外伝「魔法では作れないもの」
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窓すら殆ど無い、木の根と土で構成された竪穴式塒。昼でも蝋燭の灯っている空間で、魔術師ラフトは椅子に腰掛けていた。机を挟んで、火蜥蜴と人間を足して2で割ったような容姿のレンが座っている。
「講義だ、講義。」
「前回のおさらいからだろ?瞬間移動とか、色が変わるとかは手品に使えるってことだったと思うぞ!」
「よくできました。さて、今日は何にしようか・・・」
少し考え、ラフトは話を切り出す。
「一見完璧に見える魔法だが、出来ないこともある。って言う話にしようか。」
「魔法じゃ腹は膨れないもんな!」
「直接は膨れないな。水も作れるし、農作物の成長を促進することも出来るんだが。そもそもやろうと思えば、農作物だろうが大木だろうが一瞬で育てられる。」
「なんと!」
「まぁ、魔法にも科学にも限界はあるわけで。食わずに過ごしたいなら仙人にでもなれ。」
「違う違う!食べたくないんじゃなくて、たくさん食べたいだけだぞ!」
放っておくと話が逸れていくので、軌道を修正する。
「話を戻すが、魔法では出来ないことだ。」
虚空から棒切れが現れ、金属音をたてながら床に落ちる。
蝋燭の灯りを反射する、落下した時の音から金属製と分かるその棒は、僅かに反りを帯びていた。
「剣だな!」
「極東の異国の技術で作られた、細身の曲刀だな。一つ一つ職人の手作業で作られる業物だ。」
「たしかに、洗練されたデザインだな!」
「見た目の割りには重量はそれなりにあるぞ。・・・そうだな・・・」
呟きながら、次は虚空から別のものを取り出す。
出現したのは、イグサを織った布状のものを縦に巻いた状態で固定したものだ。
「試し斬りでもしてみると良い。」
レンが曲刀を持ち上げる。片手で持ち上げたものの、重量故に両手で構えた。片手でも試し切り程度なら扱えないことは無いのだろうが、一刀で相手に勝つことは出来ないと言う“現場”を知っているからこその構えだった。
曲刀が勢い良く振られると、いとも簡単にイグサの束は切断された。断面は非常に綺麗に整っており、切れ味と重量バランスの両方に優れていることが窺える。
「魔法で金属元素を弄って形成する程度の剣じゃ、それほどの良いものは作れないんだよ。」
「・・・いいなぁ、コレ・・・」
「と言っても、それを作れるような人物はこの辺りには居ないんだけどな。」
「じゃあ売ってないのか。残念だなぁ。」
「骨董品なんかもそうだが、芸術面でも職人技は真似できないんだよ。魔法程度じゃ量産品が限界だ。」
「そう言うものなのか。」
「形を作るだけだからな。ついでに、魔法じゃ量産することも出来ないな。その点でも、普通の技術の方が優れている訳だ。量産品は製造にも使用にも、特別な技術を要さないしな。」
「ふむふむ。」
さらに、とラフトは続ける。
「魔法で出来ないことは他にもある。交渉くらいなら、魔術である程度誤魔化して有利に出来るんだが、人と人との信頼関係なんてものも作れないな。」
「そっか、そうだよな。」
「あくまで騙してるだけだからな、魔術による精神操作は。幻覚とかも。」
「ふっふっふ・・・師匠、大好きだぞ!」
「ホント、あんたの頭はハーフだよな。」
「なっ、失礼な!頭脳は人間だぞ!」