エンドブレイカー!TRPGのリプレイ小説です。
リアル卓の補完創作なので、ゲームマスターによる表現や描写、プレイヤーのロールプレイを含めて、ある程度は実際の会話に忠実に書いております。記録を取っていたわけではないので、頼りにしたのはうろ覚えの記憶のみですが。
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趣のある町並み、季節の雅な風景が楽しめる階層都市アマツカグラ。
季節は、美しい紅葉が道路を飾る秋。気持ちのいい空気と涼しい気候が過ごしやすい季節だ。
人々が賑わいを見せるのは、この地の民特有のお祭り好きな気性からか。
現在は、アマツカグラの中でも特に大きな闘技場が創立記念日の催しをしている。
期間中は各地から集まった猛者共が昼夜問わず決闘している。観客席も常に混雑していた。
人々が盛り上がる外で、椛の舞い散る道を歩く者がいた。
背中には、身の丈に似合わぬ斧槍を背負う、クロと言う少女だ。
その背に負う斧槍は武器ではなく、彼女は武器としてはハルバードとは別に杖を持っていた。
彼女はアマツカグラの人間ではなかった。育ての親を失って以来、当てもなく旅を続けている。
エンドブレイカーと呼ばれる者がいる。
彼の者達には、他人の瞳を覗き込むことで、その者の理不尽な“終わり”を観ることが出来る能力があった。
彼の者達は、理不尽を何より嫌い、人々を理不尽な終焉から救うことを信条としていた。
時には犯罪者とも扱われる彼らは、しかしそのことも厭わず、人々の理解を得られずとも人々を救った。
少女も、その一人だった。
古くに肉親をなくした彼女は、ある騎士に拾われて育った。
その騎士もまたエンドブレイカーであり、守るもの、ガーディアンであった。
暫くして騎士は事故により他界するのだが、死ぬ間際、彼に認められクロはエンドブレイカーの力を与えられる。
本来は傷を負うもの、スカードに力を与えられ、ガーディアンは誕生する。
ガーディアンが力を与えガーディアンになると言うのは、極めて特殊な例だった。
生前、騎士に魔術を教わったクロは、その力で人々を救うために旅に出たのであった。
クロは催しものを行っているという闘技場を探していた。
エンドブレイカーではあるものの、少女の一人旅とあって、決して裕福なものではない。
常にお金に困っている彼女としては、闘技大会の賞金には惹かれるものがあった。
道も分からずに歩いているものの、町から外れてしまったのか辺りに人はいなかった。
否、いない筈であった。
突如、虚空から何者かが現れる。若い男のようだったが、顔は目元以外を布で覆っていた。
他に人も居ないので、クロは彼に道を尋ねようとする。
「・・・そこのオッサン。」
男はクロに気付くと、すぐさま返事をした。
「オッサンではないから、他に人は居ないが私ではないな。」
「オイ。・・・おい、そこの男。」
「いや、きっと私ではない。」
「テメェ、コラ。お前以外誰が居る。」
「ァン?やんのか、コラ。」
「違・・・」
「ハッ、丁度良い。あそこで闘技大会やってるし、そこ行こうか。」
「おい、待っ・・・」
男がクロの首根っこを掴むと、二人は虚空に消え入るように姿を消した。
***
アマツカグラに存在すると言われる密偵、忍者。
隠密行動術、忍術を習得した密偵の総称であり、歴史の表舞台には姿を現さない者達だ。
男は忍者だった。名をシラヌイ。
彼は忍者として、生まれ持った先天的才能と、習得した後天的才能の両方を持っていた。
また、彼は生まれつきのエンドブレイカー、所謂イノセントと呼ばれるものだった。
幼い頃、両親を殺害されたシラヌイは、犯人の顔にある仮面を目に焼き付ける。
それこそが、エンドブレイカーのみが滅ぼせる悪、マスカレイドだった。
憎しみを抱く者、また向けられる者、そして本能に忠実なものがソーンに蝕まれ、マスカレイドとなるのだ。
復讐を誓ったシラヌイは、その日からずっとマスカレイドを倒していた。
暫くして、彼はとある組織に勧誘される。
マスカレイドを狩って報酬も貰えるなら良いものだ、と彼は組織に属し、支給されたナイフを手に、復讐を続けるのであった。
