黒歴史の廃棄処理場 -12ページ目

黒歴史の廃棄処理場

かつて、一人の男が作り続けていた黒歴史の墓場。

一部15禁程度の描写があるので、(整理はしたが)閲覧注意。
そうでなくても、公開しているのは黒歴史。帰るなら左上。

それでも、と言う方はごゆっくりどうぞ。

男は部屋を一通り見回した後、さっさとキッチンに入っていく。


「ほらほら、カウンター越しにでも座って、注文してな。」


硝子のグラスを取り出し、冷蔵庫から氷を探し出すと、底の深い皿に盛っている。

流し台の上には、先程のジュース類の他に、同じビニール袋に入っていたリキュールが並んでいる。


「計量カップとか出すか?」


逸見が訊ねた。男は軽く手を振る。


「無くても大丈夫。こんなもん、感覚で良いんですよ。主婦の料理だってそうだろ?」

「ジントニック。」

「私、クーニャンな!」

「おk、把握。」


手早い動作で、男は二つのグラスにリキュールを入れる。

飲料の容器の蓋を開けると、両手を用いて同時にグラスに注いだ。


「あれ、シャカシャカしないのか?」

「居酒屋仕込みだし、所詮はバイトだからな。悪いねー、見た目地味だけど勘弁な。」

「でも実際、あんた手馴れてるよな。」

「褒めても何も出ないぞ。さて、私ゃカンパリソーダでも・・・」


カウンターから二人分の飲み物を出すと、男は自分の分を作り始める。


「そうそう、火田は元気にしてるか?」


火田と言うのは、逸見の同僚の一人だった。唯一、同郷の出身で、学生時代からの知り合いだ。


「元気にしてる。相変わらずだ。」

「そう。相変わらず、ってことは誰かさんと違って彼女出来てないのか。」

「お、恋のキューピットの出番だぞ!私たちのときみたいに、な!」


綾織が太鼓判を押すと、逸見は笑う。


「ハッ、ムリムリ。こいつ自身が独り身だから。」

「お前、誰のおかげで、このっ・・・あ、ちなみにお前らの場合、見ててあまりにももどかしいから背中を押してやっただけで、アレに紹介する女性がいるほど私の顔は広くないからな。」

「そういうもんなのか。」

「ともあれ、万年オクテの逸見くんは、そっちのその子と私に感謝したまえ。ふっふ。」

「あんたが言うか。」


逸見の返しに、男は余裕綽々の笑みを浮かべる。


「ほう?」

「なっ・・・その余裕はまさか?」

「私とて、大学時代に良い感じになった相手はいるさ。」

「現行ではないのか。・・・っつか、何であんたはこっちに来たの?」

「転勤。本社の方にな。」

「ふぅん。勿論、大学は向こうだよな。」

「まぁね。」

「で、その良い感じになった相手はどうしたんさ?」


男は人の顔を見て話す人物だった。それは綾織にも当て嵌まるのだが、男の場合は真っ直ぐさ故ではなく、人を信用させる処世術である。

そしてこの時は、男は逸見の顔から目線を外し、どこか遠くを見つめるように言った。それこそ、故郷を眺めるかのように。


「置いてきたよ。東京に転勤するから、と一言だけ残して。別に、そこまで深く立ち入った仲でもなかったしね。」


逸見は目を細める。この男もまた、嘘は言っていないと言うスタンスで人を言いくるめる人間だ。前半は本当の話なのだろうが、後半の話は本心では全くその通りとは思っていないだろう、と推測する。一言だけ残して、と言うのだから、つい最近まで交流があったのであろう。卒業した時から音信不通、なんて言う答えも想定していたために推察が膨らむ。

しかし、言葉を返したのは逸見ではなく綾織だった。


「本当に好きなら追いかけてくるぞ!」

「普通は来ねぇよ!」


ツッコミを入れながら、男は笑う。その笑顔は、半分は本物でもう半分は偽物である事に綾織は気付いていた。同時に、逸見と気が合う理由も分かる気がした。


「まぁいいや。今度、火田にも会いに行ってみるか。」

「あんた、あいつと仲良かったしな。」