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黒歴史の廃棄処理場

かつて、一人の男が作り続けていた黒歴史の墓場。

一部15禁程度の描写があるので、(整理はしたが)閲覧注意。
そうでなくても、公開しているのは黒歴史。帰るなら左上。

それでも、と言う方はごゆっくりどうぞ。

こちら のおまけです。

本編はリプレイですが、こちらは創作パートとなっています。

次回のリプレイの前に、(何も伏線を回収しない)補間をしておこうかと。

ロクに考えもしないで書いたものだから、文が荒いかも?



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「おい、お主。」


通りすがる白いコートの男に、酒を飲みながらも巫女は声を掛けた。


「主じゃよ、お主。」
「あー、俺か?」
「いかにも。」
「・・・。」


話を聞かずに立ち去ろうとする男を、椅子から立ち上がった巫女は半ば強引に座らせた。


「良いから良いから、近う寄れ。」
「あんたに用は無いんだがな。」
「わしは用があるのじゃ。」
「・・・一応、未成年だから酒は飲まんぞ。」
「気にする事は無い、縛っているのは法律だけじゃ。」
「気にしろよ。」


酔いが回っているのか、巫女は上機嫌そうに笑う。
逃げられないと観念したのか、ウェイターに蜂蜜ミルクを頼むと、男は話を聞く体勢に入った。


「この大会が終わったら、わしは旅に出ようかと思うのじゃ。」
「それを俺に言ってどうする。」
「この国の外に出るのじゃが、如何せんこんな格好で出るわけにも行かんじゃろう?」
「・・・回りくどいな、用件を言え。」
「お主、見たところこの国の者じゃないじゃろ?それに、年も近いと見受けられる。そこで、デートをしようと言う訳じゃ。」


男は飲みかけのグラスを置いて、椅子から立ち上がった。


「じゃあな、あんたに用は無いから。」
「ちょ、待つんじゃ!冗談じゃ、冗談!」


溜息を一つ吐くと、男は着席しグラスを呷る。


「まぁ、その、何じゃ・・・服選びだとか、出発の準備を手伝って貰おうと思っての。」
「面倒だな。」
「知り合いに頼むわけには行かんのじゃ。わしが出て行くことがばれてしまうからの。」
「逃げたいのか?」
「そんなところじゃな。父上にも兄上にも、半ば呆れておったところじゃ。」
「ふむ?」
「わしは女だから、神主にはなれぬ。精々、巫女止まりじゃ。彼奴等より素養はある心算じゃがな。」
「・・・まぁ色々と素養はありそうだな。」


戦闘においては特に、と男は心の中で補足をする。


「じゃが彼奴等の頭は凝り固まっておる。もはや、ああなっては信仰の本来の意味など持たない。・・・それに、わしは父上に好かれておらんからの。」
「何で?」
「神の声など、聞こえる筈が無いそうじゃ。それでいてこの力、不気味なんじゃろうて。」


男は話を聞いているうちに、自らの境遇と照らし合わせていた。
誰にも聞こえないデモンの声。
人々に不気味がられるデモンの力、ソーンの力。


「そんなある日、神様は言ったんじゃ。その力で、人々を救う旅に出るのだ、っての。」


自分がブーステッドと呼ばれる所以。
戦いに倒れたとき、自分に啓示を与えた、赤い少女。
いつしか男は、違うようで似ている境遇の巫女に、同情の念を抱いていたのかもしれない。


「お主はしがらみが無く、自由そうじゃからの。どうじゃ、付き合ってはくれぬか?」
「旅に出ると言った所で、独りって言うのは思っているほど楽なものじゃないぞ。」
「構わん。元より、楽な道などと思っておらんからのう。・・・出発の準備、付き合ってくれるんじゃな。」


グラスの蜂蜜ミルクを飲み干すと、仕方ないと言った様子で男は頷いた。


「そうと決まれば、服でも見に行こうかの。巫女服は流石に目立ちすぎる。」


ほれ行くぞ、と巫女は立ち上がると男の腕を引っ張って外へ向かった。



***



お世辞にもお洒落とは程遠いジャージに、鮮やかな水色のパーカー。
男物とも女物ともつかぬそれは、本人の意向で動きやすい物を選んでいた。
長く美しい黒髪だけが浮いているが、猫型の星霊を抱えるさまは普通の若者にしか見えなかった。


「もう少し、女性的な選択もあっただろ。」
「良いんじゃ。長旅になるゆえ、動きやすい方がよい。今後買うものの基準にもなるからの。」
「・・・まぁ、巫女服よりマシか。」


巫女は、男を真似るようにパーカーのフードを深く被って見せる。


「それに、お主を参考にしたのじゃ。女性的な服になる筈がなかろう?」
「そこは自分の意思を尊重しろよ。」


それまでの雑談とは打って変わって、巫女は真剣な表情で話を切り出した。


「実は、準備を口実に、お主のことを監視しておった。」
「あっそ、どうでもいいけどな。」
「お主の力は、どうにも禍々しい物を感じてのぉ。」
「・・・いつだって、そう言われて来たさ。」
「じゃが、わしの杞憂だったの。お主はマスカレイドに近しいが、同一ではないようじゃ。」
「・・・。」
「毒を以て毒を制す、と言ったところかの。ともあれ、謝らせてくれんか。」
「気にするな、もう慣れてる。」
「そうか。」


あまり軽いとは言い難い空気を変えるため、巫女は必要以上に明るく言った。


「それでじゃなー、強いて言えばもう一着欲しい服があったのじゃ。」
「賞金はまだあるんだろ?」
「ならば、幾らで売る?」


何のことだ、と男は首を傾げる。


「お主のコートじゃ。それが欲しいの~。」


白地に紫のラインの入ったコート。
裾の端々が焦げ付いており、あまり外観が整った物でもない。


「こんなのが欲しいのか?」
「うむ。」


男は羽織っていたコートを脱ぐと、巫女の頭から被せた。


「くれてやる、別に価値のある物でもない。」
「よいのか?」
「しつこいな。」
「本当によいのか、感謝するぞ!」


嬉しそうにコートを羽織って、見せびらかすように回ってみせる巫女。
そんな様子を見ながら、男は苦虫を噛み潰すような表情で言った。


「用が済んだら、とっとと失せろ。」
「そうか。では、そうするかの。」


巫女は、軽い足取りで走り出した。
振り返りながら、上機嫌な明るい声で言う。


「また会おうぞ、我が友よ!」


その言葉に、男は舌打ちをする。
孤独に苛まれた男の光に対する不快感ゆえか、或いは孤独を忘れ光を得る事への戸惑いゆえか。
それとも、やっと見つけた小さな光を失う事への恐怖だろうか。