外伝「講義:魔術学」
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「さて、講義の時間だ。」
本に囲まれている中、魔法使い然とした男が切り出す。
ラフト・ストレーと言う名の魔術師は、別の場所では“匠”とも呼ばれているほどの人物だった。
対して胡坐を掻く、人間と火蜥蜴を合わせたような生物は、軽く尻尾を揺らした。
「そこらの学者からは聞けないような話だ、よーく聞いておけ。」
「おう、師匠!」
「ま、聞かなくても魔術は使えるがな。その辺の人間離れしてない魔法使いは知らずに使ってる。」
ラフトは注目を惹くようにトントンと指で机を叩くと、商品を紹介する店員のように手の平を出した。
光が集まるようにして緑色の結晶が現れる。
重力に反し、結晶は手の平の上にふわふわと浮いていた。
「おぉ、綺麗だな!」
「学校でも博物館でも見れないもんだぞ、コレ。」
「そうなのか。うーん・・・これは何だ?」
ラフトは結晶を手の上で転がす。
「少し堅苦しい話になるが・・・まず、魔術って言う物をどう使役するかだ。」
「本で読んだぞ!元素を変換する、だったか?」
「教科書ならそうだな。」
「違うのか?」
「それじゃ、質問に答えよう。コレはつまるところ魔力の塊だな。」
「師匠の話し方ってマイペースだよな。」
ラフトは弟子の指摘を無視して進める。
彼の喋り方は、無駄な事を省くものの、遠まわしな表現を好んだりするため、慣れないと非常に不安定な感じのするものだった。
「じゃあ、魔力って何だろうなぁ?」
「魔法を使う力、じゃないのか?」
「空気中に漂う物質だ。便宜上、魔素とでも呼ぼうか。コイツが作用して、魔術が使える訳だな。」
「ほうほう?」
「具体的にはこんな感じ。」
ラフトが手の平を退けても、結晶は浮いたままだ。
浮いた結晶をラフトが指でつつくと、音も無く結晶が爆発した。
「基本的には、単体だと爆ぜるだけだな。」
「どうやって使うんだ?」
「実験用の控えめならこんなもんだが、まともに使えば・・・それこそ分量によれば国の一つくらいはクレーターになるな。まぁ、そうでなきゃ魔術なんて形にならんだろうしな。」
「でもそれって爆発しか出来ないんだろ?」
「それだけでも、サイズに見合わない運動エネルギーと熱エネルギーを伴うんだよ。そのエネルギーを制御できれば、ただの水を使って五右衛門風呂もジャグジーも自由自在ってな寸法だ。」
「すごく実用的だな!」
だろう、と相槌を打ちつつも真面目な講義を続ける。
「元素には微小の魔素が付着してる。そいつに働きかけて、元素を操作するわけだ。教科書に載ってる四大元素が最もたる物だな。」
「私は火が一番得意だぞ!」
「しかし、ある意味では魔力って言うものはもう一つ存在する。いや、こっちの方が“力”って言葉が合うな。」
「むむ。」
「想像力だ。抽象的な話をすると、人間に想像できないものは具現化出来ない。」
「まさに神秘的な力だな。」
「具体的な話をすると、想像するって言うのは単純に集中を魔術に向けやすくする他に、脳波も魔素に影響を与えるってところだな。」
「神秘が解明されちゃったぞ!」
「禍禍しい杖の方が魔法が使いやすい。自己暗示も有効ってことだ。」
「なるほどな!」
講義も終わりに差し掛かる。
最後に、とラフトは切り出した。
「さて、これであんたは教科書を読むだけじゃ魔術を上手く使えないわけだ。勉強することが自信に繋がらないからなァ、今の講義を聞いたからには教科書が無意味だって分かる筈だ。」
「何ッ!?それは困る・・・。」
「あんたは誰の弟子だ?正しい使い方を知って、力を正しく使え。出来るようになれば、一味違う魔術が扱えるようになる。」
「そっか、じゃあ頑張るぞ。」
「おう、頑張れ頑張れ。」
「ところで、師匠の専攻って何だっけ?」
「時空間術。」
「四大元素関係無いじゃん!」
唯一の弟子の突っ込みに、ラフトは軽く笑った。
ノリツッコミを笑うわけではなく、その言葉がさも当然だと言うような笑い方だ。
「四大元素なんて元は宗教から来てる力だ。」
「宗教には興味無いって言いたいのか?」
「元が宗教ってことは、それだけ多くの人間が想像しやすい力ってことだ。」
「あぁ、なるほどな!・・・え、時空間術?」