黒歴史の廃棄処理場 -16ページ目

黒歴史の廃棄処理場

かつて、一人の男が作り続けていた黒歴史の墓場。

一部15禁程度の描写があるので、(整理はしたが)閲覧注意。
そうでなくても、公開しているのは黒歴史。帰るなら左上。

それでも、と言う方はごゆっくりどうぞ。

注意書きっぽいものは前編参照。と言うか後編から読むやつがあるか。



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闘技場入り口。宙から二人が現れる。
頭を抑えながら、クロが言った。


「うー・・・気持ち悪。」
「未熟者が。」
「そっちがおかしいんだよ。」


会話している内に、遠くから巫女が走ってくる。
息を切らしながら、巫女は二人の前で停止し、その場で足踏みをする。


「なっ、近道でもしおったか!?是非教えて欲しいものじゃ。」
「いや、してないな。」
「なんと!・・・いや、お主、忍びの者じゃな?」
「ばれては仕方ない。」
「まぁ良い。すまんのワシは急いでおるのでな!」


颯爽と巫女は走っていった。
さて、と二人は観客席へ向かう。自由席は混んでこそいるもの、立っていれば見物できない事もなかった。
やがて現れたのは、先の巫女とその対戦相手だった。
対戦相手の若い男は、白地に紫のラインの入ったコートを着ており、フードを深く被りこんでいた。
武器を持っていないようだが、一冊の本を持っている。恐らく魔道書であろう。
その男からはどこか、マスカレイドの素であるソーンの匂いがした。
二人が眺めていると、さほど間もなくして決闘が始まる。先手は若い男の方だった。
男が手を振るうと、茨の棘が真っ直ぐと撃ち出される。巫女はそれを、抜刀術の如く鞘から少しだけ刃を出して弾く。
観客も大いに沸きあがった。


「あいつ、見えない攻撃を出したぞ!」


その声に、二人は違和感を覚える。確かに男は茨の棘のような攻撃を放ったのだ。
次第に、沸々と考えが浮かぶ。


――あの男はマスカレイドではないか?


しかし、そんな考えもすぐに中断せざるを得なくなる。
巫女が鞘から抜いた炎剣。刹那、爆発のように吹き荒れる熱風は観客席まで届き、二人の顔に打ちつける。
燃え盛る炎は凄まじく、建物に燃え移ってこそいないものの、競技場は火の海どころか炎の嵐だった。その凄まじさに観客達は言葉を失い、息を呑む。その幽かな音は、彼女の炎の前には姿を現す事が出来なかった。
彼女の炎に芸術的な美しさはない。そこにあるのは、死をも感じさせぬ破壊の重圧。恐怖をも忘れさせ、見るものをただただ圧倒するその様は、雄叫びを上げる異形のようにすらも見える。
轟々と渦巻く暴力的な炎の塊は、容赦しないと言わんばかりに男を攻め立て、彼の逃げ場を塞ぐように火の手が回った。
その炎は、力強くも神々しくあった。原初の火の意味を考えさせる、強大な四元素の力。もしもアマツカグラの八百万の神々に炎を司る神が居たとすれば、単純な戦闘力はそれに比肩するであろう。
全てを飲み込むような火炎が連想させるのは世界の終わり、現世と神界の破滅。劫火は、まるでこの世の全てを焼き尽くすような地獄の業を思わせ、まさしく神の力であった。


「さぁて、ワシが相手してやる。かかってこい、小童ァッ・・・!」


***


先に膝を突いたのは、男の方だった。
コートの裾が燃えてボロボロになっており、顔には煤が付いているものの、消し炭にはならなかったようだ。
方や巫女の方もあちこちに深い切り傷を負い、一方的な試合展開ではなかったようだ。
係員が競技場に立ち入り、やがて二人の選手は退場する。
丁度、クロ、シラヌイ共に試合の時間だった。
二人共、同じ試合時刻。それが意味するのは――二人は黙したまま控え室へ向かった。


***


控え室に置かれていた携帯食料を頬張るクロ。
布団等もあるようだが、寝ている時間は無い。緊急の手当てなどにも使われるのだろう。
他には木偶なども置かれており、如何にも闘技場の控え室と言った感じだった。
やがて、競技場の方から先の巫女が歩いてくる。


「ほっほー、楽勝じゃったのう。」


語る巫女の姿は、とても楽勝だったとは思えない状態。
生傷の絶えない体を手当てする事もなく、多少の血を滴らせながらも、問題無いと言った様子で巫女は部屋を出て行く。
何の感情も抱かずその背中を見送った後、クロは係員に呼ばれ、競技場へと向かった。


***


シラヌイは、競技場へ向かっていた。
控え室から競技場へ繋がる通路。日差しを一身に浴びる競技場と違って薄暗い通路で、先の男とすれ違う。
二人は何も言わず、ただ己が目的の方向へと進む。
すれ違った直後、行動に出たのはシラヌイだった。男の背後に立ち、ナイフを頸元にあてがう。