シラヌイは、道端で難癖を付けてきた少女を連れ、闘技場へやって来ていた。
受付と思わしき女性に話しかける。
「参加登録をしたいんだが・・・」
「こちらは指定席の受付になります。」
「あ、あぁ、そうか。」
遠くから様子を見ていた男が声を掛ける。
「おーい、参加受付ならこっちだぞ。」
シラヌイは少女を連れ、そちらへ向かう。
「参加登録、二人分頼む。」
「よし、じゃあここに名前を書いてくれ。」
ペンを取ったシラヌイは、少女に尋ねる。
「嬢ちゃん、名前は?」
「クロ。」
「そうか。」
シラヌイは名簿に二人分の名前を書き込む。
「嬢ちゃんみたいな田舎モンに何が出来ると言うのかね。楽しみにしていよう。」
「ふん・・・。」
田舎者、と言う言葉に反応したものが目線を向ける。
その視線を感じてか、シラヌイは押し黙った。
参加受付の男は、少し申し訳無さそうに言った。
「あー、対戦相手はこっちで指定するから、二人が当たるとは限らんぞ。」
「何だと!?」
「対戦までは少し時間があるぞ。そっちの子はこの辺のヤツじゃないみたいだし、観光でもしてくると良い。」
シラヌイは、掴んでいたクロの首根っこを、そのまま用いて通路の真ん中に投げる。
クロは受身を取り、立ち上がる。
二人は何事も無かったかの様に闘技場を出た。
「で、どうするんだ、お前。」
「私は温泉にでも行ってみるかな。案内してくれない?」
「フッ、良いだろう。」
シラヌイは、再度クロの襟を掴む。
「ちょっ、待っ」
***
闘技場付近の最も観光客向けの温泉施設。入り口傍の縁側でお爺さんが茶を飲んでいる。
昼下がりと言う時間の所為か、さほど混んではいないようだ。
入り口のすぐ手前、虚空から二人は現れる。
この瞬間移動は、慣れている分には問題無いようでシラヌイは何ともない様子だが、クロは気分が悪そうだった。
どうやら、三半規管を相当やられるらしい。
「ったく、テメェは・・・!」
「ァン?うるせーぞガキ。」
「五月蝿いジジィ!」
入り口の縁側でお茶を飲んでいるお爺さんが、あからさまに嫌そうな目線を向ける。
すかさず介入したのがシラヌイだ。
「これはこれは、ウチの若いのが失礼致しました。」
「いやいや、良いんじゃよ。わしじゃよ。」
「ハッ、貴方は・・・(誰?)」
その頃、クロは一人で浴場へ向かっていた。
***
薬効風呂からジャグジーまで何でもござれの露天風呂。
岩肌がごつごつとした床、風情ある竹製の仕切り、そして見事な紅葉が美しい色合いを作る空間。
適当に浸かったところで、湯船から上がろうかと思ったクロであったが、
「おーい、そこの。そこの若いの。」
引き止めるように、クロに声を掛けるものがいた。
露天風呂内には、ししおどし等の仕掛けを施した装飾が置かれていた。その内に、ポンプで汲み上げている人工的な滝がある。
そこに、真っ白な衣服を着て滝に打たれている者がいた。
クロは無視して脱衣所の方へ向かう。
「おぉぉぉい!待たんかー!」
渋々、クロは踵を返す。
「若いの。どうやらこの辺の子じゃないようじゃが・・・気をつけるんじゃぞ。闘技場で何やら催しをしておるようじゃが、危険な奴も沢山おるんじゃ。」
「・・・。」
「それだけじゃ。もう行ってよいぞ。」
「・・・。」
「どうした?」
クロは、彼女の瞳の奥に写る終焉を見た。
少しだけ人気の少ない道、竹林から現れた人物に背後を斬られる彼女の姿。
その人物の顔にはマスカレイドの仮面があり、格好は菅と袴の侍のような人物だ。
「ん・・・もう少し浸かる。」
「ふむ、そうか。ふっふっふ、やっぱり修行は滝じゃの。」
「喋り方・・・。」
「知らんのか?今流行りの、ろりばばあってヤツじゃな。それは正にワシのことじゃ。」
「いくつ?」
「十代じゃ、ふっふ。さて、そろそろ上がるかの。」
クロは、出来る限りこっそりと後をつける。
***
シラヌイが銭湯の建物内へ足を踏み入れると、巫女のような人物がフルーツ牛乳を腰に手をあて飲んでいるのが目に入った。
赤い袴の足元には、黒猫が一匹居る。
「おお、猫ちゃんやー。よーしよし。」
思わず、条件反射的にシラヌイは猫を撫でる。猫の方も、嬉しそうに応じた。
