外伝「講義:魔素学」
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土臭い塒の机に掛ける魔術師の目の前には、半蜥蜴のレンが座っている。
魔術師、ラフトが注目を惹くように机をとんとんと叩いてから言った。
「突然ですが、講義の時間だ。」
「おー」
「まずは前回勉強したことを覚えてるか、聞かせてもらおうかね。」
短く唸った後、レンは答える。
「魔素!爆発!爆発はパワー!」
「よし、何も問題ないな。」
軽く承るラフトに、レンが驚きを表す。
「怒らないのか!?」
「何故?」
「だって、全然覚えてないぞ・・・」
「十分だって言ってるつもりなんだが。」
「そ、そうか。」
気にも留めない様子で、ラフトは講義を続ける。
ラフトが手の平を出すと、前講義の時と同じ様に緑色の結晶が現れた。
「さて、これには大きさに見合わぬ莫大なエネルギーが凝縮されてる、と前回説明した筈だ。」
ラフトが結晶を指でつつくと、結晶は手品のように消えてしまった。
「消えたぞ!?」
ラフトはレンの顔を真っ直ぐ指差す。レンは首を傾げるが、変わらず指を指し続ける。
レンが振り向くと、すぐ目の前に結晶が浮いていた。
「見ての通り、そいつは空間を超える。空間を短絡することは、つまりは時間を切り抜くこと。今の作用が時空間術式の根源だな。原理は過剰な速度だとか魔素自体の分解作用だとか色々あるが、そこまで説明するのは無理だな。」
「未知の技術?」
「ファンタジーにおける現象。空気抵抗なんてものも無ければ、重力加速度すら作用しないものをどうやって解説しろと。」
「空気ていこう?じゅうりょくかそくど?」
「その辺は、そこら中に散らかってる教科書でも読んでおけ。」
ラフトの手の平に結晶が戻る。
「次だ。」
再度ラフトが指でつつくと、結晶の色が青く変わる。
「こいつが元素に働きかけるって話は前にしたんだったか。そうして元素に魔素を付加した状態・・・と言うより、この標本は魔素に元素を付加した状態だな。見ての通り、色が変わる。」
「おお、すごいな!それで、どう言う風に使うんだ?」
「手品でもすれば?」
「う、うむ。」
「こんな感じか?」
ラフトが三度指でつつくと、結晶は濁った黒色に染まる。
「これが、魔素の純度が低い状態の結晶。不純物の色が混ざりすぎてこんな色になる訳だ、子供が使った後の筆洗の色だな。」
「ふむふむ。」
「まぁ、その辺の魔術師を名乗る奴が無意識の内に扱ってる魔素なんてもっと純度が低いんだけども。」
「更に純度を下げるとどうなるんだ?」
四度つつかれた結晶は、先とは違い霧散するように消えてしまった。
「さっきも言ったが、こっちがお馴染みの、元素に魔素が付加されてる状態に近い状態だ。つまるところ、目に見えなくなるな。」
「もっと黒くなるんじゃないのか?」
「不純物が混ざりすぎると、結晶の形を保てなくなる。結合が弱まる、とでも言おうか。」
「ほうほう。」
ラフトは軽く声色を変えて、話を切り替えるように「さて」と切り出す。
「今日はここまで。まぁ、魔素と魔法については大体教えただろう。」