「テメェ、何者だ。」
「デモニスタ、とでも言おうか?」
「ふざけるな!」


シラヌイは男の背中を通路の壁に叩きつける。
先の戦いで消耗しているのか、男は抵抗することなく背中を打ちつけられた。
シラヌイの行動は、最早マスカレイドへの強い憎しみだけが動力となっていた。


「マスカレイドが、何をする心算だ。」
「心外だなァ。」


男は辺りを見渡す。
忍の人間と、忌み嫌われる者。
二人が自然と気配を消しているのか、辺りには人が寄り付かない状態となっていた。


「同業者か。エンドブレイカー、って言うものは知ってるよな?」
「だが、お前は・・・」
「利用してるに過ぎない。こう言う事も出来る。」


一瞬だけ男の顔に仮面が現れるものの、すぐに消えてしまう。


「ソーンイーター、って知ってるか?」
「ソーンイーター・・・」


繰り返すように呟く。


「マスカレイドを狩るために、マスカレイドの力を使う。そう言う連中だ。」


一つ舌打ちをし、シラヌイは男を放す。
この後に試合が無ければ今ここで切り伏せるのだが、と歯噛みしながらシラヌイは競技場へと歩を進める。
不機嫌そうに歩むシラヌイの襟元には、茨の棘が一つ刺さっていた。その事に、シラヌイは気付いていない。


***


日差しの眩しい競技場。選手の入場を、観客の喝采が迎える。
硬く乾燥した砂が風に舞い、むせるような空気が吹き荒ぶ。
競技場に立った選手達は、互いに見知った顔を見ていた。


と、突然シラヌイの脳裏に語るように頭に声が響く。
少し気をつけろよ、と。
その言葉と共に、彼の襟元に刺さった棘が抜け落ち、地面に触れる前に溶ける様に消え去る。
突然聞こえてきた先の男の声に舌打ちしつつも、シラヌイは身構える。
自分の速度であれば、彼女に対し先手が取れると踏み、シラヌイが動こうとした時だった。
轟音と共に、競技場に乱入者が現れる。
観客席すらも飛び越え、競技場のど真ん中、クロとシラヌイの間にそれは着地した。
その姿は、体は人間の数倍の体格を誇り、腕を4本持ち、全てに剣を握っている。
羅刹とも呼ばれる八百万の神の一だ。また同時に、土の中から野槌と呼ばれる大蛇も現れる。


「さぁて、面白くなってまいりました!突然の乱入者、選手二人と化け物の構図!それでは、スペシャルマッチと行きましょうかーっ!」


実況席が高らかに叫ぶ。観客はより一層盛り上がる。
どうやら笑えない状況なのは二人だけのようだ。
・・・否、シラヌイは笑っていた。二匹の怪物は、それぞれ身体の一部に仮面を持っていたからだ。
呆れたように、クロも杖を構える。
マスカレイドを狩れる、と高揚するシラヌイだが、一つの疑問が頭を過る。
――何故、あの実況はあんなにも冷静なのか?
考えても仕方が無い、とシラヌイも戦闘体勢に入る。
シラヌイが動くよりも先に、羅刹が巨体を見合わぬ速さで動かした。しかし、シラヌイの動きの速さから、上手く捉えられないようだった。
戸惑っている羅刹を避けつつ、シラヌイは懐から手裏剣とクナイを取り出し、野槌目掛けてばら撒く。
刃物は野槌の太い身体に幾つも突き刺さり、傷口からは鮮血が滴った。
怯んだ野槌に、クロが魔法弾を撃ちこもうと魔法陣を展開するが、調整に手間取っているのかすぐには発射できないようだった。
怒り狂った野槌はシラヌイへと飛び掛るものの、シラヌイはいとも容易くそれを受け流す。
羅刹は構えや牽制こそするものの、本格的には襲い掛かってこない。どうやら野槌を相手にする二人の力量を測っているようだった。
シラヌイが斬りかかり、後方からクロが援護し、野槌の攻撃をシラヌイが受け流す。
その繰り返しをしているうちに、野槌は動かなくなった。
同時に羅刹が動き出す。4本の腕を水平に突き出した羅刹は独楽のように回転しながらシラヌイへ突進した。
圧倒的な質量と回転のエネルギーを受け流す事ができず、シラヌイは傷を負う。
クロの召喚した星霊スピカがシラヌイの傷を和らげ、怯むことなくシラヌイはナイフを振るう。
繰り返すうちに、隙の出来た羅刹の喉元目掛けてシラヌイがナイフを突き立てた。
傷口からは一定のリズムを刻むように血液が噴出す。ダメ押しで、シラヌイはナイフを更に深く刺した。
羅刹の口からは赤黒い血塊が零れ、ナイフを引き抜くと同時に羅刹は地に伏し4本の腕をついた。
しかしその眼光から闘志は失われておらず、4本の腕をバネにし、恐ろしい速度でシラヌイに飛び掛る。
だが、その動きは直線的だったのかシラヌイは容易くそれを避け、クロの追撃が羅刹に止めを刺す。
動かなくなった羅刹。一瞬の静寂と共に、観客からの拍手喝采が飛び交った。