普通の猫では無いのか、猫の尻尾には火が付いていた。
その事に気づいたシラヌイは慌てて消そうとするものの、その火に熱は無く、消える事も無かった。
「おや、お主も見えるのか。猫ちゃんじゃないぞ、ちゃんと名前があるんじゃ。」
「何て名前だ?」
「バルカンじゃ!ところで、そっちのお嬢さんも出てきたらどうじゃ?」
仕方なく、と言った様子ですごすごとクロが現れる。
「あ、お前は・・・!」
「何じゃ、知り合いじゃったのか。お前さんにも見えとるんじゃろ?」
「・・・まぁ、星霊術師だからね。」
クロはシラヌイに歩み寄ると、耳打ちする。彼女の瞳に写る、エンディングについてだ。
話を聞き、シラヌイが巫女の瞳を覗き込む。巫女の方もそれに応じ、シラヌイの瞳を覗き込んだ。
シラヌイは更に目を見広げる。巫女は、ずずいと更に顔を近づけた。
彼女の瞳の奥に移るのは、クロが見たものと同じ結末だった。
***
「さて、ワシは神社に戻るとするかの。」
澄んだ空気の中、巫女は二人に告げて、歩き出そうとする。
シラヌイの記憶によればエンディングの場所は、ここから歩いて直ぐの所である。
瞬間移動のおかげで、その場所を知らないクロも、警戒は解いていなかった。
「折角だし、神社行ってみるか。」
「そうしよう。」
「おお、来るか!?よし、じゃあついて来るのじゃ。」
二人は、気を張り巡らし辺りを警戒する。
瞳の奥に見た風景と同じ様な場所で、その人物は飛び出してきた。
「うわ!助けておくれー!武器を持って来てないんじゃ!」
警戒していたおかげか、反応が遅れることなく二人は対応する。
巫女の前に出る二人。前衛をシラヌイが務め、クロは後衛に回る。
シラヌイは刃物を取り出し反撃の構えを取りつつ戦闘準備をする。クロは詠唱を始めていた。
侍の一太刀によりシラヌイは傷を負うも、傷は浅い。詠唱が終わり、クロの呼び出した星霊スピカがシラヌイの傷を癒す。
返しに、シラヌイはマスカレイドの裏に回り背中を切りつけ、クロが杖から魔法弾を打ち出し追撃する。
二人の攻撃を受けたマスカレイドは地面に倒れ、動かなくなった。
仮面が割れるように消えるが、侍はまだ息があるようだった。
「どうする?反撃してくるかも・・・」
「いや、もう大丈夫だ。お前はこいつを連れて先に神社へ行け。」
シラヌイはクロと侍を神社へ送ると、巫女の周辺を警戒しつつ後を追う。
***
時期を外れているのか、現在神社に参拝客はいないようだった。
それなりに大きい神社で、あちこちに巫女や神職の姿が見受けられる。
お守りやおみくじ、賽銭箱もあるようだが、今はそれどころではない。
「あ、参拝客の方ですか?って――」
「この人の治療を・・・」
「えぇ、すぐにでも!」
神職の一人が侍を抱えていくと、長椅子の上に横たえられ、包帯などを用いた応急手当が行われた。
・・・一先ずは安心だろうか。
そこへ、シラヌイと巫女が到着する。
「あの、どちらさまでしょうか?」
尋ねる神職を無視し、シラヌイはクロと侍のもとへ向かう。
一方その頃、巫女は素早く姿を消していた。
「どうだ、大丈夫か。」
「うん。」
「そう言えば、あの巫女は?」
シラヌイが辺りを見回すと、神社の奥の方から巫女が出てきた。
腰には一振りの剣を下げている。巫女服と全く調和しない一品だった。
「ふっふっふ。これがワシのフレイムソードじゃ!」
「お、おう。」
(お前は巫女のクセに西洋かぶれの、よりにもよってフレイムソードかよ!)
内心ではツッコミを入れるものの、黙ったまま自慢げに胸を張る巫女を眺める。
と、突然巫女が慌てたように足踏みをした。
「って、もう時間が無いのじゃ!試合の時間なのじゃー!」
叫ぶと、巫女は馬車をも追い抜く速度で道を駆け抜けていった。
「アレ、追い越すとどうなるんだろうな。」
無邪気な巫女を見て、シラヌイは子供心を擽られたのだろう。言いながら、シラヌイはクロを連れて虚空に消える。
彼らの試合まで、まだ少しだけ時間があった。
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後編は出来次第。