着るのか?」
「えぇ、ご覧のとおり。」


真っ白で裾の長いコートを見せるように両腕を広げる。


「そうか、興味深いな。」
「・・・貴方、お茶を濁している心算ですか?」
「師匠、どけ!そいつは私が斬る!」


どうぞ、と言わんばかりにラフトは一歩退く。
すぐさま、レンは刀を振り上げて異形に飛び掛った。
振り下ろされる刃を、白衣をなびかせひらりと避ける。


「おぉっと、怖い怖い。」


ちょっとした修羅場を、胡坐を掻いて眺めながら、ラフトは問いかける。


「一応聞いておくが、あんたは何者だ?」
「魔王軍実験部(非公認)です。貴方に関わる部分だと、レンの産みの親ってところでしょうかね。」
「用件は?」
「次の実験の参考資料の捕縛ですよ。」


そうかそうか、投げやりな返事と共にラフトは立ち上がる。


「そうと分かれば話は早い。・・・おい、レン。」
「師匠、私は師匠の下を離れる心算はないからな!」
「邪魔、退いて。」


いつになくどすの聞いた声に、レンは僅かにたじろぐ。
まごつくレンを無視して、ラフトは二人の間に割って入った。


「帰れって言ったら、帰るのか?」
「一度帰ったところで、大勢で襲撃するかもしれませんよ?」
「あぁそう、じゃあ帰れ。」


怪物は、不気味な表情を崩すように笑った。


「えぇ、でしたら帰ります。あくまで参考資料、命と天秤に掛けるまでもないですからね。」
「清々しいまでに小賢しい意見だが、嫌いじゃないな。」
「ですが・・・人間如きが、我々の軍勢に勝てると思ってらっしゃるのですか?」
「さぁな。試しに今から応援を要請したらどうだ?」
「随分と余裕ですね。如何せん、私は戦闘は専門じゃないのですが・・・例え貴方が、幾ら腕に自信があったとしても、多勢に無勢では辛いでしょう。」
「良いから、さっさと呼べよ。」


魔術師の方が、返って歪な笑みを浮かべる。


「久々に遊んでくれるって言うのに、あんまり焦らすなよ。」
「むむ・・・仕方ないですね、どうあっても大人しく引き下がってはくれませんか。」
「こっちの台詞だ。」
「では、その虚勢を壊さなくてはなりませんね。後になって自らの死を悔やんでも遅いですよ。」


不意に、ラフトは残念そうな声で、独り言のように言う。


「だが、魔王を経由しない招集で、どの位の連中が動くんだろうなぁ?あんまり楽しくなさそうだな。」
「非公認、とは言いましたが・・・」
「非公認どころか、あんたらの事を快く思ってない。潰されるのも時間の問題じゃないのか?」
「人間のクセに、よく知っていますね。」
「あんたら、或いは人間の言う魔王なんて友達みたいなもんだからな。」
「・・・貴方は一体?」


ラフトは魔物の胴を小突く。


「ほら、増援はまだか?」


異形は勢いよく後ろに飛ぶと、そのまま翼をはためかせて一目散に逃げ出した。
しかし飛び上がって間もなく、翼が石のように動かなくなり、次の瞬間には重力加速度以上の速度を乗せて地面に叩きつけられる。
ラフトはレンの手から曲刀を掠め取ると、異形の尻尾目掛けて振り下ろす。
肉の繊維が千切れる音と共に切断面から鮮血が飛び散り、切り落とされた尻尾は飛び跳ねるように蠢いた。
間髪いれず、ラフトは怪物の脇腹につま先を突き刺す。
口から血塊を吐き出しながら魔物は吹き飛び、何度も地面を転がった。


「どこぞの蜥蜴は痛い痛いって騒いでたなぁ。」


魔物は両腕に力を入れて立ち上がろうとするも、痛みの所為か朦朧とした意識の所為か上手く行かないようだ。
動かない脚を引きずり、這いずるように逃げようとする。
その様子を見ながら、ラフトは言葉と共にレンに刀を返す。


「殺しまではしない、やるならてめぇでやれ。」


暫し自らの手と握った刃を眺めた後、レンは言った。


「いや、もう十分だ。師匠の虐め方を見てると、もう良いって思えた。」

「一方的だからな。」


ラフトは、地面を這いずる異形に言い放つ。


「ほーら、お赦しが出たぞ。こいつの気が変わらないうちに、さっさと帰れよ。」