「おぉっと、勝ったのは選手の二人だーっ!」


キンキンと五月蝿い実況を、二人は殆ど聞いていなかった。
羅刹と野槌の仮面が、辻斬り侍の時と同じ様に、割れるように消滅する。
侍も羅刹も野槌も、仮面が割れた後はエンドブレイカー達が付けた傷以外、傷一つ無い状態だった。
拒絶体と呼ばれるもので、良心を残したままマスカレイド化した生物に見られる現象だ。
果たして、偶然なのだろうか?
ともあれ、二人にこれ以上戦いを行う気力はなかった。
係員に連れられ競技場を後にし、それぞれの控え室に戻るも、頭の片隅に残る気がかりは晴れない。


***


控え室に戻る道すがら、係員が訊ねる。


「先の戦いは、少々特別な扱いになりますが・・・大会の方は継続して参加しますか?」
「おい。さっきのは、予定通りのものなのか?」
「いいえ、こちらとしても想定外のことです。」
「そうか。俺は、こんな状況でこれ以上戦おうとは思わん。」
「では、棄権という形で?」
「それで構わんよ。」


シラヌイは不審が解けずにいた。
予定外の怪物に対し、冷静すぎるどころか利用している節すらあった実況。
本当にシナリオにはない状況だったのだろうか。
ともすれば実況席へ乗り込もうか、と考えるも実況席の詳しい場所を知らない上、当然関係者以外立ち入り禁止、聞いても教えてくれないであろう。
気力を使い果たしたシラヌイとしてはこれ以上の厄介事に手を出す心算は無かった。
控え室に戻り、そこにいた次の選手と思わしき痩せ細った男に「頑張れよ」と告げてから控え室を後にする。


***


「向こうにその気が無かったから、もうしないってだけなんだけど・・・」
「では、引き続き大会には参加すると言う形でよろしいですね?」


え、そうなるの?と自らの言動の整合性に、疲れた頭が少々混乱しながら、クロは適当に応えつつ控え室へ戻る。
クロの控え室にいた次の試合の選手は、筋骨隆々とした大柄で肌の黒い男だった。
いかにも格闘技選手と言ったその容貌に若干引きながら、言葉を交わさずクロは控え室の出口へ向かう。


***


さほど時間を離さずして控え室から出てくる二人。
合流するも、言葉を重ねる前に気になってしまうものがあった。
受付傍の小さな酒場。他の地域では見られぬアマツカグラ特有の酒を、枡を用いてかなりの勢いで飲み干していく女性。
かの女性に、二人は見覚えがあった。何も言わず、二人は彼女の方へと歩み寄る。


「おー、お前たちじゃったか。聞いたぞぅ、よくやったのう。」


頬を酒に紅く染め、大口を開いて巫女は笑う。


「それで、なんの用じゃ。用がないならもう行って良いぞ、ワシは酒が飲みたいんじゃ。」


追い払うような言動は彼女のクセなのか、それとも自らが酒に酔っていることを自覚しているからか。
軽い調子のそれは、心の底からどこかに行って欲しいと思っているのではないと窺える。


「それともなんじゃ、酒の肴になる話でもあるか?なんだったら、お前さんたちも飲むか?」


一人、上機嫌に笑う巫女。構わず、闘技場の係員が二人に声を掛ける。


「クロ様とシラヌイ様ですね?こちら、先程の試合の特別報酬となります。先の試合は特例でして・・・お詫びと、化物退治への協力の感謝と言ったところでしょうか。」


言いながら、係員は二人に硬貨の詰まった袋を手渡す。
事件はこれにて一件落着、と言ったところだ。
しかし、二人はふと気付く。
かの武神は、誰かの終焉に登場したわけではない。
とすると自分達が介入しなかった場合、犠牲者が出る前に誰かがあの怪物を退治したのだろうか。あの巫女は、一体何者なのだろうか。
誰も傷つくことなく事件は解決したが、謎は解けていなかった。


***


競技場に立つ、痩せ細った男と筋骨隆々とした男。
観客から見ても、試合結果を予想するのは簡単な事だった。
そして試合開始の合図と共に、勝負はついた。どちらが動く事もなく、試合開始と同時に。
ばたり、と大柄な男が地面に倒れる。
開始地点から一歩も動くことなく、痩せた男は直立していた。
しかし、忍の動体視力を持つシラヌイには見えていた。
試合が開始した瞬間痩せ細った男は、大柄な体の懐に一発の正拳を叩き込み、元の位置へと戻ったのだ。
群衆は、そして大柄な男はこの結果を予想していなかった。
だが、クロとシラヌイにとっては予定調和とも言える結果であった。



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書き終わった。

クロの中の人は男で、会話も(気恥ずかしさが抜けないのか)男っぽい部分があったので、(キャラ性も含めて)勝手に修正しました。きっとこう言う感じだろ。

表現・描写は創作に当たって盛りまくってます。特に巫女の炎。


EB!の専門用語の解説要るのかな。